表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【いしのまほうつかい】~豆粒ファイアしか出せない少女、大賢者になる~   作者: 架け橋 なな
第三章 渦巻く陰謀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/159

隠し部屋

 ドアを閉め、薄暗い部屋をきょろきょろと眺める。思っていたより室内は広い。



 部屋の左手には暖炉と木製の椅子。右手には薬棚があった。


 ずらりと並んだ薬草の瓶には、綺麗な字で名前と効能が記されている。


 薬の調合に使う道具も取り出しやすいよう片付けられており、家主の几帳面な性格がうかがえた。



「こんにちは。誰か居ませんか?」


 エレナは小さく呼びかけ、どきどきしながら歩みを進めた。だが人の姿はどこにもなく、薬草特有の鼻に抜けるような香りだけが漂っている。



 そんな中、彼女の興味を強く引きつける物があった。部屋の一番奥にある本棚だ。


 火・水・風・土・光・闇。全属性の魔法書が、初級から上級まで揃っている。


 それらは美しい装丁で、属性ごとに色分けされており、上質な革の背表紙には金色の五芒星が描かれていた。



 うわ、格好いい! こんなの今まで見たことない!



 エレナは宝物でも見つけたような気分だった。


 彼女はとてもわくわくし、本来の目的も忘れて、棚から本を取り出そうとする。だがそれは隙間なくぎっちり詰まっていて、全く抜ける気配がない。


 お宝を目の前に諦め切れない彼女は、棚の左端の本を何冊かまとめて引っ張ることにした。



「ふーーーーーん!!」



 気合いの入った掛け声と共に思い切り力を込めると、急に本棚がギィと音を立てて扉のように動く。


 力が空回りし、エレナはきゃあと情けない悲鳴を上げて床に転んだ。



「うう……何なの、これは」



 身体を起こすと、開けた本棚の向こうに、地下へと続く螺旋階段が見える。


 どうやら偶然、隠し通路を見つけてしまったらしい。



 もしかしたらこの奥に、先生の行き先を示す手がかりがあるかも。


 そう思ったエレナは、荷物を置き、意を決してうす暗い階段を下りていった。



 ぐるぐると曲がりくねった通路。


 その足元には明かりが灯されていたので、歩くのには問題ない。ただどこまでも続いていて、非常に不気味だ。



 まさか魔物とか出ないよね。



 もし出会ってしまったら、戦闘は難しい。こんな狭い場所では、危なくて攻撃魔法も使えないからだ。



 魔物を見つけたら全力で逃げよう、と心に誓って進み続けると、行く先にぼうっと光が見えた。こんな所に部屋がある。


 そっと覗いてみると、ほの暗いその空間には魔鉱石が並んだ棚と、腰高の机が置かれていた。


 机の上には火の灯ったろうそくと銀色のナイフ、小さな鉄の鍋が置かれている。



 ここは一体、何のための部屋なんだろう。



 緊張しながらエレナは目を細め、部屋を隅々まで観察する。



 不意に暗がりの奥から、何者かの気配がした。


 わずかに見えたのは、上部に緑の水晶のはまった杖と、それを握る手。


 先のとがった靴。


 次第に大きくなる人影は、間違いなくエレナの方を向いていた。



 しまった! 気付かれてる!



 真っ青になり引き返そうとしたがすでに遅く、呪文を唱える女の声が耳をかすめる。


 一瞬のうちに視界が真っ暗になり、エレナの意識はそのままぷっつり途切れてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
架け橋 ななの他作品

モフモフと美形の出る異世界恋愛
*毒舌氷王子はあったかいのがお好き!*
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ