表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/159

謝罪

言語変換(トランスレーション)



 緑色の光がエレナたちを包み込んで消える。二人は互いの顔を見合わせるが、特に変化は見受けられない。



「これでほんとにあいつらの言葉が分かるのかよ?」



 アストラが訝しげに尋ねると、メルフは笑顔でうなずいた。



「ええ。試しに彼らと話してみますか?」


「はい! 私、やってみたいです!」



 エレナは元気よく手を上げた。魔法の効果を試してみたくて、うずうずしていたのだ。


 メルフは、ではどうぞと手のひらで促した。エレナはしゃがんで彼らと目線を合わせ、聞いた。



「小人族の皆さん。どうして私たちを襲ったのか、理由を教えてくれませんか?」



 彼らはばつの悪そうな顔をしていたが、やがて


「僕がお話します」


 と一番背の高い、水色の髪の小人が、三人の前に出てきた。エレナは内心、すごい! 言葉が通じた! と興奮していた。



「僕はミョルニといいます。先ほどは酷いことをしてしまい、すみませんでした。しかも『博識の魔法使い』様と、そのお仲間だったとは。なんとお詫びしていいか分かりません」


 小人は真っ青な顔をして、白いローブの男を見つめている。彼は穏やかな笑みを浮かべ


「間違いは誰にでもあることなので、気にしないでください」


 と言った。



『博識の魔法使い』。メルフさん、そんな風に呼ばれてるんだ。


 ミョルニの様子を見ると、彼を明らかに恐れている感じがした。やはりメルフは有名な魔法使いなのだろうか。



 青年の言葉を聞き、そこに居た小人たち全員が三人の所へ集まってきた。皆、泣きながら頭を下げ、謝罪と礼を述べている。


 全身、見事なまでにずぶ濡れである。


 自分でやったくせに、エレナはちょっと小人たちが可哀想になった。


 どうやらメルフも同じことを思ったらしく、魔法で温風を発生させ、彼らの服を乾かしてあげている。



 ミョルニは涙を手の甲で拭き、重々しく話し始めた。



「今朝のことです。何者かが僕たちのすみかに火を放ちました。皆、すぐに気が付いて、全員で消火をしていたんですが、その隙に大切な『恵みの石』を奪われてしまったんです」


「恵みの石?」



 エレナは首をかしげる。



「はい。あれは小人族がはるか昔から守り続けている、宝物なんです。あの石が無ければ森は枯れ果て、ここに住む者たちは皆生きていけなくなってしまいます」


「そんな大切なものが盗まれてしまったのですか。ならば一刻も早く、石を取り返さなければいけませんね。何か手がかりは残されていなかったのですか?」



 メルフが厳しい口調になる。



「石を祀っている祭壇近くに、足跡がありました。恐らく人間のものです。森の道は険しいので、その者はまだ遠くへは行ってないと思います。


 僕たちは朝からずっと犯人を探していました。でも奴は姿を見せず戦うことすらしない。本当に卑怯な人間です! 絶対に許せません!」


「で、怒り狂って、おれたちをぶん殴ろうとしたってわけだな」


「すみません! この森は深く、人間たちはほとんど立ち入らないので、あなたたちが犯人だと思い込んでしまったんです。まさか人違いだったとは」


「全くよぉ。ちゃんと確認してから攻撃しろよな。危うく殴り殺されるかと思ったぞ」



 アストラが眉をひそめて、小人たちを見下ろす。



「あ、その点なら問題ないです。戦闘が始まってすぐ、魔法で私たちの身体を硬くしておきましたから。短い時間しか効果はないのですが、ほら、この通り」



 そう言うと、落ちていたハンマーで自分の腕を叩くメルフ。すると金属を打った時のような頑丈な音がした。


 アストラが両の拳をぷるぷると震わせている。



「おや? アストラさん、どうかしましたか?」


「だーかーらぁー、そういうことは早く言えーーーーーっ‼️」



 静かなうす暗い森の奥で、彼の今日一番の怒声が何度もこだましたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
架け橋 ななの他作品

モフモフと美形の出る異世界恋愛
*毒舌氷王子はあったかいのがお好き!*
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ