第3層 『ガチャですってよ奥さん』
仕方ないとは言え説明会が続く……
そもそもの話、正確に言えばこの洞穴はまだ迷宮では無い。
DPを使って行える【迷宮の拡張】を使い、迷宮の領域そのものを確保しなければ行けないらしい。
そして迷宮の拡張にはエリアの拡張(横軸)と階層追加(縦軸)の2種類の拡張がある。
エリア拡張は100㎡につき10DP
階層追加は『追加後の階層数』×1000DP
迷宮の拡張にはこれだけの量のDPを必要とする為、現在の俺の手持ちなら後先考えなければエリア拡張で50k㎡の広さの迷宮が創れる。
……創るだけなら、な。50k㎡のただっぴろいだけの迷宮とか防衛性能ゼロじゃねぇか。いや、砂漠とかだったら結構有効か?
あ、ひとつの階層事の最高範囲は10k㎡だってさ。1層をめちゃくちゃ広くして砂漠にする作戦は使えないのか……
今の俺の拡張に使えるDPはだいたい……消費量と範囲を考慮しての100DPくらいまでかな。
この洞穴を拠点にするなら階層の追加はまだいいか。だいたい各層の縦幅は1kmらしいから階層は追加しなくてもある程度の高低差は付けられる。それ以上深くしたいなら階層を追加しろって事だろう。
迷宮の領域を確保したら次にしなければ行けないのは防衛機能……つまり魔物や罠の設置だ。
魔物はそれこそゲームやらラノベやらでよく見る怪物達で様々な種類がいて強さもピンキリ。強い程必要なDPも高くなってくる。
罠も落とし穴などの物理的なのもから始まり転移罠などの魔法的なものまで幅広い種類がある。また、消費DPは凶悪な物ほど高くなり、同程度の脅威度なら物理的なものよりも魔法的なものの方が必要なDPは高くなる。
次に考えなければ行けないのは迷宮の整備。
これは外装と内装の2種類に分かれる。
内装は通路や部屋、扉などの設置が主な役割となっている。
迷宮の拡張はあくまでも迷宮の領域……土地を確保しているに過ぎないので、その上に迷宮そのものを改めて作らなければならない。それが内装だ。
ちなみに迷宮は入口をひとつ設定し、そこ以外からはいかなる手段を持っても外部から内部への干渉は出来なくなっている。
つまり、外から壁やら地面やらぶち抜いていきなり最奥に到達!とかはしっかりと対策されているという事だ。
逆に迷宮をどれだけ広げようと外部には干渉されないので、どんなに広大な地下迷宮の入口の下を掘っても迷宮内に入る事はない。
迷宮の内部は一種の異空間扱いという事だろう。
例えば今俺がいる洞穴を起点に迷宮を創るとなると、迷宮の拡張をして土地を確保した上で整備を使わずに迷宮を創ろうとすると、地道に壁やら地面やらを掘っていく……というとてつもない作業になる。
外装は言ってしまえばこれは見た目なので、最悪いじらなくても構わないと言えば構わない。
環境設定なども含まれているので、設置する罠や魔物に合うような環境にしなければいけないので場合によっては必要になってくる。
さらに言うならみずぼらしい迷宮に金銀財宝を期待する者はいないだろう。迷宮核から得た情報でも多くの人々が挑む有名どころの迷宮はそれ相応の外見をしているらしい。
とはいえ外見だけ無駄に豪華で中身をスッカスカにする訳にはいかない。
そもそもの話、俺は死にたくは無いが積極的に迷宮運営して行くつもりも無い。最低限生きるために必要なDPが稼げればいいのだから外見はそこまで気にする必要は無いだろう。
そして最後にお宝の設置。
このままだと魔物や罠しかない、なんの旨味もない危険地帯になってしまう。DPを確保する為にもある程度の人には来てもらわなければならない。
なので獲物をおびきよせるための餌が必要になってくるのだ。
「……獲物、か」
自分で考えてからはっとした。
俺は今迷宮に来る人の事を獲物と表現した。
つまりは……そういう事なのだろう。
DPを得るため、迷宮主として生きていくためには人を殺さなければならない。この世界のほとんどの人が敵であると同時に、俺もこの世界のほとんどの人の敵になるのだ。
「あー……うん。どうすっかな……」
殺す。殺す、かぁ……
直接俺が手を下す訳では無いだろうけど、俺の意思を持って人を殺そうとしている。迷宮を創るという事はそういう事だ。
「こればっかりはやってみないとなんとも言えないな……とりあえず今は最低限の自衛は出来るようにしておこう。今考えても答えは出ない」
他の3人はどうなんだろう。響と美桜なんかは切り替えが早い方だから1度割り切れば後は早そうだ。逆に栞は基本的に優しいからなぁ……下手したらここでつまづいてそのまま……なんて事にもなりかねない。
この世界の人が上手く栞の逆鱗に触れてくれればいいのだが……
「っと、今は人の心配より自分の事だな」
えーっと迷宮核から魔物一覧を表示して……
「おぉ、色々いるな」
ゲーム等でお馴染みの魔物から名前からでは姿が想像出来ない未知の魔物まで、様々な種類の魔物が一覧として表示される。
「あぁやっぱドラゴンとかのあからさまに強そうなヤツは高いな」
最低でも1万DPかかるとか……召喚できるのはいつになるやら。
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スライム……1DP
ゴブリン……10DP
ウルフ……50DP
コボルド……100DP
ゴースト……200DP
オーク……500DP
オーガ……1000DP
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迷宮の拡張やら整備やらも考慮して魔物に使えるDPをだいたい1000前後とすると……とりあえず現段階で手が届きそうなのはここら辺か?
って……スライムが1DP!?
この世界もスライムを雑魚扱いしているのか!?
「決めた!俺はスライム達とこの世界で成り上がってやる!」
俺の生死に関わる事だから慎重に?俺の命だ!俺がどう使おうが俺の自由だ!
何を隠そう俺は無類のスライム好きなのだ。某竜探求のおめめがキュートなスライムしかり某基本全てが1m四方な世界のべっちょんべっちょんうるせぇスライムしかり。
だからこそ多くの作品でスライムが雑魚扱いされている事に俺は憤りを覚えていたのだ。
そしてこの世界でもスライムは雑魚扱いされている。1DPで召喚出来るのがその証拠だ。
ならば俺はスライムで成り上がってやろうじゃないか。それこそ後の迷宮主がスライムを召喚する時のDPがドラゴンと同レベルになるくらいに成り上がってやる!
「と、いき込んだはいいものの魔物の召喚はどうやるのか」
そもそも【魔物召喚】とはどういったものなのかというと……
・迷宮核の魔物一覧から召喚可能。
・種族的強さによって消費DPは上下する。
・個体差は考慮されないため、一種のガチャ。
・初期から呼び出せる魔物以外にも進化するなどの条件を満たすことで呼び出せるようになる魔物も存在する。
という事らしい。
あらまぁガチャですってよ奥さん。
「この世界のスライムがどんな物か分からないが、現段階でも分かるスライムの強み、それは……その召喚コストの低さを活かした数の暴力だ!」
予算内でも簡単に4桁を超えるスライムを召喚できるし、変に編成を凝るより物量作戦の方が俺には向いてそうだ。え?脳筋?聞こえなーい。
そもそもの話、スライム使った物量作戦とその他の魔物使った凝った編成なら前者の方がモチベは出る。モチベは大切だ。
「そうと決まればいざ召喚!」
ポチッとな。
迷宮核から魔物一覧を開いてスライムの部分をタップ。
すると目の前にあからさまな魔法陣が出現した。そして魔法陣から光が迸り……
光がおさまると、そこにはバスケットボールサイズのぷるぷるした物体……スライムがいた。
次回ようやくタイトルのスライムが登場!
そしてその時鏡也の本性が現れる!?
スライムダンジョン!の方でもアイディアを募集します(スライムの種族や迷宮の罠など)
ぱっとした思い付きでもいいのでなにか思いついたらぜひ!