番外編 『平行世界』 って、そろそろ帰りたいんだが…
結局、焼き芋を奢ってしまった。
…というか、まだ名前すら言ってないよな…!?
おいおい、名前も知らない奴に奢られてて、大丈夫か?
「今更自己紹介、って感じするけど、俺は前川涼。至って普通の高校生だ、こいつらと違ってな。」
「ふぁたしふぁ、よねふぁああはり、よろひくふぇー。」
焼き芋を食いながら喋る米澤。
ちゃんと飲み込めよ…。
「おい、ちゃんと飲み込んでから言え。なんて言ってるか分かんねぇよ。」
一瞬俺を睨むと、一気に飲み込んだ。
いや、今俺睨む必要あった!?
「……んぐっ。私は米澤燈、宜しくねー。」
「はぁ…最初からそうしろよ。まぁ、見ての通りこいつは馬鹿だ。」
「はぁ?どこが馬鹿よ!」
米澤はそう噛み付くが、そんな時はこう言えばいい。
「じゃあ、この前のテスト結果どうだったんだ?」
「…バーカ!このおたんこなす!」
案の定、である。
そう怒っても、肯定しているようにしか見えない。
「大丈夫、燈ちゃんは頑張ればできるわ。あ、私の自己紹介がまだだったわね。佐倉紅衣よ。」
い つ も の や つ
このパターン、最近定着してきてるよなー…。
「…あれ、なんか見覚えあると思ったら『このI』のメイン三人じゃないスか!俺、読んでるんスよ!」
…は?
「え、何それ?」
「お前ら知らないのかよー?『この馬鹿がIQ165なら俺はどうなるんだ』って小説。ご本人達が目の前にいるから説明しないけど、読んでみてくれ!」
おいおい。
さっきから会話がめちゃくちゃメタいぞ、お前ら。
宣伝してくれるのは有難いんだがな。
というか、それを言ったら君達だって、小説「アビリティ・ファイティング」の主要メンバーだろ…?
あ、画面の前の君!是非読んでくれ。
…おい、米澤。
俺を見つめるな!
「えっと…僕は水篠桐生、中2です。他の三人はクラスメイトで、四人共能力者です。僕の能力は、『熱と重力を操る能力』です。宜しくお願いします。」
中2?え、年下?
「熱と重力……。物理?」
おい、俺にだけ聞こえるように言うな。
「透月静羅、透視能力持ちの中2女子です。すみません、奢らせてしまって。」
透視…?
え、じゃあ、封筒の中に入ってるもの視える感じ…?
え…中2女子怖っ…。
「俺は林夏樹、鬼の部下である悪魔ッス。能力は『凍結』ッス。」
あ、くま……?
あ、熊……?
「わぁ、本物の悪魔!?サタンだ、サタンだ〜!」
おい、そろそろいい加減にしろ米澤。
いや、やっぱりサタンの方か…。
え、どうなってんの…?
「あー、俺?俺は武田岳、テレパシー持ちの中2だよ。宜しく。」
「「「敬語使え!」」」
テレパシー…?
色々と異次元すぎて、もう無理……。
「ねぇねぇ!カッコよくない!?」
今、俺に話しかけてこないでくれ…。
「ちょっと、涼!何ボーッとしてるの?」
「前川く〜ん?」
「おーい!涼!前川涼!」
「うーん…。ダメね。全然戻ってこないわ。」
「よし、こうなったらアカリちゃんチョースゲブキ2で起こすしか…」
「おい!辞めろ!それ死ぬやつ!絶対アカンやつ!」
「えーっ。もうちょっとでお楽しみだったのにー。」
おい、お前今なんて言った…?
俺殺す気だったろ!?
「まぁまぁ。前川くんも戻った事だし、ね?」
ね?じゃねぇよ!
こいつ、殺そうとしたんだぞ!?
「あのー……。」
あ、忘れてた。
そうだ、ここ教室じゃないんだった。
「あぁ、すまん。もう、こいつが騒いじゃって…。」
「私のせいじゃないもん!…ねぇねぇ!その能力、私も使えるの?」
「あ、簡単に判断する方法あるっスよ。」
「ちょ…夏樹まさかアレを…?」
ん、なんか左腕の袖を捲り始めたぞ。え、そんなヤバいやつなのか!?やめろ、やめろぉぉぉぉっっ!
「はい、ここになんか見えるっスか?」
「何にも、ないじゃんか。」
ただの、普通の、腕である。
「わぁ!すっごい!」
は?
「米澤、お前見えてるのか…?」
「見えてる、見えてる!」
はぁっ!?
嘘だろ…?
「こ、怖ぇよ。初めて米澤が怖く感じたよ…。」
「ふふん!恐れ慄くがいいっ!」
…ん?
ほんとに見えてんのこいつ。
「ほんとに、見えてるんだよな…?」
「み、見えてるよ!何言ってんの!?」
あ、これ嘘だ。
「嘘は良くないぞ。」
「う、嘘じゃないもん!…こころんは、どうなの?」
佐倉か…。
「ん〜?どうだろうね〜?」
…はぁ?
濁してくるのかよ…。
「えーっ!どうなの!ねぇ、教えてよ!」
米澤、うるさい。静かにしろよ。
…まぁ、俺も気になるけどな。
「んふふ。どうでしょう〜?」
「ねぇ!なんかないの?…そう!こころんが見えてるかわかる方法とか!」
一同、辺りを見回した後に武田の方を見た。
「あ、俺に見ろって?いいよー。」
見えるのか…そうだよな。うん。
「…あれ、読めないんだけど。俺が読めないって事は…へぇ、そういう類いの…。」
そういう類…?
どういう事だ?
「ふへぇ。こころん凄いね!」
え?
え…
まさか…佐倉……
「ん〜?」
いや、俺は知らない。
何も知らないんだ…!うん!
「ねぇ、涼の体が薄くなってる気がするんだけど…。」
は、はぁ!?
「米澤異能力に酔ったのか?そんな訳……米澤!?お前、薄くなってるぞ!」
「はぁ?それは涼でしょ。存在感ないから実体でも…あれ?私もだ。」
「本当ね。でも、それは私達だけみたいよ。」
ど、どういう事だ…?
「どうやら時間のようだ。」
「えぇっ!?もう?」
は?
今の言葉で理解出来たの?
マジかよ…。
IQ舐めたもんじゃねぇな。
「燈ちゃん、仕方ないわよ、ね?」
は?
佐倉も理解出来たの?
マジかよ…。
いつも学年一位の秀才、流石だ。
「そうか、平行世界から飛ばされてきたから、時間制限があるのね。」
あぁ、そういう事か…。
いや、そういう事じゃねぇよ!
異能世界は何でもかんでもありかよ!
はぁ…。
どっと疲れた。
今日はもう家に帰って寝よう…。
「んじゃ、まったね〜!」
おい、米澤。
よくこんな状況でまたね、と言えるな。
「今日はありがとうございました〜。」
おい、佐倉もかよ。
「前川くん、挨拶は大事よ?」
まぁ、そうなんだけど…。
そうなんだけどな!?
いや、状況が状況だろ…。
「き、今日はありがとな。もう会うこともないだろうが……。」
「結局、涼もするんじゃん。」
うっ…。
「あ、挨拶は大事だろ!?」
あぁ、やっと平和な日常に戻れる…。
なんだか不思議な感覚だった。
数秒だった気も、1時間だった気もする。
「戻った…のか?」
「あ、さっき居た山だ。」
山、というか山の麓だがな。
「よし、暗くなってきたから帰るか。」
早く寝たい。
「今日は楽しかったね!」
まぁ、な。
いや、もうあんなことは懲り懲りだが。
「そう言えば、さ。なんで山なんかに来たんだっけ?」
山…?
なんでって、そりゃ…。
「あぁぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁ!!!!」
「うわっ!突然叫んでどうしたの!?」
「キノコ!キノコ狩り!」
やべぇよ…!
「キノコ狩り…?あっ!キノコ取ってない!」
オワタ…。完全に忘れてたよ!
もうこれしか方法が無い!
「し、仕方ねぇ!今からスーパー行って、買ってくるぞ!」
「そんなんでいいの?」
「背に腹は変えられないからな!」
俺はそう言いながら、スーパーへ走っていく。
米澤は、面倒臭いだのと愚痴を零しながらも、追いかけてくれていた。
「いつも通り、って感じね〜。」
佐倉は相変わらずののんびりっぷりである。
というか、これも全部全てあいつのせいである。
「あぁぁあ!あのクソ化学教師めぇぇえ!」
米澤、今回はお前だけのせいじゃない。
長らくお待たせ致しました。
番外編もとい、コラボ編第2話です。
次話投稿までにかなりの時間が経ってしまったこと、深くお詫び申し上げます。
さて、楽しんでいただけたでしょうか?
この作品は本文にも記載したとおり、甘蜜様の「アビリティ・ファイティング」とのコラボ作品となります。
甘蜜様、ありがとうございました。
時期外れではありますが、焼き芋コールをBGMに、じゃがバターを食べようと思います。
それでは、またお会いしましょう。
アビリティ・ファイティング
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