番外編 『平行世界』 って、また面倒くさいんだが…
皆様、こんにちは。
作者のあさひぴざです。
今回のお話は以前から企画しておりました、コラボ作品でございます。
完全番外編。
あの異能力バトル小説とのコラボになります。
こちらは、前川涼視点。
米澤ワールド全開でお送りします!
コラボ先の小説では、別視点での小説がございます。
そちらも是非、一読ください。
…それでは。
ボケあり、ツッコミあり、いつもとちょっと違った、3人の休日をお楽しみくださいませ。
此処はとある山の森の中。
俺__前川涼は、疲れ果てていた。
「ねー、キノコなんて何処にあるのさ!」
此奴は米澤燈。取り敢えず、馬鹿だ。
「もー!無鉄砲に歩いてるから迷うんだよ!」
それは俺の台詞だ。
「無鉄砲に歩いてんのはお前だろ!」
そう、それは小1時間前くらいの事である。
「キノコ狩りっ♪キノコ狩りっ♪」
うるさい。もう少し静かに出来ないのかよ。
「もう、燈ちゃん。そんなにはしゃいでると転んじゃうよ?」
俺達3人は、理科の課題でキノコ狩りをする事になったのだった。
全くもって面倒くさい。
よりによって、米澤と一緒のグループときている。
さらに面倒くさくなってしまっているのだ。
「あのクソ教師め…。」
「ん?涼、何か言った?」
はぁ…。
この溜息の元凶は、相変わらずテンションが高いままだ。
せっかくの振り替え休日、無駄に過ごしたくは無かったんだがな。
「おい、米澤。キノコなんてどこにあるんだ?」
俺たちの周りには、木々があるだけで、キノコなんか1本も無い。
「大丈夫!なぁんとなく歩いてればあるって!」
本当かよ。
不安しかないが、他に頼る術が無い分、どうすることも出来ない。
俺達は、仕方なく米澤に着いて行った。
──まぁそんなこんなで。
「1人が騒いでるせいで、道に迷ったんだが。」
「なんのことを言ってるのか、分からないナー。」
お 前 の 事 だ よ !
「大体なぁ、高校生になってまで…」
「まぁまぁ、涼くん。そのくらいに、ね?そんなに怒ってたら、寿命が短くなっちゃうわ。」
はぁ…。
まぁ、米澤に怒ったところで、当の本人はのうのうとしてるしな。
「そーだ、そーだ!直ぐポックリ逝っちゃうぞー!」
誰のせいだと思ってんだ!
あぁ…これじゃ寿命が幾つあっても足りねぇよ。
「ねぇ、なんかめっちゃでっかいのいるんだけど。」
は?何言ってんだ、此奴。
どうせ、話を逸らす為だろ。
そんなのどこにも……。
「うわぁぁあ!なんかでっかいのいる!」
「いやだからそう言ってんじゃん。」
うへぇ…なんかめちゃくちゃ殺気に満ちてるんだけど。
「わぁ〜可愛い。」
佐倉!?
何言ってんだ?
こいつ俺ら食べようとしてるけど!?
獲物としか見てなさそうだけど!?
可愛い?
何言ってんだ!?
「ちょ、お前ら逃げるぞ!」
「え〜!こういう時は応戦するに限る!」
また馬鹿なこと言ってるんですけど。
今にも死にそうなのに、向かってくやつがいるかよ。
「おい!米澤!」
「だぁいじょうぶ!この“アカリちゃんチョースゲーブキ”があれば勝てるから!」
おい、いつの間に作ったんだが知らねぇが、めっちゃ凄そうな武器持ってるんですけど。
ってかネーミングセンス無さすぎかよ。
「うぉっりゃっしゃぁい!」
凄い勢いで飛びかかってる米澤。
あ、飛ばされた。
「ちょ、この…なんだっけ、アカリちゃんなんたらかんたからが効かないなんて!」
おい、名前覚えとけよ。
ん……?
「うわぁぁあ!なんかこっち来てる!」
やばいやばい、良くわかんねぇ武器がどーのこーの言ってる場合じゃねぇよ。
「急ぐぞ、米澤!取り敢えず逃げろ!」
「ううっ…私の武器ちゃぁん…。」
いや、名前すら覚えてないだろ。
「おい、米澤!米澤燈!…ったく、仕方ねぇな。」
座り込んでいた米澤を背負い、走り出す。
「ちょ、降ろして!」
「いや、動かなかったお前が悪い。」
「おーろーせ!おーろーせ!」
ちょ、暴れるな。
投げ捨てるぞ。
「『フローズンカッター』!」
何処からともなく、男の叫び声が聞こえた。
と、同時にこの世のものとは思えない光が、でっかい何かに当たった。
「え、今、涼なんか言った?」
「言ってない。それよりも、なんだあれ。」
「『メガボルト』!」
「『スピリチュアルアロー』っと。」
さっきの男と同じ方向から、また叫び声と光が見えた。
あれは…なんなんだ?
この世のものなのか?
「なにあれ!凄い!あれ、科学的に分析出来ないかな!?」
あり得ない。
「そうね〜。あれはなんて言う物質なのかしら?」
あり得ない。
「桐生君、トドメ刺して。」
これは夢なのか?
「分かった。『ヒートエアーガン』」
…痛っ。
夢じゃないのか。
「グウェアア…」
低周波の唸るような声で、俺は我に帰った。
そうだ、助けてくれたんだ。
お礼を言わないと。
「えっと…ありがとうございます。」
俺は、おずおずと近づいて礼を言った。
「いえいえ、いつもの事ですから。」
いつも?これが?
「…あの、此処は…?」
こんなよく分からねぇ生き物とか、よく分からねぇ光がある世界なんざ、俺は知らない。
と、言うことは違う世界に行ってしまったのだろう。
「月森町です。その服装からして、平行世界の住民とかですか?」
服…。
「そう…なんですかね。」
半信半疑、と言ったところか。
信じられないが、今、自分の目の前にそれが広がっているのだ。
グゥゥゥ…
気まずい状況、ナンバーワン
…初対面の人の腹の虫が鳴る。
これは…これは気まずいぞ……。
「…桐生、あんたのお腹から?」
桐生…?さんのお腹が鳴ったらしい。
いや、そんな事はどうでもいいんだ。
この気まずい状況を、どうにかしてくれ!
ほら、米澤!お前ならなんとか出来るだろ!
「肘なんかつついて、どうしたの?」
おい、察しろ!
この状況を何とかしてくれ!
「あー、お腹空いてきたなー。」
……え。
この状況で、それ言う?
「…焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪…」
や、焼き芋?
何言ってんだこいつら。
そりゃ、秋の味覚だし美味いけどよ。
「焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋…」
「うわあああ桐生が武田に洗脳されたあああ」
なんか叫んでるやついるんだが。
いや、どういう状況だよ!
“焼き芋”をコールしている奴らと、叫んでいるやつ…。
更にカオスじゃねぇか!
「おい、お前らどうしたんだ?突然。」
こういう時は冷静に対処するんだ。
…ん?
この状況……まさか!
「焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪…」
「焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋…」
「…あ、ほんとだ!私も食べたーい!…焼っき芋!焼っき芋!焼っき芋!焼っき芋!…」
だぁぁぁあ!
米澤!やっぱりか!
佐倉まで!何やってんだよ、学年トップ!
あぁ、もう面倒くさい事に首を突っ込むなよ。
「焼き芋なんて何処にも…。」
『いしやぁきぃもぉぉ』
…いや、気のせいだ。
「何処にも…。」
『焼き芋だよぉ美味しいよぉぉ』
これは、空耳だ。
いくら何でもタイミングが良すぎる。
「ど、何処にも…。」
「焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪焼っき芋♪…」
「焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋、焼っき芋…」
「焼っき芋!焼っき芋!焼っき芋!焼っき芋!…」
『いしやぁきぃもぉぉ』
カオスofカオスなこの状況に、俺の脳はショートを起こしていた。
「あぁぁあ!なんでこうもタイミングが悪いんだ!」
試合終了のゴングが、俺の頭の中に響いた。