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1、その男の子は、まさに天使だった

天皇誕生日が金曜日で三連休だった2016年、「クリぼっち」なる新語が誕生した頃に思い付いたネタです。

12月23日の天皇誕生日が2019年の皇位継承によって変わる可能性があるという事で、「よし、まだまとまり切ってないけど今のうちに投稿してしまおう」と見切り発車でGoします。



「昔々、お婆さんは、川に洗濯に行きました」


 あの日4歳の美幼児は、私のために懸命にたどたどしい言葉を紡いでくれた。


「桃が流れてきました。中から『コンニチワ』と聞こえました」

 あ、もうしゃべるんだ。

 セリフ部分は裏声なんて、4歳児といえど侮れない。


「家に持って帰ってシュバッって切りました」

 その効果音が俄然気になった。


「どうやって切ったの?」

「手で」

 手刀か。

 やるな、お婆さん。

 マジでか。


「桃太郎さんが出てきて、鬼退治に行きますと言いました」

「お婆さん止めた?」

「ううん」

 だよね。

 桃から出て来ていきなり「鬼退治に行く」とかい出すんだからまだ自分の子供なんて話になってないだろうし、ぶっちゃけ桃から出てきたちょっと変わった旅人感覚だと思う。

 むしろ勇者だし。

 ありがたい事だ。


「お婆さん何かくれた?」

 ほらほら、有名な、お団子的な。

 つい先を促してしまうと、おっとここで苦悩の表情。

 忘れちゃったかな?

 あー「きび団子」ってそうそう馴染みないかも。


「なげっ……」

 え、投げ?

 武器?


「お餅」

 あ、言い直した。

 うん、武器よりはいいのでお餅でいっか。


「お餅を持って鬼ヶ島に行きました」

 ん? んん?

 今、到着した?


「誰にもあげなかったの?」

「うん」

 そ、そうか。

 誰にもあげたくなかったのかな。

 まあ、あげた相手が鬼退治に行ってくれる位、魅力的なお団子だもんな。

 ちょっと分からないでもないけど……

 でも……桃太郎、一人で勝てるかなぁ、と思いつつ先を待つ。


 するとハル君。


「お餅を持って行って『仲良くしましょう』と言いました」


 そう来たかー!

 なんたる平和的解決!!


「桃太郎は鬼が島でいつまでも仲良く暮らしました。めでたしめでたし」


「おおー、すごいね!」

 素晴らしいよ! その発想はなかった!

 心からの拍手とともに興奮気味に言うと、ハル君は嬉しそうに笑った。

 可愛いなぁ。

 保育園児でこれだけ美形って、モテるんだろうなぁ━━


 *


 あれから約20年。

 独創的な「桃太郎」を披露してくれた美幼児は、それはそれは立派な青年に育っていた。


 当方、32歳。

 四年付き合った男がいたけど思うところあって最近別れました。


 先方、24歳の美貌の経営者様。

 うちの母と、美幼児のこれまた美形の叔父さまが再婚したことによって出来た全く血のつながらない従弟(いとこ)殿です。


 あの時、私も中学生ながら「この子は何かすごい才能がある!」「こういう子がとんでもない大物に育つんだろうな」とか思ったんだけど。


 まさか。

 よもや。


「月ちゃん、結婚しよ」


 久し振りに再会した8つも上のアラサーに、再会約2時間でそんなご乱心な一発をかましちゃうような残念イケメンに大成しようとは。


 あーもー、おばちゃんショックなんだけど。


 


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