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運び屋はつらいよ  作者: nono
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初仕事

「神谷の兄貴‼︎昨日って的場とクイーンズで呑んでました?」

「…お前、何か見たのか。」

「いえ、兄貴のポルシェがあったんで。

それに的場から兄貴から召集掛かったって自慢の連絡が来たんすよ。」

「それで?」

「たまには俺のことも誘ってくださいよ。」

「やめとけ。」

「いやぁ、ここだけの話なんすけどね、有明組の若頭とアイツ最近ナァナァらしいんすよ。」

「お前、それどこまで知ってる。」

「どこまでって、的場のやつ口軽いっすからね。そろそろ盃交わすとかって自慢しにわざわざウチまで来て洗いざらい話して帰ったんすよ。

でも有明って良い噂聞かないじゃないっすか。」


「お前、悠太っていったな。俺の仕事手伝ってみるか。」

「マジっすか⁉︎兄貴のためなら何だってやりますよ‼︎」

「そうか。じゃあ的場に回してる分、お前が責任持って受けろ。」

「はい‼︎で、何したら良いんすか?」

「運びだ。とりあえず明日のam1:00にその山名からの運びの依頼が来てる。T公園に行け。

それと、このヘッドセットが使えるようにしとけ。それは常時耳から外すんじゃねぇぞ。」

「了解っす‼︎am1:00 T公園に山名っすね‼︎」

「それと、もう的場と繋がるんじゃねぇ。言う事聞けねぇ場合は消すぞ。」

「分かりました。でも…。」

「理由は知らなくて良い。黙って従え。

今日はもぅ帰れ。

ああ、それと山名から前金で5万ほど受け取っとけ。」



やっと俺も兄貴の仲間に入れた‼︎

この仕事もこれから兄貴のために気合い入れてやっていくっすよ‼︎


「…おい。」

「うわ‼︎ビックリした‼︎」

「お前誰だ…。」

「あ、山名さんっすか?」

「…」

「神谷の兄貴からここで山名さんを待てって言われて来たんすけど。」

「…的場はどうした。」

「知らないっすけど。」

「ちっ…まぁいいや。あそこに止まってる軽を頼むわ。」

「了解っす。」

「じゃあ頼んだぜ。」

「分かってます。じゃあ支払いの方を。」

「は?そんなの今まで言われたことねぇぞ?」

「いやぁ…俺も先に金を貰えって言われてるだけなんで…。」

「いくらだ。」

「5万もらって来いと言われました。」


山名が不機嫌に料金5万円を俺に手渡してくれた。


「ったく…間違いなく届けろよな。時間厳守のam2:45受け渡しだ。

今がam2:10だから急がねぇと間に合わねぇからな。

俺のタマァ兄ちゃんに掛かってる。」

「い、急ぎますんで失礼します…。」


俺は急ぎ車を第六埠頭まで走らせた。

リミットまで残り32分。


First mission〜密輸船は怖いっス〜


「うーん…これは間に合わないんじゃないっすかねぇ…。

あの人タマがどぉのって言ってた気がするんすよねぇ…。」


そんな弱音を吐いてる時に携帯が鳴った。

会社から支給されているヘッドセットで応答する。


「はい。悠太っす。」

「おう、俺だ。その案件時間厳守の念押しがコッチに来てるんだが間に合うんだろうな。」

「えっ…と、とにかく急いで埠頭に向かってはいるんすけど…。」

「おい…お前をスカウトしたのは俺なんだからな。俺の信用を落とすような生温い仕事しやがったら…。」

「わ、分かってるっす‼︎あと20分は時間があるんで何が何でも間に合わせるっす‼︎」


兄貴からの脅しも入り、これは死んでも完遂するしかないことになった。

まぁ仕事はどんな時でも完璧にこなさなければならないのは、この運び屋って仕事に限らず当たり前な話なんすけどね。


でもこの車どうにかならんのか?

やたらボロボロな軽バンな上に、何か重い…。

後ろを見る限り段ボール箱が2つ乗ってるだけなんすよねぇ。


とりあえず時間には着きそうっすね。

この時間の湾岸は空いてていいっす。



〜第六埠頭〜


えーと…第四倉庫前のナントカって船に持ってけと言われたんすけど、第四倉庫ってどれなんすかねぇ。

あ、あの積み込んでるヤツっすね。


何だかんだやたらと怪しい外人がウジャウジャしてるんすけど…。


「オマエナニシテルカ。」


うわっ、何だこいつ⁉︎


「コノクルマ、ツミニカ?」

「え?あ、あぁそうっす。45分にここ持ってけって言われて。」

「ジャアソノママフネニノセロ。」

「俺が積み込むんすか?」

「オマエハジメテカ?」

「そうっす。色々教えてください。」


そう言うと、この外人が船の中まで誘導してくれて積み込みを完了することができた。

船の中には、木箱や何か分からない鳴き声がする檻などでいっぱいで、この車が最後の積荷となった。


「ありがとうございます。じゃあ受取りのサインを…。」


すると、その外人以外にも多くの外人が後ろから俺を取り囲むように乗り込んできた。


「オマエコノママツレテイク。オマエノコトワタシタチシラナイ。シンヨウデキナイ。」

「え?それは困るっす。」

「45フンノツミニモッテクルノ、ヤマナサンダッタハズ。オマエチガウネ。」

「ヤマナさん?誰かは知らないっすけど、俺は兄貴からこの車を受け取ってここに運べと言われただけっす。

信用とか言われても、神谷の兄貴からの正式な仕事依頼をしただけっすよ。」


そう言うと外人達はざわめき出した。


「カミヤノアニキ⁉︎」


どうやら兄貴のことは知ってたようで、現地語で何やら相談しだした。


「ワルカッタ。オマエカエッテイイ。

コレ、ハコビチンダ。」

「え?でも車を受け取った時に…。」

「ソレハイライリョウダ。コレハ、ハコビチン。

カミヤサンニヨロシク。」


分厚い茶封筒を渡されて船を下された。

危うく俺も積荷として連れていかれるところだったらしい。

全く兄貴様様だ。と言って良いのか?

とりあえず兄貴に電話っす。


「あ、兄貴。今受渡し終わりました。」

「遅え。」

「す、すいません…。」

「お前よぉ、今何時か分かってんのか?」

「am3:50です…。

あ、でも仕事はちゃんと時間通りに…。」

「ったりまえだ。じゃなきゃ親父にドヤされんのは俺なんだよ。」


電話口から深い溜息が聞こえた。


「んで、何で連絡がこんなに遅くなった。」

「あ、それは…。」


外人との経緯を細かく説明すると、兄貴は大笑いしてとりあえず連絡の遅れを許してくれた。

そのまま拐われても面白かったなんて…

そりゃねぇっすよ…


「とりあえず涼がそっちに車回しに行ってるから最寄りのコンビニまで走れ。」


走れって⁉︎

既にam4:00を回ってしまってる。

涼さんを待たせてるってことは…こりゃ帰りの車は大説教くらうんすね…



俺が初めて受けた運び屋仕事は、こんな感じで大きな問題もなく無事に完了した。


「悠アニキ、車50台の運びらしいんですがどうします?」

「人間集めて一気に持ってかせろ。」


今じゃ俺が運び屋の跡目を継いでる。

ここまで来るまでの経緯をお前らに教えてやらなきゃな。

今日はもう遅いから、また今度話してやろう。

運び屋十ヶ条


一、依頼人の詮索は一切しない

二、商品の中身を知る必要はない

三、目立たない

四、常に連絡が取れるようにしておく

五、時間厳守

六、仕事中は単独で動く

七、警察に捕まらない

八、繋がりを決して他に漏らさない

九、受けた仕事は必ず完遂する

十、同情をしない


以上を守れない場合、重篤なペナルティを課すことを此処に記す

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