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魔法少年  作者: 要
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ほかほか。


「次は足の手当てです!」


泥だらけで戻ってきた少年と一緒に寮の風呂に押し込められた。幸いかすり傷と足首の捻挫だけだったので良かった。滲みたけど。

風呂から上がると寮の部屋には救急箱を持った少女がいた。


「手当てします、そこに座って」


指示された椅子に腰かける。

高さが子供用なので少し低い。

椅子だけではない。机、棚、ベットなど全て子供サイズだ。


「ここは僕の寮なんです。ほんとは談話室とか寝る部屋とか別れてるんですけど、ここは人数も少ないので全部繋がってるんです」


あっちのベットに寮生が二人寝ているため少年は小声で話した。その寮生合わせて三人がここの寮生で、少女ももう一人の少年はそれぞれバラバラの寮だとか教えてくれた。


「はい、これで終わり」


「ありがとう、助かった」


足首はしっかりと固定されていて仕上がりも綺麗だった。


「あんたのこと聞いてもいいか?」


片手にランプを、反対にはバスケットを持ったもう一人の少年が部屋に入ってきた。

ランプをテーブルの中央に置き、向かいの椅子に座った。少年と少女も席についた。

かっぱらってきたというビンに入ったジュースと袋に詰められた丸パンとジャム。

深夜のご飯タイムが始まった。


「さっきは見苦しいところを見せてしまってすまない、俺は、ラボではモモと呼ばれていた。今はクロという名前を使っている」


「俺はレオン。レオって呼ばれてる。らいおん寮の寮長で魔法少年のリーダーをやってる。とりあえずあんたにはフタバを助けてもらって感謝してる。ありがとう」


「私はシノノメです。ねこ寮の寮長で魔法少女のリーダーと生徒会長をしています、私からもお礼を言わせてフタバをありがとう」


赤髪の少年がレオン。口は悪いが仲間思いなお兄ちゃんタイプな感じだ。

黒髪ポニテの少女がシノノメ。見るからにしっかりした雰囲気を出している。


「僕はフタバです!助けてくれてありがとうございました!僕はひよこ寮の寮長をしています」


フタバ、頭の上の髪がぴょこぴょこと跳ねていてそれがフタバに見える。名は体を表す。ぴったりだ。


「こっちこそ君に助けて貰った。ありがとう」


フタバはくすぐったそうに笑った。


「それで本題なのだけど、貴方、クロと呼んでも?」


「好きに呼んでくれ」


「クロの探している人はアズマさんとリアンさんで間違いない?」


無言で頷いた。

シノノメも無言でレオンと目を合わせお互いに頷いた。


「俺とシノノメは、その二人を元に造られたんだ」


「私がアズマさんのデータを元に、レオがリアンさんのデータを元に」


「マザーは違うけどな」


頭が追い付かない。


「けど失敗だった。アズマとリアンと同じものは出来なかった。」


二人の性別もこの二人の性別は合っていないし、容姿も髪の色が唯一重なるところだ。


「二人はどうして死んだのかわかるか?」


「私が産まれる前に二人とも死んでたから詳しくはわからない」


同じ配合で作られたわけではなく、接ぎ木のようにシノノメもレオンが造られたということか。


「僕知ってるよ、前にマザーが教えてくれた」


意外なところから声が出た。フタバだ。


「僕たちは自殺出来ないようにシステムされてるから、その、お互いに殺しあったって」


仲の良かったアズマとリアンが。

地獄に戻らないため、仲間のため、最善の行動がその結果だったのか。


「でもね、マザーがね、二人の最後の顔幸せそうだったって、泣いてたけど、幸せそうだったって」


「ありがとう、話してくれて」


幸せだったのだろうか、ずっと地獄にいて、やっと逃げ出せたのに、俺の為に留まって、お互いに殺しあって、幸せだったのか。

制限された中の最大の幸福だった。

ラボがなければ、あの地獄でなければ、二人は死ななくても良かったし、きっともっと幸せになれていたはずだ。


「私達は自由を手にいれたいの」


「そのためにここを脱け出さなくちゃ行けない」


「けど、脱け出すだけでは意味はない」


「ラボを壊さなくちゃ何も変わらない」


だから、協力してほしい。

アズマとリアン、そしてマザーと13年前に同じ会話をした。結局それは叶わなくて、俺一人だけが今ここにいる。

また、同じ結果になるかもしれない。むしろその可能性の方が高い。


『モモ、一緒に外に行こう』


『こんなところぶっ壊してやろう!ね、モモ』


『貴方たちはもっと幸せを知ってほしい。アズマ、リアン、モモ』


約束、モモ。


「クロ、」


三人の視線は真っ直ぐに俺に向いていた。

あの約束はまだ有効だ、まだ二人の意思は途絶えていない。

まだ生きている。


「協力させてほしい」


必ず叶える。

約束は違えない、次は必ず。


「よろしく、クロ」


「あぁ、こちらこそ。シノノメ、レオン、フタバ」


空だったグラスにジュースを注ぎ、そっと乾杯した。




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