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プロローグ00 神界サイド


 その日、暗黒神こと、プルートゥは一万二千年に渡る永きに渡る眠りから覚醒した。


「…………ここは、」


 未だにはっきりしない頭を振り、何が起こったのかを理解しようとするプルートゥに声をかけたのは、光を司る女神であるユースティティアである。


「漸く目覚めたのですね、暗黒神プルートゥ。貴方が目を覚まさすのを、今か今かと待ち焦がれていました」


 そう言って、両の瞳に涙を溜めながらプルートゥに話しかけてきたユースティティアは、細身の体に白皙の肌と黒い髪をした清楚な美女であった。


 ユースティティアの言葉に続くようにして、その背後からやって来たのは雷を司る女神ミネルヴァだ。

 彼女は、褐色の肌に短く切り込んだ金色の髪をした活発そうな美女で、プルートゥに向かって犬歯を剥きだしにした獰猛な笑みで微笑みかけた。


「全くだ。寝惚けるにしたって、ボケ過ぎだぜ。一体、どれだけの間眠っていたのか判ってんのかよ?」


 女だてらに武神としても名を馳せたミネルヴァは、蓮っ葉な言葉使いでプルートゥに文句をつけると、それに続くようにして、男神にして軍神である炎神ヴァルカンと風神バッカスが口々にプルートゥに食って掛かり出した。


「そうだぜ!お前が眠っている所為で、じゃじゃ馬どもの相手を一体誰がしなくちゃいけなくなったと思っているんだ!オレ達があれから一体どれだけ苦労したのか!お前、解かってんのか!分ってんのか!」

「本ッ当にその通り!ただでさえ男神は俺達三人しかいないのに、その貴重な男手であるお前が抜けちまった所為でもう、てんてこ舞いだ!こっちは尻脱ぎのオンパレードなんだよ!いい加減にお前も働けよな!」


 屈強な筋肉が浮き彫りになった体と野性的な風貌をしたヴァルカンと、細身ながらも引き締まった肉体をした優男であるバッカスは、未だに眠たげな眼をしているプルートゥの胸倉に掴みかかりながら、まるで懇願するように脅しかかって行く。

 そんなヴァルカンとバッカスのやり取りから、耳聡く二人の文句を聞きつけたのは、水神ディアナだ。


「……ねえ、じゃじゃ馬ども。って、私もミネルヴァと一緒に数えられてるの?それ、幾ら何でも失礼過ぎるの。あたしのどこがあの喧嘩バカの筋肉バカと同じなの?」


 ディアナは、他の神よりも頭一つ分低い身長をした、紫色の瞳と銀色の髪をしたあどけなさの残る童顔の美少女である。

 その美少女が、額に青筋を浮かべつつ、たじろぐ二人に向かって因縁をつけ始めるが、そんなディアナに待ったをかける様に、ミネルヴァがディアナに声をかける。


「おーい!他人を馬鹿呼ばわりしてんじゃねえよ!私はきちんと考えて戦ってんじゃんかよ!人間どもにだってちゃんと恵みを与えてるし、何処が馬鹿なんだよ!」

「はあ!?バカじゃん!バカじゃん!本当にバカじゃん!わざわざ竜を一匹倒す為に島一つ吹き飛ばす奴が何言ってんの!」

「巨人をぶっ殺すために洪水起こす奴に言われたくないし!つーか、氷河期とか何アレ?大地を氷漬けにして何が楽しいの?お前の方こそバカじゃねえの?」

「バカじゃないし!バカじゃないし!あれは必要だったからやったの!」


 最早、男神二人の文句など忘れたように口喧嘩を始める二人の姿を見て、情けないことに男神どもはこの場をどう治めたらいいのかと、傍観することしかできず、ユースティティアはこめかみを押さえてあきれ返った。

 すると、そんな二人の様子を眺めて、ユースティティアの傍で地母神ヴィーナスが愉快そうに小さく笑いながら、少し意地の悪い冗談を口にする。


「あはは~。世界を司る神々だって言うのに~、やってることが子供と変わんな過ぎます~。こんな調子だと、本当に世界の未来は真っ暗ですね~」

「ヴィーナス。縁起の悪い冗談はやめてください。こんなことをしている婆じゃないでしょう。今はとにかく二人の喧嘩を止めないと!」

「ごめんね~。ユーちゃん~。でも、やっぱり、あの四人は面白すぎるよ~。まあ、でも本当にこんなことをしている場合じゃないからね~。喧嘩を止めるね~」


 ヴィーナスは金色の髪と豊満な肉体をした柔和な笑みを浮かべた美女であり、静かで楚々とした雰囲気を持つこと以外には、ユースティティアとは対照的な姿をしていた。

 ヴィーナスは、にこやかな笑みを浮かべて喧嘩する二柱の神を眺めていると、


「あらあら~。ほんとうに、仲がいいね二人は~。うらやましいです~」


 そう言った。


「「どこがだ!」」


「ほら~。そう言う風にぴったり息があう~」


 くすくすと笑いながら、二人の女神をからかうようにおっとりと口を開くヴィーナスに、ミネルヴァとディアナの二人は、思わず口を噤んでしまう。


 そんな懐かしき神々の騒々しい姿を目の当たりにしたプルートゥは、しばしの間、呆けたようにその面々の姿を目の当たりにしていたが、やがてゆっくりと体を動かして、口を開いた。


「…………おやすみなさーい」


「「「「「「オイ!やめろやテメエ!」」」」」」


 再びその場に横たわり、瞼を固く閉じ始めた闇の神に、その場に居た全神が凄い勢いでツッコミを入れると、全員、必死の形相になってプルートゥを叩き起こそうと躍起になった。


「いやマジで寝惚けんじゃねえよ!今は世界の危機なんだって、本当にアンタの力が必要なんだって!」

「起きろー!起きろー!」

「眠るなよ、マジで!ネタ振りじゃねえんだからよ!」

「ちょっとアンタ!ふざけるのも大概にしなさいよ!」

「ねないでください~。起きてください~。プルートゥさん~」

「本当に起きてください!今はとにかく大変な時期なんです!」


 しかし、当の暗黒神は、


「えーやだー。めんどくさいのは、きらーい。もう少し寝かせてくれよー」 


 そう言って、もう一度眠りに就こうとその場で何度も寝返りを打った。

 

 その後、何やかんやで暗黒神は復活した。



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