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冒険の旅でいきなりハイレベル(後編)

「相手も奮発したもんだねぇ」


「何を悠長なことを言ってんのよ! 囲まれたわよ!」


 弥生の言う通り、見事に包囲される。桐生たちに逃げる隙間はない。九体の石像が息を合わせて手に持った槍を振り翳す。


「滋! 結界を張れ!」


「はい!」


 敵の攻撃が始まる直前に、自分を中心に滋は三人を被うようにドーム型の結界を即急に作る。敵の槍の攻撃は結界を突き破れず一切届かない。ただ、敵はそれでも攻撃をやめようとはしない。何度も何度も突き、叩いて、その度に弾かれてと、その繰り返しが続く。


「滋君、凄いわね」


「でも、結構、疲れるんですけど。この敵たち、いつになったらやめるんですかね?」


「そりゃ、お前、俺たちを殺すまでに決まっているだろう」


「ええ? 僕だってそんなに長くこうやっていられないよ」


「とりあえず頑張れ。このままだと俺たち殺されないにしても完全に足止めだからな、何か打開策を考える」


「早く考えてあげなさいよ」と弥生はまるで他人事である。


「ええい、お前も考えろ。希望を言えば、敵が攻撃に疲れるまで滋が耐える、もしくは結界を解いて俺一人だけ助かる、もしくは誰か助っ人がやってきてこの状況を打破してくれる。この三つだ!」


「二つ目は最低ね。それ以外はどれも希望薄いじゃない」


 疲労と先の不安で滋も頬を強張らせている。


「あの、ヴァイスさんに連絡取れないの? あの人なら『あちら側』と『こちら側』を自由に行き来できるって言ってなかった? すぐに来てもらって助けてもらえないの?」


「滋、残念ながら、この世界では携帯電話の電波が届かない。ほら、この通り」


 携帯電話を目前で翳されても、滋の気持ちが萎むだけである。心がそうなら張っていた結界も若干小さくなる。


「ちょっと! ふざけたことを言っているから、滋君もやる気をなくしてきてるじゃない! あんた、地面でも掘って、ひとり結界の外に出て、周りの敵をやっつけてみなさいよ!」


「それだって時間が掛かるだろうに。第一、ヴァイスを呼べって言ったのは滋だろう? 俺はその不可能を教えてやっただけだろうが。お! そうだ滋、いつだったか、弥生を病院送りにしたときのように結界を大放出できないか? それで周りの敵を一掃だ。どうだ?」


「ごめん、あんなのあの時だけだよ。あれから一度だって出来たことがないんだ。それに体力的にもきっと無理」


「ええい、敵もいい加減諦めて攻撃をやめろっていうんだよ!」


 この三人、余裕があるのか、ないのか…


 と、そこに、石像たちの頭上より黒い影が降ってくる。次の瞬間には一体の石像が頭から左右真っ二つに裂かれてしまう。影は続けて隣の石像の脇腹に一閃をくれ、こちらは上下で二つに切り離してしまう。一瞬にして二体の石像の動きが止まる。黒い髪、黒い服装、黒光りする刀、噂が影をさしたか、その正体はあのヴァイスである。


「おおっ、ミラクル」



続きます

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