97.D【凶夢:20】
◎【20】◎
〔オシリスとアイシス〕
ここは日本の島根県の某所
某ホテルのロビーで待ち合わせをしていた、四豊院奏と七照院燕彦と六甲院美咲と六甲院美幸と陸堂翼と陸堂瑛の六人に、謎の少女『暁恵』を入れた七人が、某ホテルの上階にある部屋まで移動していた。
その部屋の中では、七人がそれぞれ寛ぎながら話し合っている。
ここで暁恵について―――
彼女はある施設で『保険魔法』についての実験データ収集の為の実験台の一人、実験データや開発資料等の書類、または実験台の女の子たちや研究員・科学者・助手などは、そのほとんどがハリー・ダグラスの手によって救出されていて、あの地球の護り神〈アクナディオス〉たちに引き渡した。
そんな実験台の女の子たちの中には、なんとか地球の護り神〈アクナディオス〉たちのところには行かなかった者もいたようで、彼女もその一人である。
その娘がまわり廻って、六甲院家にやって来たけど、その事の重大さに、瑛や奏たちのところまで一緒に連れていって、彼らに相談するつもりでいたのだ。
ここでの『保険魔法』については、今のところは不明であり、不思議と謎の多いところである。
その目的が一体何かは不明ではあるものの、この少女・暁恵をエサにして、あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き寄せようとしている。
それにしても、六甲院家は思いきったことをしてきたモノだな。
実験台であるとはいえ、一人の少女を差し出して、あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出そうというのか?
そこで疑問に思った陸堂兄弟が六甲院姉妹に質問してきた。
「何故、そこまでして地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出すんだ? 美咲よ」
「はい、え~~とですねぇ~~ それは―――」
「もしかして、例の "変な悪夢" でも見ましたか? 美咲さん」
「いいえ、そういう訳ではありませんわ。 瑛様、翼様」
「はい、お姉様は前々から異世界に少し興味がありまして、まさか地球の護り神〈アクナディオス〉が、その方法を握っていると知って―――」
「はい、異世界にはモンスターやダンジョンやエルフや獣人や勇者・魔王などありまして、どうせならなんとか、その体験が出来ないモノかと思いまして―――」
「ふん、やめておけ!」
「はい、そうですよ。 意外に異世界は危険ですよ? 異世界では色々と設定がうるさいですから、自分の思い通りにならないかもしれませんよ。」
「ふん、それに運良く生き残って……もとの世界に戻れる保証もないぞ。 余計な真似はやめた方がいいな。」
「いいえ、私たちが行く訳ではありませんわ。 瑛様、翼様」
「……えっ!? 違うのですかっ!? 美咲さん」
「……何っ!? それは一体どういうことなんだっ!? 美咲よ」
「はい、先程も出てきた例の "変な悪夢" についてなのですけど―――」
「はい、私たちは見ていないのですけど、周りの人達の……特にご高齢の方がよく見てる傾向がありまして―――」
「そのまま死ぬくらいなら、過酷な異世界に転移して、なんとか自力で暮らしたいと思っているそうですわ。」
「結構もの好きな方がいますけどね。」
「はい、そこであの地球の護り神〈アクナディオス〉たちを見つけて、異世界転移をお願いするつもりなのですわ。」
「「……」」
瑛と翼が黙ったままでいると、そこで美咲が質問してきた。
「それでどうでしょうか? 瑛様、翼様」
「……」
「なるほど、そうですか。 非常に難しい選択ですね。 ねぇ瑛?」
「……」
「……瑛はどう思いますか?」
ここで瑛が無言で長考している。
その様子を翼や美咲や美幸や奏や燕彦たちは、ただ黙って見つめている。
しばらくすると、瑛がまた口を開けた。
「ふん、やめておけ!」
「やっぱりダメですか? あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出すなんてことは……?」
「いや、違う。 あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出すこと自体を否定しているわけではない。 問題なのは異世界転移にある。 さっきも翼が言ってたことだが、異世界は非常に危険―――いや、おそらく、あの地球の護り神〈アクナディオス〉が仕掛けた巧妙な罠……か?」
「……?」
「「…罠…?」」
「「…罠…ですか…?」」
「あぁ、そうだ。 奴らが一体何の目的で、一体どうやって罠を仕掛けるつもりなのかは、今の俺にもよく解らんけど、おそらく、奴らは出来るだけ沢山の人間を異世界に転移させたいのだろうな。」
「えっ、そうなのですか? それは困りましたわね? 瑛様」
「すると、あの地球の護り神〈アクナディオス〉たちは、沢山の人間を異世界に転移させることが目的なのですか? 瑛様」
「あぁ、そうだ。 この俺にはそうしか思えんのだ。 あの連中が何の考えもなしに、ただ人間たちを異世界転移している訳がないはずだからな。」
「それでは、あの地球の護り神〈アクナディオス〉たちに "異世界転移" の力を使わせてはいけないと言うことですか?」
「あぁ、そうだ。 もしかしたら、それが『保険魔法』の力の秘密と深く関わっているのではないのか?」
「「「「……」」」」
「なるほど、そうなのですか。 確かに、それは危険ですよね? 瑛」
「…あぁ、そうだな…」
そこで、ようやく謎の少女『暁恵』が、その重い口を開けた。
「……さ…さすがです……そこまでわかる方が居るなんて…思いもよりませんでした……これは本当に凄いことです……」
この瑛の予想以上の洞察力と判断力に、謎の少女『暁恵』はただただ驚き、舌を巻いているだけである。
ちなみに、あの地球の護り神〈アクナディオス〉たちを誘き寄せる方法・作戦については、まだまだ検討中である。
遂に『緊急事態宣言』発令!!
これで投稿自粛………はしませんけど、今まで通りに不定期で投稿更新していくつもりです。
これからも宜しくお願いします。




