96.D【凶夢:19】
前回の続きです。
◎【19】◎
〔オシリスとアイシス〕
ここは日本の島根県の某所
某ホテルのロビーで待ち合わせをしていた、四豊院奏と七照院燕彦の二人は、まず最初にやって来た六甲院美咲と六甲院美幸の二人と再会を果たすと、美咲と美幸の二人の後ろに、少女が一人いることに気がついた奏が不思議に思い声をかけた。
「その娘、だ~れ~?」
「はい、この娘はですねぇ~」
奏の質問に美咲が答えようとすると、その背後から謎の声が聞こえてきて―――
「彼女の名前は『暁恵』と言うそうですよ。 彼女は神奈川県出身のまだまだ小学生だそうですよ。 今回は何か用事があるようですね。」
「……?」
そう言うのは、あとからやって来た陸堂瑛と陸堂翼の二人のうちの翼が、まるでなんでもわかってるような感じで話しかけてきた。
「あら、もう来たのね。 瑛に翼」
「おお、瑛か。 それと相変わらず何でも知ってるようだな。 翼よ」
「これはごきげんよう。 瑛様、翼様」
「どうもお久しぶりです。 瑛様、翼様」
「これは皆さん、どうもです。 奏さん、燕彦さん、美咲さん、美幸さん、お元気でしたか?」
「それで……今日は一体何の用なのか? また仕事か……?」
「……」
陸堂兄弟の到着を機に、皆がそれぞれ思い思いの挨拶をしていて、これでようやく四豊院奏と七照院燕彦と六甲院美咲と六甲院美幸と陸堂翼と陸堂瑛の六人が揃った。
「取り敢えず、ここにいても邪魔になるので、私が予約しておいた部屋まで行きましょうか。」
「ああ、わかった」
「はい、判りました。」
そこで『暁恵』という少女を含めた七人が、某ホテルのロビーから離れて、予め美咲が予約した某ホテルの上階の部屋まで移動した。
その部屋は話し合いの場を設けただけの部屋であり、そこで休憩・宿泊するつもりはない。 そこに瑛たち七人がいて、『暁恵』が複数ある椅子のひとつに座り、美咲と美幸の二人が並んで右側のベッドに座って、奏が左側のベッドの上に寝転んでいる。
燕彦も複数ある椅子のひとつに座り、瑛と翼が二人並んで立っている。
「瑛様、翼様ご報告としては、まずあの例の商品の販売準備が完了して、まもなく売り出す方向で進んでいますわ。」
「はい、そうですか。 いよいよ売り出すのですね? あのスポーツ用の下着姿のユニフォームを」
「ほーう、アレもう売り出すのか? なかなかやるなぁ」
「はい、あの例の商品を試験的に順次発売していき、同時進行で新シリーズも順次開発していき、次々と世に出す予定です。」
「取り敢えず、サッカー用に作成していますので、あとは集めたデータをもとに必要に応じて、野球やテニスやバレーボールやバスケットボールなどにあった下着姿のユニフォームを作成していくつもりですわ。」
「はい、まさに次世代の下着姿のユニフォームといったところですかね?」
「まぁ、あとはそっちに任せる。 好きにやってくれ」
「ですが、商品等の向上・開発や大会等の設定・企画などの、この商品の企画・開発などには、引き続きご協力してもらいたいのですが……?」
「わかった、わかった」
「はい、判りました。」
「ありがとうございます。 瑛様、翼様」
「それでは引き続き宜しくお願いしますわ。 瑛様、翼様」
「……」
その後も瑛たち六人が事務レベルの仕事についての話し合いをしていたが、当然何の関係もなく、意味が解らなかった暁恵は無口のままだった。
「ところで、その娘は一体どういった……?」
ここでようやく燕彦が暁恵について疑問に思ってたことを質問してきた。
「もしかして、その娘も "悪夢" を見ちゃったとか……?」
続けて奏も疑問に思ったことを美咲に質問してきた。
「いいえ、それは違いますわ。 ですが、より深刻であることにはかわりありませんわ。 この娘に関して言えば……」
「はい、残念ですが、私たちの手におえる案件ではない、と思われます。 ですので、ぜひ瑛様たちにもご相談を、と思いまして……」
「……」(グイグイ、キラーン)
ここで翼がメガネの真ん中を指で押してかけ直していて、メガネの端の方がキラリと一瞬光輝いた。
「なるほど、彼女は『保険魔法』の実験台の生き残りですか……?」
「はい、その通りです。 やっぱり、気づいていましたか? さすが魔法に関しては無敵の翼様です。」
「さしずめ、依頼内容は彼女を匿っての護衛ですか?」
「……!」
「……す、スゴい……」
彼女はある施設で『保険魔法』についての実験データ収集の為の実験台の一人、実験データや開発資料等の書類、または実験台の女の子たちや研究員・科学者・助手などは、ほとんどがハリー・ダグラスの手によって救出されていて、あの地球の護り神〈アクナディオス〉たちに引き渡した。
だがしかし、実験台の女の子の中には、運良く?地球の護り神〈アクナディオス〉たちのところに行かなかった者もいたようで、彼女もその一人である。
その娘がまわり廻って、六甲院家にやって来たけど、その事の重大さに、瑛や奏たち最強の力と魔法を持つ者たちのところまで一緒に連れていって、彼らに相談するつもりでいた。
その事に一番早く気づいたのが、超天才の翼ってわけだ。
普通であれば、ほぼ正解な回答をした翼なのだが、美咲は予想外の……いや、想像を超えた回答をした。
「いいえ、違いますわ。 この娘をエサに、あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出しますわ。」
まさか地球の護り神〈アクナディオス〉たちを利用するつもりなのか……?
「……えっ!?」
「ほーう、なるほど」
「……ふん」
「おっと、そっちでしたか?」
「勿論、あの地球の護り神〈アクナディオス〉がまだこの娘のことを気にかけていればの話ですけど、今や地球に住む人間にとって『異世界転移』という魅力的な魔法能力は必要不可欠になってしまいました。 大変皮肉な話ですが……」
「あの地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出す……か」
「はい、今やどんどん地球や悪夢によって人間が殺害され続けていますわ。 命欲しさに異世界に行く者、異世界に憧れて進んでいく者、様々な人間がいますけど、異世界転移が出来るのは、保険魔法が使用できる唯一の存在、地球の護り神〈アクナディオス〉だけですわ。」
「今になって思うのですが、あそこまで執拗に保険魔法に執着した、地球の護り神〈アクナディオス〉はこの事を判っていたのですか? 瑛様、翼様」
「おそらく、そうだろうな。 地球の護り神とはよく言ったものだな。 これは明らかに予見していたことだ」
「ところで、暁恵ちゃんはこの事を了承済みなのですか? 美咲さん」
「はい、彼女はしっかり理解して覚悟をもって了承して下さいました。」
「……」
ここで暁恵がコクリと無言で頷いた。
だがしかし、その目はまったく死んでおらず、逆にギラギラと輝いていて、それを見た瑛が―――
「ふん、いい目だ。 面白いな……その依頼を引き受けた。 必ず最後までしっかり、彼女を守り通してみせる。」
「はい、判りました。 これは重要案件で大仕事になりますよ。 瑛」
「ああ、そうだな」
瑛がニヤリと笑った。
「奏はどうする?」
「勿論、受けるわよ! こんなの、めったに受けられる仕事じゃないわよ!」
「ああ、そうだな。 遂に地球の護り神〈アクナディオス〉と対峙できるかどうか、の千載一遇のチャンスなのかもな……?」
「皆さん、ご協力ありがとうございます。 ぜひ宜しくお願いします。」
「それでは作戦を決めましょうか? 皆さん」
そこで美咲や美幸はニコリと笑っていたけど、果たして地球の護り神〈アクナディオス〉を誘き出す方法・作戦とは、一体どういったものなのか……っ!?
まだまだ次回に続きます。
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