95.D【凶夢:18】
◎【18】◎
〔オシリスとアイシス〕
現在……日本の東北地方で最も人気があるのが、あの四豊院奏なのである。
最近、巷で起きている "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" の運命と法則を覆そうと、その悪夢を見た者たちが連日の様に奏を頼ってきている。
いよいよ本格的に深刻な問題になってきている。
だがしかし、実は奏も困っていた。
何故なら、その悪夢の直接的な関係や因果はよく解っていないけど、普通一般的に "死ぬ" ということは、そこで寿命を迎えたことになっており、無事に天寿をまっとうしたことになる。
様々な死があるけど、全ての者が天命を受けて、この世に生を受け、やがて天命を終えて朽ち果てて死んでいく。
そして、死んだ者は死者の世界 (俗に言う天国や地獄などの冥界的なモノ) に逝き、そこで汚れた魂を洗浄して新たな記憶が植え付けられ、再び輪廻の輪を潜り抜けて、新たな生命体となって、新しい世界の中で誕生する。
それが全ての生命体の『生』と『死』の仕組み・法則である。
だからこそ、奏にはこの仕組み・法則を打ち破ることができないのだ。
ちなみにだが、奏は以前から "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" を何度も見ており、彼女は地球よりもかなり強い為、地球から殺害されることはない。
つまり、ここから先は選ばれし者だけしか、生き残れない設定になってる。
だからこそ、そこに選ばれなかった者は、自分が殺害される最後の最期まで必死になって、もがき苦しみ生き抜こうとする。
そこを四豊院奏が観察・分析・報告していくのだ。
だがしかし、そこに新たに現れたのが―――
現在、日本の長野方面で最も人気があるのが、あの七照院燕彦なのである。
最近、巷で起きている "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" の運命と法則を覆そうと、その悪夢を見た者たちが連日の様に燕彦を頼ってきている。
いよいよ本格的に深刻な問題になってきたようだ。
だがしかし、実は燕彦も困っていた。
この世界の仏教 (実際の仏教とは異なる魔法世界での仏教のこと) に伝わる4つの苦境『生』『老』『病』『死』に魔法世界ならではの苦境『選』がある。
※この『選』とは、生まれながらに魔法が使える者と魔法が使えない者に分かれる。
勿論だけど、生後から魔法が使えない者でも、その後で様々な学習・特訓・性質などで魔法が使える者も出てくる。
だがしかし、それでもどんなに努力しても、または根性を出しても、どうしても魔法が使えない者もいる。
つまり、自分だけは『魔法使用者』に選ばれなかった事になるのだ。
そう……「自分には魔法の才能なんてなかった」と……
これもまた苦境のひとつであろう。
そうである。
これでも『生』も『死』も人間にとっては試練なのである。
当然だが、その試練を燕彦が妨げることなどできないのである。
ちなみにだが、燕彦も以前から "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" を何度も見ており、彼は地球よりも少し強い為、地球から殺害されることはない。
結局は、ここから先は選ばれし者だけしか、生き残れない設定になってる。
だからこそ、そこに選ばれなかった者は、自分が殺害される最後の最期まで必死になって、もがき苦しみ生き抜こうとする。
そこを七照院燕彦が観察・分析・報告していくのだ。
だがしかし、そこに新たに現れたのが―――
突如として、この魔法世界の世界中に蔓延した "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" というモノは、その悪夢では何者かによって殺害されるモノであり、数日後の丁度、その日に夢で見た同じ方法と状態で殺害されてしまう。 ある意味、"予知夢" みたいなモノである。
一度見てしまった者は、逃れる手段がなく、今までに何人もの人間が必ず死んでいる。
このまま何もできずに黙って死んでしまうのか?
だがしかし、そこで奇跡? みたいなモノが起きていた?
あの地球の護り神〈アクナディオス〉が遂に彼らしか使用できず、またそれしか使用できないという『保険魔法』の開発・研究・実験に着手した。
それに伴い、『保険魔法』の魔法能力の一端でもある『異世界転移』の能力の試験運用も行っている。
―――『異世界転移』……。
確かに、この世界での全ての生活や権力を捨てなければならない。
さらに言うなら、その異世界まで行って、生き残れる保証も確証もない。
それに強力なモンスターと戦って殺られたら、結局は同じだからだ。
だがしかし、「必ずすぐ死ぬ」のと「異世界で不安と恐怖に怯えながら、生き抜くしかない」という究極の選択を選ばなければならない時、そこのあなたなら一体どちらを選びますか?
ここは日本の島根県の某所
ある日の夜
四豊院奏と七照院燕彦の二人が島根県にある某ホテルの一階ロビーのソファーに座っていて、誰かが来るのを待っていた。
無口の奏と燕彦は、どうやら誰かと待ち合わせをしているようだ。
「「………」」
すると、ここで六甲院美咲と六甲院美幸の二人が奏と燕彦の目の前まで歩いて近づき、奏と燕彦の二人に話しかけてきた。
「おお、来たのか。 美咲と美幸か」
「ごきげんよう、お待たせしました。 奏さんに燕彦さん」
「はい、どうもお待たせしました」
「やあ、元気そうだね。 二人共」
「どうやら、あの下着のユニフォームが商品化できたようだな? もう試験販売的なことをしてるのだろ?」
「ええ、そうよね。 もうできたのね? でもあんなの着てスポーツするなんて、結構度胸いるわよ? ホントにできるの?」
「はい、近い将来の話ですけど、特殊な屋内施設の建物を建てて、その中でプレーをしますわ。」
「はい、グランドやピッチ・フィールドや競技場なども下着型ユニフォームに合わせた設備・環境にさせていきますので、取り敢えずは大丈夫だと思います。」
「あとは羞恥心の問題だと思いますわ。 一種のユニフォームだと思ってもらえれば、そのうちに人気も出てくるでしょう。」
「なるほど、そういうことか。 それにしても、陸堂翼の奴は相変わらず頭の回転が早いし、色々とよく考えるようだな。」
「はい、ほとんど彼のアイデアですから……」
「それじゃあ、あの商品は六甲院・ミサキグループと陸堂サポートサービスの協同開発・共同販売でいいんじゃない? ボクたちはお手伝い程度でいいよ」
「ああ、それでいいと思う」
「そうですか、ではそのようにしますわ」
「はい、判りました。 どうもありがとうございます。」
「そう言えば、その陸堂瑛と陸堂翼の二人はどうした? まだ来ていないのか?」
「はい、今最後の仕事が終わった後で、こちらに急行するそうですわ。」
「おう、そうか。 奴らも相変わらず忙しいようだな」
「ねえねえ、ところであなたたちの後ろにいる、その女の子は一体誰なの?」
すると、ここで奏が美咲と美幸の二人の後ろで立っていた一人の少女が目に入った。
「はい、この方は―――」
「………」
奏に気づかれた、その少女が美咲と美幸の前にそっと出てきて、無言で静かにお辞儀をした。
……彼女は一体何者なのか、これから一体何が起こるのか……?
次回に続きますけど、
この少女……なにやらワケあり……かな?




