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アウターマウカー ~セイント.ワールド.ゼロ.オブ.ゴッド.フォー~  作者: 南かずしげ
D.【オシリスとアイシス編】
94/105

94.D【凶夢:17】

    ◎【17】◎



  〔オシリスとアイシス〕




 ここはアラスカ某所で、旧アメリカ陸軍の特殊施設の建物にある応接室の中に、ハリー・ダグラスが無事任務を終了して椅子に座って休んでいる。

 でもハリー・ダグラスは腕組みして目を閉じて、まるで何か考え込んでいるようだ。


 長い机の反対側の椅子に座るのが、マイティーネフト中佐とギラーソンズ将軍の二人である。


 まずはギラーソンズ将軍たちからハリーに話しかけてきた。


「ご苦労だったな、ハリー・ダグラスよ。 お陰で地球の護り神〈アクナディオス〉もとても満足していたそうだぞ。」

「ふん、まあまあだったな。」


「……」


「なるほど、特に何もなし……か? ところで次の仕事の依頼をしたいのだがな……?」

「ふん、貴様にまた仕事だとさ。」


「……な、何っ!?」


「そこで貴殿を原隊復帰させたいのだが……どうだろう?」

「また軍に戻れってことさ。」


「……断る……」


「それは何故だ、ハリー・ダグラスよ」

「っ!!?」


「ふん、軍に戻ったら、また復讐出来なくなる。」


「……復讐……」

「……な、何……復讐……だと!?」


「……」


「な、何故だ……何故、そこまで復讐にこだわる……?」

「そ、そうだ! 何故なんだ!」


「そんなこと聞いて、一体どうするつもりなんだい?」


「……今後の参考までに聞いておきたいのだがな……?」


「ふふふ、将軍ともあろう者が "ボクの復讐" を今後の参考にするのかい?」


「……」

「それでこれからどうするつもりなのか? 原隊復帰しないと言うのであれば、また牢獄に逆戻りだぞ。 貴様はまだ軍人だからな。 軍律・軍法には従ってもらうぞ。」


「……」


「また黙りか……?」

「……無口なのか……それとも黙秘なのか? 何故黙ってる? 何も言いたくないのか?」


「……質問が多いようだな? これは取り調べなのか? ならば軍関係の警察官を呼びたまえ。 ならばボクも弁護士を呼ぼうか。」


「ちっ、ふざけてやがる」

「おい、我々は貴様の上官なんだぞ!」


「…ふん…」


「……偉そうだな、ハリー・ダグラスよ」

「とにかく貴様には、もう復讐なんてさせないぞ。 地球の護り神とやらも軍関係者も我々軍人も貴様には、もう絶対に復讐には協力しないぞ。」

「ふふふ、その通りだ。 ハリー・ダグラスよ……貴殿に復讐はさせないよ。」


「……」

相変わらずハリー・ダグラスは無表情・無口で、最早(もはや)何の反応・対応していない。


「……?」

「ちっ、随分(ずいぶん)平然としてるな。 一体どういうつもりなんだ?」


「ふふふ、勘違いしてるようだな。 そもそも復讐とは自分の力で果たすもので、今のボクの一番の目的なのだよ。 あんな連中などアテにしていない。」


「……な、何っ!?」

「そ、そんなバカなぁ!?」


「……」


「な、なんという愚かなことを……復讐などと、そんなことを……よくもまぁ平気で……言うよなぁ……」

「き、貴様……本当に正気なのか……っ!?」


「ふん、何とでも言うがいい。 今のボクの人生は裏切りと復讐の連続なのさ。 このボクこそが "人生=復讐" なのさ。」


「……」

「……」

ここでマイティーネフト中佐やギラーソンズ将軍は、ただただ驚くばかりで唖然としている。


 ちっ、もうハリー・ダグラスに利用価値がないのか?

 だがしかし、これほどの実力者を容易(たやす)く殺すなど、あまりにも惜しい限りである。

 なんとかならないのか?

 でもいくら考えても答えは出てこない。


「……」


「話にならんな」

「これではラチがあかんぞ」

「仕方がない。ハリー・ダグラスをまた牢獄に閉じ込めておけ。」 


「はっ」

そこで見張りの兵士たちが、ハリー・ダグラスを立たせ引き連れて、そのまま地下の牢獄まで連れていった。

なお、ハリー・ダグラスは一切暴力・抵抗しないようで、素直に連れていかれた。




 マイティーネフト中佐とギラーソンズ将軍の二人が、ハリー・ダグラスの後ろ姿をただ眺めながら、彼が部屋を出ていくと、二人共にため息をついた。


「はぁ~ 全く上手くいかんものだな」

「はぁ~ 全くあそこまで強情な奴だったとは……な。」


「ヒヒヒ、だから言ったはずだよ。 あの男は復讐にしか興味がないとね。 ハハハ」


 すると二人の背後から、イヤらしい薄気味悪い声が聞こえてきて、二人は後ろを振り向かずに前を見て、そのまま話しかけてきた。


「……地球の護り神〈アクナディオス〉か……」

「……地球の護り神……」


 そう、そこにはいつの間にか、地球の護り神〈アクナディオス〉たちが立って現れていた。


「ヒヒヒ、ハリー・ダグラス……予想通りの答えが返ってきたようだな。 ハハハ」


「では……もうあの男に利用価値がなくなったと言うことなのか……?」

「だがしかし、あれほどの実力の持ち主を、そう簡単に切り捨てられるのか?」


「ヒヒヒ、その心配はいらないよ。 あの男にはまだまだ使い道はあるよ。 今は仕事が終えたばかり……ゆっくり休ませておけ……牢獄の中でな。 ハハハ」


「…そうか…」

「…なるほど…」


 そう言うと、またいつの間にか、地球の護り神〈アクナディオス〉たちの姿が消えていた。


 やっぱりハリー・ダグラスは、そう簡単に殺されたりしない。

 彼にはまだまだやるべきことが残っているのだから―――







 ここは日本の東北地方の某所


 とある森の中に無数の墓石が並んで立っている。 ここは宮城県の中心部から少し離れた山の中の森。 ここは今でも心霊スポットとして、地元では有名な場所で胆試しに来る若者もいるらしい。


 ある日の深夜


 ()()()()四豊院奏と七照院燕彦の二人が立っていて、暗闇の中で話し合っている。 ちなみに二人共に普通に冷静で全く怖がっていない。


「いよいよ始まったわね。 燕彦」

「ああ、そうだな。 奏よ」

「これが……あの有名な…… "悪夢を見た者は必ず死ぬ!" ってヤツなのね?」

「ああ、そうだ。 これで地球が書いたシナリオ通りに、人間は踊らされることになるだろう。」

「じゃあ、これでもう終わりってこと?」

「ああ、それが運命ならば……な。」


 その後も奏と燕彦の二人は、目の前の無数の墓石を静かに見つめていた。


 月も星もない真っ暗な夜だった。



久しぶりのハリー・ダグラスの登場です。


読んで頂いてありがとうございます。

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