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アウターマウカー ~セイント.ワールド.ゼロ.オブ.ゴッド.フォー~  作者: 南かずしげ
D.【オシリスとアイシス編】
86/105

86.D【凶夢:09】

    ◎【09】◎



  〔オシリスとアイシス〕



 旧アメリカ連合国アラスカ領


  ある日の夜のこと


 その頃になって、ハリー・ダグラスは一人で、この巨大な要塞みたいな白い建物の内部に侵入することに成功していた。


 この建物の内部は意外にも暖かく―――ハリーはまず入口付近から、まっすぐに前に伸びた明るく綺麗な大型の通路を使わずに、入口からすぐ横にあって、もう誰も使っていなさそうな細く暗く岩肌剥き出しの小型の通路の方を使用して、今は歩いている。


 ハリーは持参していた懐中電灯で小型の通路を照らしているが、やっぱりこの通路は相当に古く気持ちが悪い。 今にも幽霊が出てきそうな暗く古いトンネルと同じ感じの通路である。


 その小型の通路は、特に何もない一本道であり、あまりに古いので監視カメラさえも見当たらない。 ハリーがそのまままっすぐ歩いていくと―――


「…ん? なんだアレは…?」


 この通路の突き当たりに、いきなり何かの部屋らしきモノの扉が現れた。


「………」


 ハリーが小型の通路をよく注意しながら静かに歩いていき、ようやく突き当たりの何かの部屋の扉の目の前に到着した。


「この扉は一体何なんだぁ!? これは()けられるものなのかぁ!?」


 ハリーが部屋の扉のドアノブに手をかけて、扉を()けようとするのだが、施錠されているのか、なかなか開かない。


 ガチャガチャ……ガチッ!


「…ちっ、やはり開かないのか…? さて、困ったぞ…」


 早くも行き詰まってしまったようだ。 扉を破壊してもいいのだが、その破壊音で敵に気づかれる恐れがある。 しかも少し古いけど、意外にも固そうな鉄の扉である。


「さて、どうするか?」


 このまま来た道を戻るわけにもいけない。 もしかしたら見張りの敵が来るかもしれない。

 とはいえ、ここで悠長に考えている時間(ヒマ)もない。


 ギィイイイイーー……


 するとなんと、何かの部屋の古く頑丈そうな鉄の扉が、突然…開いてきた。


「…っ!?」


 その重たそうに開く音は、まるで内側から何者かが、扉を()けているように見える。

 ハリーは咄嗟に身構えた。


「あなたは…もしかして、ハリー・ダグラス…ですか?」

「!!?」


 扉を()けてきた者は、その重たそうな鉄の扉を決して、一人では()けられそうにないほどの貧相で粗末な身なりの女性であった。


 その女性の容姿とは、長い黒髪の大きな黒茶色の瞳、全身が痩せ細く、汚く黒ずんだ白い布の服を着ている。 確かに、痩せているけど、顔はとても可愛い童顔で…もしかして少女(第一番号)なのか…?


 その女性が、ゆっくりとハリーの前まで来ていて、そこで黙ってしまった。


「……」

「キミは何者なんだ? 何故、ボクのことを知っている?」


「…わたしは…」

「……」

「…わたしは…ただの実験台…です。」

「…? 実験台…?」

「はい、名前は…よく解りません…ただの実験台なので…」

「ここで一体何の実験をしているのだ?」

「……」

ここで…その女性が、少し(うつむ)いてしまうが―――


「……」

「…『保険魔法』…です。」

「!!?」


 ハリーは…その女性から…()()()()を聞いて…凄く驚愕している。


「な、何ぃっ!?」

「……」


 なんだと、まさか…本当にあるのか!? その『保険魔法』と言うヤツはぁ…っ!?


「…わたしを…助けに…来てくれた…のですか…?」

「……助けに…?」


 そこでハリーが少し考え込んでしまう。


「…お願いです。 …()()()()()を助けてください。」

「…何? …()()…? …他にもまだいるのか…?」

「…はい…」


「………」


 ……助ける……だと? 果たして…そんな余裕があるのか…? だがしかし、もし断ったら…一体どうなる…? ……いや、この少女はいま『保険魔法』の "実験台" と言っていたな…? もしかしたら……


 そうなのである。

 ハリーには、これが仮に罠かもしれないと思っていても、他に手掛かりがない『保険魔法』の詳細な情報を知る為の…唯一の…一縷(いちる)の望みにかけるしかなかったのだ。


「よし、いいだろう。 キミたちのことを助けよう。 その代わりだが、キミたちの『保険魔法』の情報を「ある者」に伝えてくれないか?」

「…ある者に…ですか…?」

「ああ、そうだ。 キミたちが "あいつら" に、ボクの代わりに、それを報告するんだ。」

「…あなたの代わりに…?」

「ああ、そうだ。 あとは頼んだぞ。 ボクはここで死ぬ覚悟だからなんだよ。」

「……えぇ…っ!?」


 そこでハリーとその実験台の女性が、お互いの瞳を見つめ合っていた。


「…どうして…?」

「ふふふ、ボクは死に場所を探す者だよ。 だからキミたちだけは助かってくれ。」

「……死ぬつもりなんですか? ハリー・ダグラス」

「……さあ…どうかな……」


 すると扉の向こうから、また女性がもう一人…ひょいと出てきて現れた。 どうやら鉄の扉は二人で開けていたようだ。


「…ホンモノのハリー・ダグラス…なのですか…?」

「……キミも実験台なのか?」

「……はい」


 その扉の向こうから出てきた、もう一人の女性も、ひどく痩せ細い身体をしていて、その容姿が長い金髪に大きな翡翠(みどり)色の瞳、彼女もとても可愛い童顔の少女(第二番号)なのか…? が、先程の実験台の女性同様に黒く汚れた白い布の服を着ている。


「………」


 なるほどな…この部屋は、その『保険魔法』とやらの実験・研究に必要な実験台・研究対象を()()しておく部屋なのだな。


「それでは失礼するよ」

「「はい、どうぞ」」


 ハリーが一言断って、その部屋の中に入ろうとすると、実験台の女性たちが小さく(うなず)き同時に同意する。


 こうして、ハリーを部屋の中に招き入れた実験台の女性たちが、再び重たそうな鉄の扉をバタンと音を立てて閉めた。


 これからハリー・ダグラスは、果たして無事に目的を達成できるのか? 死を覚悟した男に恐怖や怯えはない……のか?


 そして、一体どうなっていくのか―――次回へ


………続きます。

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