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アウターマウカー ~セイント.ワールド.ゼロ.オブ.ゴッド.フォー~  作者: 南かずしげ
D.【オシリスとアイシス編】
78/105

78.D【凶夢:01】

    ◎【01】◎



  〔オシリスとアイシス〕



 オシリスとは……エジプト神話に伝わるエジプトの神。 主に死と冥界を司る神と言い伝えられている。 のちに何者かによって暗殺されてしまうのだが……。

 アイシスとは……エジプト神話に伝わるエジプトの女神。 オシリスの妻。 愛情を持って献身的に夫・オシリスを支えている。 夫が何者かによって暗殺されたあとも、復活の力を利用して夫を復活させようとするのだが……。




   ―――-◎-―――




 この【魔法世界】には〈アウターマウカー〉と言う名前の魔法が使用可能な存在であり、人間の手によって生み出されてしまった悪魔的化物が支配・統治する、世界の何処かにある化物島(テミスモイラ)という島に4つの都市があり、それぞれの街に多くの人間が暮らしている。

 先日も、アルヴァロス・X・ラピッドマンと言う名前の男が所有する研究施設の中に侵入して、物色していき研究資料・実験データなどを盗んだとされて犯罪組織の実行犯の一人の男が警察に逮捕された。 彼の容疑は「住居侵入」と「窃盗」である。

 犯人の男は取り調べでも、一切の黙秘……いまだに何も話さない。 警察も必死になって捜査しているのだが、アルヴァロスや〈アウターマウカー〉には、既にこの事件に対する関心がなく、次の目的に向かっている。




   ―――-◎-―――




    【アメリカ】


 この【魔法世界】での現在のアメリカは、国の名前を変えていて『ラー・アメリカ連合国』(俗称:新アメリカ)と呼ばれており、アメリカ全本土に加えてカナダやメキシコやキューバなどの北米大陸にある、ほとんどの国々を束ねていて併合・統治して一大強国となっている。


   [M32/10月]


 旧アメリカ陸軍の刑務所の中には、あの有名な "ハリー・ダグラス" が入れられている。

 元軍人であるハリー・ダグラスと言う名前の男は、同じ軍人・軍関係者に裏切られて軍を追われることになり、軍から逃げるように亡命を繰り返しながら、自分を裏切った者たちを殺害していき、日本に到着したところでアメリカ軍関係者に捕縛されてしまった。


 基本的に彼の面会は禁止されており、誰も彼に会って話すことができない。 またいつまで刑務所の中に入っていて、いつ頃……出られるのかもよく解っていない。 何故なら、彼自身は罪を裁くべき裁判を一切していないからである。


 そうなのだ、彼は完全に超危険人物として、隔離されてしまっている。


 ハリーは独房の中で一人、目を閉じて瞑想している。 時々……軍人看守がハリーの様子を見ているが、特に変わった様子は見られない。

 だが、彼は決して諦めていない。 いつか自分を裏切った者たちに復讐するという目的を果たす為に彼は絶対に諦めない。


 さらに彼の愛用の聖剣『ロンギヌス』も、別の某所で大切に管理・保管されている。


 そんな絶体絶命の状況下でも、ハリーは決して慌てずに落ち着いており、必ずやってくる筈の絶好の機会(チャンス)を冷静にずぅっと待っている。 彼はその為だけに生きている。


  そんな、ある日の夜


 就寝中のハリーは、ある不思議で奇妙な夢を見る。


 そこは自分以外の全てが、暗闇で何もない場所である。 ハリーは周辺を見渡したが、やっぱり何もない。


「なんだ? ここは?」


 ピカァッ!!


 すると突如として、ハリーの目の前が(まばゆ)く光っていて、ハリーは思わず目を閉じてしまった。


 彼が次に目を開けると、自分の目の前に "黒い人影" がプカプカと浮いて漂っている。 暗闇の空間の中で "黒い人影" が見えるのも凄く不思議な話しだが、彼にはそう見えている。


「なんだ!? お前は!?」


 ハリーがその "黒い人影" に話しかけると、その "黒い人影" もハリーに話しかけてきた。


「私たちの名前は〈アクナディオス〉だよ。 ハリー・ダグラスよ」

「お前があの有名な〈アクナディオス〉なのか? 確か……エジプト神話に出てくる……ヤツなのか?」


「さすがに博識な男だな。 ふふふ、思い出すな。 まったく "オシリス" と "アイシス" には頭を悩まされたよ。」

「それでこのボクに一体何の用があるのか?」

「ああ、我々に協力すれば……ここから出してやる。 そして、キミの目的も叶うように、我々が力を貸そう。」

「………」

ハリー・ダグラスは少し沈黙している。


「……どうした? 急に黙ってしまって……?」

「ふっ……もし断ったら、一体どうするつもりなのか?」

「何故だ? 何故断る?」

「これまでボクは散々、色んな奴らから裏切られてきたのだ。 だからもう誰も信用できないのだ。」

「バカめ! それは違うぞ! キミは結局……人間から裏切られる運命なのだぞ! だからキミはこれからも人間共に裏切られなければ……いけない!」


「無茶苦茶な理屈だな。 つまりボクは一生何者かによって、裏切られ続けるのか?」

「ああ、その通りだ!」

「………」

「……考えているな? ならばこれでどうだ? キミが恨みを持ち、裏切った者を全て我々の方で殺害してやるから、それをキミが確認したあとで、我々に協力するという条件は……?」

「なにぃっ!? 何をバカなことをぉっ!? ふざけるなぁーーっ!!」

ハリー・ダグラスが突如として、激怒している。


「……な……に……?」

「復讐というモノは、自分の手でやらなければ意味がないのだ!! お前たちは……このボクの生きる目的さえも奪うつもりなのかぁっ!?」


「やれやれ、ならばどうすればよい? 我々はどうしてもキミの協力が必要なのだ!」

「………」

ハリー・ダグラスは再び沈黙している。


「他に条件があれば……なんでも聞こう。」

「言った筈だぞ! もう誰も信用できない……とな! だから他をあたれ!」

「そういう訳にはいかない……我々もここで引き下がる訳にはいかないのだ!」

「それならボクを洗脳でもして、操作すればいいだろう!」

「そういう訳にはいかない……我々はキミの意志や技術や実力が欲しいのだ! それに我々に洗脳する能力などないのだ!」


「……どうしてもボクが必要なのか……?」

「ああ、その通りだ!」

「………」

ハリー・ダグラスが無言で考え込む。


「そうだ、ならば我々の全権をキミにあげよう……好きにするがいい……これでどうだ?」

「……なんだと……そんなバカなことを……」

ハリー・ダグラスがこの発言に、凄く驚愕している。


「ふふふ、我々も必死なのでな……そのぐらいは当然だろう」

「では……少し……時間をくれ……考えさせてくれ……このボクに……」

「いいだろう、ならば一日だけ時間をやろう。 明日の夜……再び夢の中で会おう……」

「ああ、わかった」

「よく考えて返事してくれ」

「ああ、すまない」


 ピカァッ!!


 すると突如として、〈アクナディオス〉の身体が再び(まばゆ)く光り出し、その姿が消えてしまった。


 そのあとで、ハリー・ダグラスが目を覚ますと、もうすっかり朝になっていた。




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