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(とりあえずここから出よう)「とりあえず結婚しよう」

(……ここは…どこだ)

「どうしたの、くー?」



 先ほどまで、テレビという科学の力によって映像を映し出すという、便利な暇潰し用の道具に向けられていた私の視線は、今や灰色っぽい石の壁に向けられている。

 


 ……!?


 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ…

 唖然とする私(直井玖音なおいくおん1才.猫)。私を抱き上げたまま上目使いできょとんと私を見ている翔くん(直井翔桔なおいしょうき9才小学6年生)。な…何を言っているのかわからないと思うが私も何をされたのかがわからない。

 わかっているのは、なんか狭くて暗い部屋で翔くんに抱きつかれたまま固い何か(多分石)にソファーよろしく座っていると言う事か。なるほどまったくわからん。うん。もちつけ私。ヒッヒッフーだヒッヒッフー。



(…周りを見てごらんよ、翔くん)

「え?あれ?…うわぁ!」


 私の指示に素直に従ってぐるりと周りを見る翔くん(私と翔くんの間には種族などと言う壁は些細な物なので、意思の疎通などは朝飯前である。戯言だけど)は、「ぜんぜん気づかなかった」やら「狭い部屋で二人きり」などとテンションがうなぎ上りだった。今なら滝登り中の鯉にも勝てるかもしれない。

 でも、翔くんのテンションが上がるほど私を抱いてる手の締めつけも強くなっていくので、鯉に勝つより私の昇天の方が早く訪れると考え早々に手を離してもらう事にする。だがしかし、翔くんが離れたくないと泣き落としてくるため、妥協案として翔くんの肩に乗る事に落ち着いた。

 私はもう1才で人間で言えば20才。きちんとした成人もとい成猫なのだが、ほかの猫とくらべて一回りほど小柄である。仔猫と間違えられるレベルだ。まぁ、だからといって不便というわけでもないのだが。



(それにしても、本当にここはどこだろうね?)


 ソファー代わりの石に座ったままで、もう一度ぐるっと周りを見渡してみた。畳三畳分しかない部屋。前は石の壁。右も石の壁。後ろはソファー(石)と壁(石)。左はさあ、行けといわんばかりに石の廊下が続いている(左右選択である)。いくら考えてもよく分からないので、なんとなく隣にいる翔くんに振ってみる。




 そのときだ。




 いきなり…ズシン…ズシン…と、地鳴りのような低い重低音が響く。その音は、どうやらこちらに向かっているようだ。なんだ。なんなんだ。


 しばらくして、警戒している私の前に登場したのは、とても大きな2メートルはゆうに越えているであろう、地球ではまずお目にかかれないような、黄色い毛皮の熊だった。鉄仮面と(近所の飼い猫に)言われた私もまさかの出来事に唖然とする。

 よく見ればその毛皮にはまだ新鮮であろうあざやかな血液が付着していた。多分、数人(匹?)ほど殺って来たのだろう。普通では考えられない濃厚な血の臭いにむせ返った。私が普通を語るのもおかしな話だが。猫だし。


 黄色い熊はなぜか私たちがいる部屋を覗きもせず目の前を通り過ぎて行く。せっかく相手が気づいてないのだから、気づかれないに越した事はない。私は息を殺して黄色い熊の行方を見守っていた。翔くんは私のマネをして口に手をあてていた。あててるだけだけれど。





「……ぷはぁっ」


 地響きのような重低音が聞こえなくなったころ、私は止めていた酸素を取り入れ二酸化炭素を吐き出すという行為を再開させた。

 翔くんは先ほど熊さんが通った石の通路を、顔を輝かせてガン見している。こいつ、意外と図太い。



「ねーねーくーちゃん」

 通路を見ていた翔くんは、私が生命を維持するためにしないといけない行為を開始した事に気づいて話しかけてきた。そして、翔くんの次のセリフで私は固まる事になる。


「なんか、ゲームのダンジョンみたいだね!」


 思考停止。フリーズ。理解出来ないしたくない。だがしかし、時間は残酷だ。現実はもっと残酷だ。

ゆっくりと、秀くんの発した言葉を噛み締める。こいつは今なんと言った?ゲームのダンジョンと言った。確かにここは、翔くんが遊んでいたゲームのダンジョンみたいだ。石造りの壁といい、先ほどの黄色い熊さんといい、モンスターを倒していく典型的なRPGのようだ。だが、やはり理解出来ない。つまり翔くんの言っている事を確定すると、ここは異世界という事になってしまう。つまりだ。もともと私の中にある常識が叫ぶのだ。こんな事は起こるはずがないと。そんなわたしに気づいているのかいないのか、翔くんは言葉を紡いでいく。


「いきなりこんな所にいるって事は、ここ【異世界】なんだよね?」

(...たぶんね)


…こんなに簡単に子供って受け入れる事が出来るのか……軽くカルチャーショックだ。私1才だけど。


「つまりさ、ここじゃ日本のホーリツとかは使えないんだよね?」


そりゃそうだろう。異世界だし。異世界には異世界の法律があるだろうし。ないかもしれないけど。


「そっか、そうだよね………ッくーちゃん!!!」

(!えっ何!?)


どうした翔くんいきなりそんな声出して……あ…もしかして翔くん、寂しかったのかな…だって異世界だし、この世界でお互いの事を知ってるのはお互いだけだし、翔くんちょっとませてるけどまだ小6だし……いいよ、おいで…どんな言葉を放ってもいいかr「俺と結婚して下さいッッ!!!」そういえば、何で熊さんはこの部屋に入って来なかったのだろう?結界でも張ってあるのか…調べてみる必要がありそうだ。


 読んで頂きありがとうございます。

 多分きっと絶対的に不定期更新ですので次作も読んでいただけるとありがたいです。

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