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人ならざる者は友に感謝する

初投稿です。

拙い文章力ですが暇があったら読んでください。

 2013年2月19日、


 ひとつの隕石が地球に落ち、


 世界は大きな変革を迎えた。


 そして僕の日常は、


 世界の端で、


 誰も知らずに壊れた。









 僕こと八雲翔太はダルい全身を無視、もとい無理して正座したまま頭を働かせてみる。


 窓際のカーテンは日差しが差し込まないようその役目を果たし、ときおり吹く風は、ボロい畳の上の熱気を何処かへ運んで行く。


 秋が近づいているというのに、今日は一日中、嫌になるほど夏色の太陽は顔を出している。それなのにどうしてか、僕の服はびしょ濡れだ。別に水遊びをした訳でも、全力フルマラソンをした訳でもないのに……。


(まあ、運動はしたけど。それとは関係ないし)


 首に掛かっている十字のネックレスは、濡れたせいで余計に銀色具合を増している。


 本来この時間は、学校で先生の授業という名の雑談をBGMに、夢の中にいるはずなのに。机の上という常とは違うから寝難いはずが、何故かよく眠れるあの体勢で。


 今は何故か、正座を維持している僕の目の前で、訳ありで一緒に暮らしている翠光みどりひかりが苛立たしげに腕を組んでいる。翠は僕の幼馴染みで、かつ大親友だ。適当に伸びた髪を後ろで結んでいる髪型は、マゲとポニテの中間、と言ったところか。上下ともにジャージ姿の翠の右手の指は反対の二の腕をリズム良く叩いている。……どうでもいいが、この癖がある人は翠以外ではドラマとかでしか見たことがないのは、気のせいだろうか。


「……それで?」


 指の動きを止めると翠は溜め息と共に聞いてきた。


「それで……とは?」


「どうして、君は学校をバッくれてるの?」


 青筋を立てんばかりに顔が引きつっている。


 そりゃそうだ。ただ今僕と翠で二人暮らし中のこの家の懐は氷河期真っただ中なのである。そのことを考えると、一人でも多く働き手が必要なのに、翠は僕に高校に行くことを強く勧めたのだ。渋々了解した僕が、その学校を早引きしたとなれば、無理矢理行かせた側の翠が怒るのは理不尽だと言えるが、苛立つのを抑えろ、と言うのは些か無理があるというものだろう。


「いや、それは何と言うか深くて浅い事情がありまして……」


 しどろもどろな言い訳を、たとえ長い年月を過ごした仲とはいえ、誰も聞く気になる訳もなく、


「ぼ・く・は!こうやってちゃんと仕事をしていたのにっ」


 翠はキーボードデスクをバンバン叩く。そうとうイライラしているのか、力加減はいい加減だが、キーボードやディスプレイを叩かないで、あえてマウスとキーボードの間の微妙な位置を叩いていることから、翠の物を大切にする気持ちが、僅かに感じられる。


 そんなどうでもいいことに(現実逃避気味に)思いを馳せていると、


「無理矢理行かせた僕が言うのも何だけど、どうして君は学校をバッくれて、しかも水遊びなんかしてるのかな?」


「だ、だからそれはそうじゃ――」


「それに何より!」


 翠は問答無用とばかりに大声を出すと、僕の隣を指差した。


「その女の子は何なの?」


 目線を隣に移すと、10歳前後の少女が僕に寄りかかって寝ている。少女が着ているワンピースは、元の生地の色が分かる部分がほとんどないくらいに汚れている。さらに僕と同じように水を吸っているものだから、グショリとして重そうだ。


 少女が身につけていたマント(こちらは防水加工らしく、全く濡れてない)は綺麗にたたんで、座布団代わりにして座っている。


「まさか誘拐したなんて言うはずないよね」


「…………」


「事情はちゃんと説明してくれるんだよね?」


 聞きたいことを口にしたからか、大分翠の態度は大分落ち着いてきた。指で二の腕を叩く癖は続いているし、未だしかめっ面だが、怒りや苛立ちといった感情より、不安や心配といった要素が多分に含まれているように思える。


 そんな翠の姿を見て、僕の頭は少しばかり冷やされた。


 どうも昔っから僕は人一倍緊張しやすいようだ。


 相手が問いつめたり、勢いよく話してくると、それだけで気が動転してしどろもどろになったり、どもったり、支離滅裂になってしてしまう。


 だけど、相手が僕の話を聞く姿勢になってくれれば、僕も落ち着くことができるし、人並みに話をすることができる。


 僕は自分を落ち着かせる為に静かに息を吐き出すと、


「ちゃんと説明するよ」


 無意識にだろうが、翠の眉が少しばかり緩む。


「いつもみたいにグダグダになるかもしれないし、今回のことは僕も把握しきれてない部分が多すぎるから、いつも以上に支離滅裂になるかもしれないけど――」


「そんなことは分かってるよ。何年の付き合いだと思ってんだ?君の言おうとしてることくらい、ほとんど分かるよ」


「……さすが僕の親友だ」


 言葉に自信がない僕をこういうふうにフォローしてくれる翠光が、僕は大好きだ。


「ふっ……おう」


 翠は鼻で笑って、僕ははにかみながら、拳をぶつけた。特に意味はないけど、こういうのは友情を確かめたときに雰囲気でやるものだと僕は思う。


「それで?」


「あー、そ、その前に一ついい?」


「?」


 話の先を促そうとするのを止める僕を、不審そうに見つめる翠に、苦笑いで尋ねる。


「もう正座解いてもいいかな?」


 もう足をどんな形にしても、じりじりと痛んでいて辛い。



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