僕達だけなのか男子は!!
僕のクラスは1年7組だった。
噂に聞くと学年上位31名までの人しか組まれないとか。
なにそれ?エリートってこと?
何故そんなクラスに僕なんかが選ばれたのかは分からないけど、この学校では僕は頭がいい方らしい。
――ということは......りくとは同じクラスなったわけで、ひとまずは男一人にならずに安心した。
「なあ、瑞樹。ここまで他の教室をチラ見しながら来たけど......これ本当に俺たちだけじゃないのか?男なの」
「まぁ~、それはあるかもだけど、まだ僕は希望は捨てていないよ」
ここまで見てきた教室の中に男子はいなかった。
だがまだ終わりじゃない。最後のクラス、僕たちのクラス1年7組にいるかもしれない。
そんな希望を胸についに1年7組の教室に辿り着いた。
「よし、瑞樹深呼吸するぞ」
「そうだな」
お互いに教室の扉の前で一呼吸、女子が大勢いる中に僕たちが入るのだ。勇気を出すための深呼吸何のだ。
「よし、開けるぞ」
「分かった」
りくが扉をゆっくり、静かに開ける。それに合わせ中の様子が徐々に姿を現す。
これが僕たちが1年間過ごすクラス、これから始まる青春の数々を過ごすクラスメイト。
その光景は僕たちの青春をどう過ごすかを決める!!
さぁ頼む。男子よ!一人でも多くいてください!!
運命は如何に!!
結果は............僕達の様相を裏切ることなく、辺り一面、女子で溢れていた。
まさか、一人も男がいないとは......なぜここは今年から共学のくせに、男をもう少し受け入れないんだ!
学力か?学力なのか!?
そんなに、難しいの?この学校。
「なぁ瑞樹、嘘だよな?男がいないように見えるんだが......」
「僕にも男子制服を着た男は見えないな」
「それ、多様性だからそんなこと言っているのか?」
「まぁ、そんなところ」
「実際にはどう思っている」
「ほぼ百パーセントない男はいないだろうな」
「そうだよな......」
僕たち二人は同タイミングで溜息を吐いた。
それはそうだろう、僕たちの希望は儚く砕け散ったのだから
「まぁ、とりあえず俺たちの席に座るか......」
「そう......だな」
僕の席は廊下側の席1列目の最後尾だ。
あんまり目立たない端っこの席で助かった、と同時に隣はりくだった。
こういう運なのか学校側の配慮なのか分からないが、お互いに安堵したことだろう。
だがそんなに安堵している時間はない。
周りは女子。すなわち、視線は僕たち男を見るわけで......
その様子は不審者か、変態かを見るような視線だった。
当然僕達はその視線を観ないように机に俯くわけであって.......
「あれ?男子二人はりく達?」
そんな空気をぶち壊すように話しかける声に顔を上げて確認すると、やはり異性の幼馴染――天城那結が僕達二人の前に立っていた。
天城那結—―りくと同じで保育園からの幼馴染。
運動や勉学はそんなに得意ではないが音楽に関して飛び抜けて上手い。
特に、バンドを組むのが好きでよくライブのチケットをくれたりする。
なんかベースをやっているとか、なんとか言っていたような気がするが僕にはどうでもいい話だ。
仲はりくの方が良い――というかりくのことが好きと中学の時に僕に相談してきたのだからそう思っているだけなのだが......非常に迷惑な奴だ。
せっかく、幼馴染同士の恋愛をサポートしようと他の女子に相談して情報を得ようとしたら、思いっきり背中をけられたりして大変な目に遭ったり、去年のクリスマスプレゼントも何故か、りくよりも僕の方が高い値段を張る物をくれるという謎現象が起きた。
これは事故だと思ったが、本人に聞くと「相談に乗ってくれたから」とのことらしい。
別に僕の分はいらないのに。
本当にりくと恋愛がしたいのかが分からん。
要するに何が言いたいのかというと何の意図があって僕に絡んでくるのか分からないから苦手だということだ。好感度上げる方を間違えている。絶対!!
ちなみに僕たちが言う「あいつ」ではない。あいつはもっとよく分からないやつだ。
「久しぶりだな那結!!」
「久しぶりじゃなくない?二日前に一緒に映画見たばかりじゃん!!りく!」
「そういえば......そうかも?」
いつの間にか那結はりくの好感度上げをしていたらしい。
やはり女子だというのか、いつの間に......
「瑞樹は久しぶり......なに?その顔、私に何かついてる?」
「いや、別に何もついてないけど?本当に那結はりくのことが......」
好きなんだなと改めて思った......と言おうとしたところを那結の手が僕の口を思いっきり塞いだ。
「あんた......言わないって......約束したわよね?」
頭に鬼のような角を生やし始めたのですが,,,,,,?
これ......もしかして地雷踏んだ?やばい奴?
「だ......じ......クァに.......ユゥ......マゥ.......た......モゥ.......イィ……ません」
「分かればよろしい!!」
ようやく口を解放してくれた。
窒息死するかと思った。
中学まではこんな事しなかったのに高校に上がると力も行動も強くなるのか......少し女子のコミュニケーションの勉強になった。
「りく......ちょっと......廊下で話せる?できれば二人で」
「うん?.......あー…分かった」
りく?なんでこっちを見るんだ?
お前だぞ、お前。
僕のことなんか今はどうだっていいだろう?でもこいつ意外と鈍感なとこあるから、なんで瑞樹はダメなんだ?とか思ってそうだな。
「瑞樹は絶対、絶対に、ぜったっっっっっっっっっいにこないでよ!!」
どこに心配しているのか、僕のことより自分のことに集中すればいいのに。
高校入学直後に好きな人にもうアタック!!
これが恋愛の醍醐味だというのに(女子限定)
ちなみに僕はやった事ない。見る専門なのだ。
「分かった、分かったから。僕はここで入学式が始まるまで寝ておくから」
そういうと安心したのか二人は共に廊下に出て姿を消した。
はぁー......ようやく休憩ができる。
那結と絡むと気を使ったり、何か地雷を踏んで暴力を振るうから意外と疲れるんだよな。それも、これもりくが早く那結の気持ちに気づかないから。
一人になったからだろうか、周りの視線はまた僕一直線に向いていた。
これは慣れないとこれから大変そうだ。
でも今日で慣れろと言われるときついため僕は机の上でうつ伏せになって寝始める。
まだ入学式まで30分はある。
それまでの仮眠だ。学校も久しぶりなこともあるし、周りに気を遣うことなど沢山ある。その分の体力を回復するためだ。
意識はゆっくり、ゆっくりと暗闇落ちて――
――その時勢いよく近くの扉が勢いよく開いた。
いくら何でも帰ってくるの早すぎだろ!!
反射的に扉の方を見ると……その姿は幼馴染二人の姿ではなく、二人の女子生徒—―メイド服を着た凛とした女子と綺麗な黄色のドレスを身に纏った女子の姿だった。
あ、目が合った。
え?何かすごい蔑むような眼で見てくるんですけど?
黄色のドレスに見惚れていたとか、見慣れないメイド服とかどうでもよくはないがどうでもいい。
今一番気になっていることが頭から離れない。
あれ?この学校服装自由だっけ?




