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66.カッサンドラは語る その3

ウィリアムにも生きているのを伝えなかったのは何故かって?


……そうね。私もリヴァイも彼には心から感謝しているわ。本当はウィルにも私たちが生きていることを伝えたかった。


でも、アーサーはウィルのことをずっと警戒していた。少しでもおかしな動きがあると絶対に筒抜けになってしまうと思ったの。


それにね、ウィルはフランクのことを嫌っていて……信用していなかった。やっぱり私の両親が亡くなったのは彼のせいだっていう考えがどこかにあったのかもしれないけど……。


本当に……申し訳ないと思ってる。


私とリヴァイはその時その時で最善と思われる道を選んできたけど、きっと沢山の間違いもあった。特にあなたのことは……取り返しがつかないと思うけど、本当にごめんなさい。


ああ……あなたはサイラスやアスター城の人たちに会えて幸せだった?


良かった。少なくとも一つくらいは正しいことができたのかしら?


十七歳になれば結婚できる。テイラー男爵家から解放して、あなたをアスター城に住まわせてあげてって、ウィルへの手紙に書いたのよ。


私はずっとあの城での生活に憧れていたから。


そして、あなたの存在がアーサーやイヴから忘れ去られた頃に、自由になれるんじゃないかって期待していたの。そうしたら、今度こそ安心して家族三人で暮らすことができるって。


リヴァイはね、みじめな生活をするあなたを救えないって、ずっと自分を責めていたみたい。部屋に閉じこもって……。


一生あなたに合わせる顔がないって何度も言っていたわ。


……どう? リヴァイ、あなたにとってはトマスだけど……彼のこと許せない?


うん、無理に許す必要ないわ。私も同罪だし……。


え?……泥棒? あなたが住んでいた離れに何回も? 


……それは泥棒じゃなくてあなたの命を狙っていたんだと思う。だって、離れなんて盗まれるようなもの何も置いていなかったでしょう?


ああ、離れに侵入者があるといつもトマスが見つけてくれていたの?


彼は、夜中にずっと離れを見張っていたんだと思う。あなたに危険が迫らないように。


あなたのことが心配で彼なりに見守っていたのよ。


そうね。今度ちゃんと話をする時間を作りましょう。


フランク、イアン、リヴァイはあなたに合わせる顔がないって……ただ、ひたすら申し訳なかったって謝っていたわ。


婚姻の持参金? 金貨百枚? 


ああ、それは純粋にフランクがあなたのためにお祝いしたかったからじゃないかしら。表立って祝うことができなかったから。


そう言ってくれて……ありがとう。


ええ、あなたがアスター伯爵家に嫁いでから、にわかに王宮にあなたの噂が流れるようになったの。領民に大人気の伯爵夫人だって。


私はすぐに心配になった。


イヴはとにかく嫉妬深いの。自分以外の人間が褒められたり、ちやほやされたりするのが耐えられないのね。それに私のことを心底憎んでいたから。


あなたの身に何かあるんじゃないかと不安でヒューに探ってもらったら、案の定、イヴが刺客を雇ったって聞いてね。


慌てて、リヴァイがアスター領に向かったの。ちょうど宿場町でサイラスを見つけてすぐに城に戻るように忠告したらしいけど……。


ええ、あなたが無事で本当に良かったわ。


アーサーとイヴは国にとってはそんなに悪い国王夫妻ではなかったと思う。


だから、私たちも王位から逃げ続けていられたんだけど。


でも、あなたの人生を滅茶苦茶にしたり、戦争を始めようとしたりするんだったら、話は別よ。


リヴァイも私も王位を奪う覚悟を決めたの。


サイラスとあなたは心から愛し合っているようだったのに無理矢理引き裂かれて……。


ロバートはいい子だけれど、やっぱり好きな人と結婚できるのが一番よね。


ヒューとロバートはとても仲が良いの。ロバートが密かにヒューに連絡してきたのよ。


あなたをどうやって逃がしたらいいのか算段を考えていたわ。


ヒューだけでなく、フランクも全面的に協力してくれることになった。


サイラスはあなたが攫われて半狂乱でね。


しかも、ロバートと結婚することになって……。どうか助けて欲しいとヒューに泣きついてきたわ。


ええ、あなたは本当に愛されているのね。


大丈夫。彼の気持ちは今でも変わらないわ。王宮の後片付けで忙しいけど、ひと段落ついたらここに来るはずよ。


ここはどこかって? ヒューの屋敷よ。大聖堂から一番近かったから、とりあえずここに運んだの。


そうなのよ。サイラスが結婚に異議を申し立てて、そのどさくさに紛れてイヴのことを告発することになっていたの。


王太子の結婚式だったら、国内の貴族は全員、他国の賓客や要人たちも出席するわ。王妃の化けの皮を剥ぐにはもってこいの機会じゃない?

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