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第3話

「改めて自己紹介を。私はカレルと申します。今日より貴方の警護につきます」


「ユスティナ・レヴァントフスキです。宜しくどうぞ。監視役さん」


 姫様を部屋まで送り届けた後、カレルは頭を下げながら自己紹介をしていた。


 目の前には不機嫌そうな表情を浮かべる姫様、ユスティナがいて金銀の豪華な調度品に囲まれながら椅子に座り紅茶を飲んでいた。


 ──近くで見ても綺麗なお嬢さんだな。


 ユスティナの見た目はというととても整った顔立ちをしている。


 華奢な身体に、腰まで届く銀灰色の髪、緑柱石のごとき瞳、カレルと比べて背も頭一個分は小さく、人形がしゃべっていると言われても納得してしまいそうな見た目だ。


「ユスティナ姫! 何故あのようなことをなされたのかお聞かせ願いたい! もう少しで大変なことになる所だったのですぞ!」


「うるさいわよルドウィク。少し黙りなさいな。ところで貴方……カレルだったかしら? 貴方はここに来る前、一体何をしていたの?」


 カレルはこの時、ユスティナに対してあまりいい印象はなかった。


 わがままで傲慢な姫様、それが最初にカレルが抱いた印象だ。


「私は傭兵をしておりました。多少は腕が立ちます。きっと姫様のこともお守りできるでしょう」


「……私、血なまぐさい人は嫌いなの」


 助けてくれた恩人に対して随分な言いぐさである。


「血なまぐさいですか、まぁ確かに」


 苦笑いを浮かべるカレル。


「ですが、その血なまぐさい人間が貴方をお守りしているのですよ」


「剣を捨てて、話し合いで解決するという道だってあるでしょう? その手段を選ばない貴方のような人間が私は嫌いです」


 反論するカレルにユスティナは椅子から立ち上がりさらに捲し立ててきた。


 ──世間知らず、か。


 王はユスティナを恐らく大事に大事に育てられてきたのだろう。


 それこそ絶対安心の城の中で蝶よ花よと愛でながら正しき道を教えて。


 流血や暴力とは無縁のこの場所で。


 だからこんな考えに行きつくのだ。


 今まではそれでも良かったのかもしれない、だが今はそんな時代じゃない。


「カレル。はっきり言って貴方は要らないわ。明日にでもお父様にい──」


「失礼!」


 言葉を遮り、カレルはユスティナの腕を力強く掴んで抱き寄せる。


 何をしている、そうルドウィクが怒りながら叫ぼうとしたが、そんなことは次の瞬間にはどうでもよくなる。


「……なかなかいい狙いだな」


 窓ガラスの割れる音が部屋の中に響く。


 それとほぼ同時、カレルの肩から血が伝い落ちてきた。


「え?」


 下を見れば呆けた顔のユスティナ、これを見たカレルはざまぁみろと心の中で思った。


 彼女が呆けている理由は何か?


 カレルの左肩に突き刺さった矢が原因だ。


「近衛兵!! 城壁の上だ!! 逃がすな!」


 ルドウィクが窓から中庭で待機している近衛兵に向かってそう叫ぶ。


 城壁の上で弓を携え走り回っている男を指さして。


「暗殺者か。改革派の手の者かな?」


「な、なにをしているのですか!?」


「ああ、これは失礼」


 呑気に走り去る暗殺者を眺めていると抱きしめられたままのユスティナが叫んだ。


「ルドウィク! お医者様を呼んできて!」


 カレルの肩に突き刺さった矢を見ながら心配しているようだ。


 ──なんだ。案外可愛らしい所もあるじゃないか。


 カレルはあわてふためくユスティナを見ながら微笑んでいた。

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