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第20話

 徐々に日が暮れ始めた時、城に対する攻撃はより一層激しいものとなった。


 城門付近には大量の死人が積み重なり、周囲は銃や大砲を撃った後の白煙によって視界が悪くなり硝煙の臭いに包まれる。


 城壁にも大砲の弾によって陥没し、元の白亜の城は戦場の真っただ中であった。


「重症の兵士は後方に下がれ! 軽症の奴等は俺と一緒に時間を稼ぐんだ!」


 城壁の上では銃や弩ではなく、酒精の強い酒が入った瓶に布を突っ込み、その布に点火して作る急造の手投げ弾を使って攻撃をしていた。


 これは着弾と同時に中の酒に引火してある程度の範囲に火をまき散らすというものだ。


「仕方ないこととはいえもったいないな」


「はっはっは! 終わったら飲めますよ! 今は気にせず投げ、逆賊共に火と一緒に飲ませてやるのです!」


 ちょっとだけと王は酒に口をつけようとしたが、ルドウィクは無情に王の手から酒瓶を奪い取り、点火して投げてしまった。


「ルドウィク殿! 西が!」


 気を取り直して攻撃を再開する王とルドウィクのもとに、近衛兵の1人が慌てた様子で現れた。


「破られたか! 援軍急げ!」


「違います! 数がかなり減っています!」


 ルドウィクは最初、何を言っているのか分からなかった。


 数が減っている?


 どこかに集中する為に兵を割いたのか?


 ルドウィクは一瞬そう考え周囲を見たが、特にどこかの攻撃が激しくなったような印象はない。


「……一体なぜ……ん?」


 少しばかり思案するルドウィク。


 そんな彼の鼻に、爽やかな香りが抜けていく。


「ああ……なるほど。お前か」


 口もとを綻ばせるルドウィク。


 彼の吸った香り……それは戦場で敵に死を運ぶベルガモットの香りだ。


「おいルドウィク! 誰かは知らんが見てみろ!」


「やってくれる、だがもう少し早く来い」


 王とルドウィクの視線の先にいる者、それは……


 栗色の髪を靡かせながら、両手に持った山刀を振るうカレルの姿だった。


「王様! ルドウィク殿! 遅くなり申し訳ない!」


 カレルの戦いぶりに近衛兵たちが歓声を上げる。


 彼が山刀を振るうたびに鮮血がまき散らされ、悲鳴が響く。


 気が付けば城門付近にいた改革派の兵士達は城壁の上にいる近衛兵の数よりも少なくなっていた。


「見ろ退いていくぞ! 俺達の勝ちだ!」


 近衛兵達がマスケット銃を掲げながら歓声を上げる中、カレルは叫ぶ。


「ユスティナ姫はご無事ですか!?」



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