第14話
星を眺めながら、カレルと王は酒を酌み交わし、話をする。
「ユスティナのこと、そなたはどう見る?」
「そうですな……少しお転婆な所がありますが根は素直である、と」
だろう?と王は笑った。
「あれの母親は淑やかで、素直で……よい母親であった。あのお転婆さは一体だれに似たのやら」
──アンタだとおもうが?
屋根の上で思い出話をしながら、王は夜風に髪を揺らしながら目を細めていた。
「……そなたには私がひどい王に見えるか?」
「いえ……」
面倒臭い所も大分ユスティナと似ている。
「悪いことをしているとは思っているんだ。城の中にこもりっきりで、私も構ってはやれん。色々なものを見せてやりたいが、今やうかつに外にも出られぬ」
「王となればその判断も仕方のないことかと」
「王ならばな。だが私は、父親としてはうまく振る舞えぬ。まだ母親が生きていたなら、そこもうまくやれたのだろうが……」
先程まで耳が痛くなるほど怒鳴っていた人物と同じとは思えないほど、王の声は弱々しかった。
王なりに、娘であるユスティナのことは考えていたのだろう。
だが不器用で、うまくそれを伝えることができなかったのだ。
「……カレル」
「はい」
少しの間悩んだあと、王は口を開く。
「少しずつでよい。あれに外のことについて教えてやってくれ。教師は世の中の事など伝えられん」
「承知致しました」
「ああ、くれぐれも私がこんなことを言ったなどということは伏せておくように。それと過度に接触しようものなら打ち首にしてやるから覚悟しておけ」
「き、肝に命じておきます」
酒瓶を持ったままの王は満足そうに頷くとカレルに瓶を渡した。
中身はズブロッカ。
甘く爽やかな香りがとても良い。
「さて、私は腹の内を晒した。今度はそなたの番だ」
「といいますと?」
飲んでいたズブロッカの瓶から口を話すカレル。
「そなたの目標……いや夢はなんだ? 私はそれで相手をはかる」
瞳を輝かせながら、王はそう言ってきた。
ユスティナの好奇心旺盛な所も、この王に似たのだろう。
「目標、ですか……そうですな。強いていうのなら……名を刻むこと。ですね」
「名を刻む?」
「王様、貴方であればどうあろうとも後の世に名前は残る。でも私はそうではありません」
カレルの言葉に、王は怪訝そうな顔をしていた。
「農民の出である私は、そのまま生きるだけでは何も残せない。いずれは存在自体が忘れられ、消えてしまう。だから私は名を残すために傭兵となりました。最強の傭兵として、戦場の王として、自分の名を後の世に刻み付ける為に」
「ほう……」
カレルはてっきり笑われるかと思っていたが、目の前の王は感心したような表情をしていた。
「よい夢ではないか。目指すがいい。そなたの行く末を見届けてやろう」
「笑われるかと思いましたよ」
人の夢を笑う奴があるか、王はそういいながら笑っていた。
「さて、そろそろ戻るか。ああそうだ。そなたの夢だが……ひょっとしたら叶う機会がくるかもしれんぞ」
「と言いますと?」
「改革派との戦争が本格化した」