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第9話

『我々庶民は今までよく働いてきた。少ない賃金で高い利益を出し、荒れた土地を耕してこれから産まれてくる子らの為に常に発展し続けた。だが貴族や王族、教皇はそれに胡座をかいて我々をみようともしない。改革が必要だ』


 不満の原因は特権階級にある。


 そう説いた彼等は武器を手に立ち上がったのだ。


            クラムスト書房『立てよ国民』より抜粋






 カレルが城へと戻って3日後の夜のことだった。


 改革派の戦士達は彼等を支援する貴族達から武器を供与され仲間が捕らえられている監獄、グラ監獄へと攻撃を開始した。


「クソが! うようよ居るぞ!」


「弾が足りねぇ! アンジェイ、弾持ってこい!」


 監獄に立て籠りながら窓から発砲する看守達。


 平地に立っている石造りの監獄はおよそ200名程度の看守が常駐している。


 マスケット銃をはじめ、大砲、弩も配備され火薬類も十分にあった。


 だが相手が悪すぎた。


 1人2人ならいざ知らず、押し寄せた改革派の戦士達は看守達の5倍以上の兵力を持ち、中には名うての傭兵部隊も混じっていた。


 看守達は押し寄せる改革派の戦士達によって完全に退路を絶たれ、数を減らしながら徐々に追い詰められていく。


「やむをえん! 火薬と武器を保管庫に持っていけ!」


「何をするつもりですか!?」


 この時、看守達の指揮をしていたのは典獄であるアレクサンデル。


 彼は部下達に命じて火薬類を保管庫へと持っていった。


 そして……


「諸君は今より任をとく! 全員必ず生き延び王にこの事を知らせるんだ!」


 アレクサンデルは改革派に武器を渡すまいと松明で火薬に火をかけ突入してきた戦士達を道連れに自爆を決行。


 歓喜の雄叫びを上げる改革派の頭上に血と肉片の雨が降り注いだ。




 


 王にグラ監獄の報告が入ったのはそれから2日後のことだった。


「囚人達は脱走、看守達はほぼ全滅、典獄のアレクサンデル様は改革派の一部を道連れに自爆しました……」


 執務室で絨毯に涙の染みを作りながら語るのは生き残った看守。


 そしてその報告を聞いた王は目を見開き言葉を失っていた。


「もう小規模の武力行使だけでは対応は不可能です。王よ、どうか軍を動かしてください。どうかッ! 私の仲間は全員死にました。仇を討ってやりたいのです!」


 当初王は改革派に対しての武力の行使は必要最低限にとどめていた。


 それは改革派といえども国民であり、考え方が少々違うだけだからという考え方だったせいだが……王はこの辺を大きく見誤っていた。


 大規模な攻撃が今の今まで行われていなかったのも要因の一つではあったが。


「……時間をくれ」


「王よ! お待ちください! お願い申し上げます!」


 執務室を後にする王に、看守は縋った。


 決断が遅れれば犠牲者はさらに増えることになるだろう。


 国民の安全も脅かされることになる。


 そして時間の猶予は殆どない。


 

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