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北風系ヤンデレと太陽系ヤンデレ  作者: 赤茄子橄
第3章 それぞれの動き
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第30話 北風系ヤンデレと重い想い1

「なぁくん............。なぁくん......。どこに行ったの......。早く出てきて......。もうなぁくん不足で生きていけないよぉ......。見つけたときのお仕置きも減らしてあげるから......。だから出てきてよぉ......」


私達の愛の巣からなぁくんが居なくなってしばらく経った。

なのに、彼は全然見つからない。


すぐに見つけられるとタカを括っていた私の目算は甘かったらしい。


きっとなぁくんはこのときのために何か計画してたんだ。

彼には携帯端末も渡してなかったし、お家とか学校での検索履歴は全部チェックしてたのに。


彼にプライベートの時間なんてあげてなかったから、紙に書いたりするようなこともできなかったはず......。


まさか頭の中だけで計画してたの......?

だめだよ、それじゃあまるでずっと彩咲のこと好きじゃなくて逃げたかったみたいじゃない。


おかしいよ。

私達、昔から愛し合ってたはずだよね......?



*****



私、織女彩咲(おりめささ)と、なぁくんが出会ったのは中学2年生の時。


彩咲たちの中学校は普通の公立中学校で、地元の子達ばっかりが集まってくるようなところだったけど、小学校は別々だった。

それはうちの中学が、地域にある2つの小学校の生徒を1つの中学に集めるような校区区分になっていて、彩咲となぁくんはそれぞれ別の小学校の校区に住んでいたから。


しかも1年生のときはクラスも違ってて知り合うことはなかった。

それが2年生になって、同じクラスになったことで彩咲たちは運命の出会いを果たした。


ひと目見たときからかっこいい子だなとは思ってた。


始まったばかりのクラスでもみんなと仲良さそうに話すなぁくんは、輪の中心で楽しそうにしていた。


さっきも言ったとおり、中学校の同級生は半分は小学校のときからの同級生だから不思議なことじゃないんだけど、それにしてもなぁくんはクラス分けの初日からクラスの中心としてひときわ輝いて見えた。


みんなと楽しそうに話してたりするのはもちろん、あんまり明るくなくてクラスに馴染めてなさそうな、でも会話に入って行きたそうにしてるような子たちにさりげなく近づいて、迷惑にならない程度に輪に誘ったり。


クラスが過剰に浮足立ってたりしたら、角が立たないようにみんなを制したり。


すっごくたくさん話すわけじゃないんだけど、なぜかなぁくんの周りには人が集まってて、彼が会話に入ると雰囲気が柔らかくなる。


なぁくんは昔からそういう優しくて柔らかい雰囲気を持った、細やかな気配りのできる男の子だった。


彩咲も友だちが少ないとか暗かったとかってわけじゃなかったけど、初対面でされた爽やかな挨拶は本当にまぶしかったのを覚えてる。



それからしばらくただのクラスメイトとして過ごしてる間も、なぁくんはそのポテンシャルを遺憾なく発揮してた。


学年が上がったばかりのときにあった実力テストでは当たり前のようにクラスで、というか学年で一番だったし、陸上競技部に所属して1年生のうちから活躍してたという話も聞こえてきた。


聞いたところによると、なぁくんの当時の専門は四種競技っていう種目だったらしい。

110mハードルと砲丸投げ、走り高跳び、400m走をそれぞれ取り組んで、記録に応じた点数がつくから、その点数で競う競技だって言ってた。


いろんな競技がバランスよく出来ないといけないから、その分高い運動神経やたくさんの練習が要求されるんだとか。


一年生のときには全中にも進んだくらいには強かったんだとか。

本人は、競技者が少ないからたまたまラッキーで行けただけだよ、なんて苦笑いしながら謙遜してたけど、ほかの陸上部の子達もすごいって褒めてたから、やっぱりすごいんだと思う。


背も高めで、体育とかで見える身体は筋肉質で引き締まっていて、噂に違わぬ努力の跡が見て取れた。


でもゴリマッチョって感じじゃなくスラッとしてて、爽やかできりっとした目がかっこよくて、優しい雰囲気をまとっていて、困ってる人が居たら誰にでも手を差し伸べる。


性格もすこぶる良い人だった。

誰も彼が他人の悪口も言うのを聞いたことはないし、常に誠実に対応してくれる聖人のような中学生。


ただ、ふと1人でいるときに見かけると、たまに寂しそうな顔をしていることもあって。

本人は気づかれていないと思っていたようだけど、実際はみんな知っていた。


彼が自分からは弱音を吐かない人だったから、誰もそのことには触れなかったけど。


なぁくんはもともと、早くに両親をなくして頼る親戚もいなくて児童養護施設で育ってきたって経緯がある。

中学に上がってからも施設で過ごしていて、それが彼の周囲への優しさと、ときおり見せるアンニュイな雰囲気の原点なんだろう、ってことにも、およそみんなが気づいてた。


それがたった数週間でも見えてくる彼の人物像だった。



当然のようにクラスの女の子たちは色めき立って、他のクラスの子たちや先輩後輩もときどきクラスまでなぁくんに会いに来たりして、それなりに告白もされてたみたい。


彩咲も数人に告白されたりもしたけど、数はなぁくんには遠く及ばないくらい。



だけど、なぁくんは全部断ってた。

噂で聞く断り文句は、「今は自分のことでいっぱいいっぱいでお付き合いする余裕がない」ということらしかった。


なぁくんはあの頃から要領が良かったけど、施設のお手伝いとかもあったんだろうな。

授業を受けて部活動をして、お手伝いをして、文字通り他のことに割ける時間がなかったのは本当なんだと思う。




そんな彼のことは、彩咲も当時から時々目で追うくらいには興味があったけど、そのころはまだ恋愛感情があったわけじゃなかった。


それが変わったのは、中学2年生に上がってから2ヶ月が経とうとしてるころ。


彩咲が通り魔に襲われそうになっていたところをなぁくんがかばってくれて、彼が左目を失明してしまったときからだった。

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