未来の裏切り者、出会う(後)
どももで~す
「貴方は…」
「お前は…」
朝ご飯を食べようと広間に行くとそこには筋骨隆々で目付きが死ぬほど悪い大男が立っていた。
「なんで貴方がここに?」
「そういうお前こそなんでここに?」
「ん?二人とも知り合いか?」
あっ兄上もいたんだ…身長差ありすぎて陰に隠れてしまっていたらしい。
「まぁ…昨日少し」
「ああ…少しな」
あれ?もしかしてこの人…
「貴方が王越殿ですか?」
「ああそうだが…君が麋芳君かい?」
「はい、そうです」
「そうか…昨日はすまなかったな…その、怖かっただろう…」
「いえ…私も昨日は失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした」
「いやいや」
「なんかよくわからないけど解決したのか?」
「はい」
「ああ」
「ならば良かった!さぁ朝飯にしよう!」
中国の朝ごはんはやっぱりお粥。我が家のお粥は手羽元と白菜がとろとろになるまで煮込んであるやつ。超絶品!!
ってそんなことはどうでもいい
「王越殿と兄上はどこで出会われたのですか?」
「去年の夏、村の者達と洛陽(この国の首都)に行ったことがあっただろう」
あ~そんなこともあったな~
確か洛陽観光に兄上が村の顔役引き連れて行ったやつ。因みに僕はお留守番でした。
「洛陽についてすぐにならず者に絡まれた」
「マジすか…」
「まぁ田舎者丸出しだったから仕方ないさ」
「そんなもんですか」
「そんなもんだ…話を戻すぞ」
かい摘まんで話すと、ならず者に絡まれて困っていた兄上達を王越殿が助けてくれたらしい。
何を隠そうこの王越殿、見た目はヤクザだけどれっきとした皇帝陛下をお守りする近衛兵の一員なのだ。
そんなこんなで色々あって兄上と王越殿は意気投合。
兄上が洛陽から戻ってからも文通を続けていたというわけ。
今回家に王越殿が来たのは、ならず者から助けてもらったお礼をしたいので何時でも遊びに来てほしいと兄上が言ったかららしい。
「いや~その節は本当に助かりました。王越殿が助けてくださらなかったらどうなっていたことか…」
「いやいや、困った時はお互い様。こんなお招きまでしていただいて…」
「いやいや、これぐらいのことをしなければ我々麋家のなが廃ります!なぁ麋芳」
「兄上の申す通りです。是非ゆっくりしていってくださいね」
「これは…かたじけない」
あっ!そうだ!!せっかくだし槍の稽古つけてもらおうかな?どうせ勝てないだろうけどやってみよう!
「王越殿ぜひ一手ご教授願えませんか?」
「ん?」
「近衛兵は武芸の腕に優れた方しかなれないと常々聞いております。是非とも一手お願いします!」
「ええ、構いませんよ」
というわけで裏庭へ移動~
「どうぞ」
稽古用の槍を王越殿に手渡す。
「あいや、結構。拙者はこれをつかい申す」
へ?これって…ただの木の枝だよね…
僕ごとき枝で十分ってこと?
イラァ( ;`Д´)
「王越殿、私のことを馬鹿にされているのですか?」
「いやいや、そういうわけではありませんよ」
あっそ!絶対馬鹿にしてるよね!!
叩きのめして謝らせてやる!
「では始めますか」
審判は兄上に頼んだ。
「始め!!」
槍を構える。
王越殿が一歩後ろに下がる。僕は一歩前に出る。
槍をグルリと回す。次の瞬間…
「グフッ」
鳩尾に枝がめり込んでいた。
「勝負あった!」
えっ?えっ?
「さすがは王越殿ですな。麋芳、撃剣の名手として名高い王越殿の技はどうであったか?」
え?撃剣?
「ハハ!驚きのあまり声もでないか!」
(……)
「麋竺殿そこら辺で…麋芳殿すごい顔してますから…」
(……)
「あの、麋芳殿?」
「……師匠」
「へ?」
「師匠!僕に撃剣をおしえてください!!」
「はい?」
「お願いします!!」
土下座をする
「…顔を上げてください」
「お応えいただくまで上げません」
「…麋芳殿、貴方は何故武芸を学びたいのですか?」
それは…妹を守るため、処刑されないため…歴史を変えるため。
いや、何よりも
「強くなりたいからです」
「強くなってどうする?」
師匠の口調がかわった
気にくわなかったのだろうか…いや、それでも!
「強くなりたい、それだけでは駄目でしょうか?」
師匠が考え込む気配がする。
どれほど時間が経っただろうか
「どれだけ強くなろうと、この世の中にはさらに強い人間がいる。この言葉忘れないか?」
「…はい」
「修行の道は険しいぞ麋芳。私と出会わなかった方がいいと思うかもしれない」
「教えてくださるのですか?」
思わず顔を上げる
「耐えられるか?」
「はい!」
「その言葉忘れるな」
師匠はにっこりと笑った。
三国志いきなり豆知識①~撃剣~
日本での撃剣は、刀剣で相手を攻める術のことを言う。
中国の撃剣は、短刀を飛ばして相手に当てる暗殺術(諸説あります)
秦の始皇帝を暗殺しようとした荊訶は撃剣の達人と言われている。
三国志では、劉備の初代軍師徐庶や、魏の初代皇帝曹丕などが撃剣の使い手としてしられている。
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