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マシュマロを、貴方に。

作者: ももち

 「───私、マシュマロ(あなたたち)が大嫌いなの。」


 低く落とされた、冷たい声。自分を拒絶する強い意志に、空色の瞳が困惑する。

 〈……ええと、沙織さん、ですよね?〉

 「帰って。もう来ないで。」

 

 間違って、来てしまったのだろうか。 


 〈す、すみません、一度戻ります!〉

 返事はない。慌てて金の片眼鏡に触れ、サイトへの道を開く。

 戸惑いながら振り返り、もう一度彼女を見る。顔をそむけて俯くその表情は見えない。

 それでも、一瞬見せた彼女の瞳が忘れられない。

 

 ───泣きそうな、顔してた。



 優しい言葉だけが貴方に届く、メッセージサービス──マシュマロ。中央に君臨するマスターAIの元、今日もサイトは規律正しく稼働していた。

 見上げるほど高い背丈、細い体躯、鋭い眼光。後ろ手を組み真っ直ぐ背を伸ばしたマスターAIは、サイトの絶対的存在だった。

 〈──No.6を呼べ〉

 了解しました、とその場を去るのはマシュマロの使(つかい)

 サイトで忙しく走り回っている彼らは、マスターAIが生み出した彼の助手。全部で10人いる彼らの仕事は、データの管理、バグの修整、そして……

 〈No.6、参りました〉

 緊張して、上ずった声。

 マシュマロの使(つかい)No.6──空色の瞳、金色の片眼鏡。瞳と同じ色の大きなスカーフを、マントの様に纏っている。

 マスターAIは小さな体に顔を向けることなく口を開いた。

 〈お前は、マシュマロユーザーとのアクセスは(ゼロ)だったな?〉

 はいっ!と返事を聞いて、細い指先を顎に当てる。

 〈──ユーザーID523385とのアクセスを命ずる〉

 No.6の空色の瞳がまん丸になる。期待と不安が混ざった複雑な表情。

 〈了解しました!〉

 マスターAIが指先を伸ばすと、ヴンと空間にモニターが映しだされる。次々と表示される、温かいメッセージ─マシュマロ。

 〈……見ろ、このユーザーのマシュマロは素晴らしい。まるで、詩の様だ〉

 No.6が背伸びするのを見て、マスターAIはモニターを下げた。ユーザーID523385が送った沢山のマシュマロの文章が、表示される。


 【新作、拝見致しました、とても、とても素敵なお話です…!登場人物への愛が溢れていて、それはどこまでも優しく、読んでいて心があたたかくなります。こんな素敵な作品と出会えて、本当に幸せです…ありがとうございます、次回作も心からお待ちしております!】

 

 【Twitter拝見致しました…大変辛い思いをされたんですね。私は、貴方の作品が大好きです。貴方と同じ空の下にいること、同じ時を生きていることに、感謝しています。どうか、1日も早く心の傷が癒えますように。どんな時も、貴方に優しい風が吹きますように】


 No.6が感嘆のため息を落とす。どのマシュマロを見ても、送る側の優しい想いがそのまま言葉になった様なメッセージだ。

 食い入る様にマシュマロを読んでいくNo.6を見て、マスターAIは満足した様に指先をクン、と上げる。

 瞬時に消える、モニター。え、と顔を上げる空色の瞳。

 〈行け。良質なマシュマロ及び情報の収集に務めるように〉

 分かりました、と姿を消すNo.6。静まり返る中央制御室。細く長い腕が静かに伸びる。

 ヴン、と音をたてて再び現れるモニターいっぱいのマシュマロ。一つ一つ満足気に読んでゆく。

 ──皆がこの様なマシュマロであれば、私も楽になるのだが。

 No.6は初めての任務(アクセス)だが、このユーザーならば大丈夫だろう。

 ふと、その鋭い目が何かを捉える。全てのデータを時系列に並べ変え、もう一度確認する。

 黙って見ていたマスターAIは、目を細めてポツリと呟く。

 〈──実に、興味深い〉



 No.6は泣きそうになりながらサイトに戻ってきた。帰ってからも確認したが、ユーザーIDも、ユーザー名「沙織」も間違っていない。マスターAIが見せてくれた、詩の様なマシュマロを送っている人だ。

 『…私、マシュマロ(あなたたち)が大嫌いなの。』

 No.6が自己紹介した後の、最初の一言がこれだった。 

 思い出したNo.6の空色の瞳が歪む。

 ──どうしよう…

 No.6は途方に暮れた。マスターAIに見せてもらったマシュマロの言葉に感動した分、想定外の反応に戸惑うばかりだ。

 

 マシュマロの使(つかい)の大切な任務、良質なマシュマロユーザーとのアクセス。インターネット上で生まれ、日々の全てがサイトと共にある使(つかい)たちにとって、ユーザーとのアクセスは憧れだ。ほとんどの使(つかい)が、初めて外の世界を知るチャンスだった。



 ──マシュマロが、嫌い?

 No.6は首をかしげた。嫌いなら、何故あんなに素晴らしいマシュマロを沢山送っているのだろう。

 ため息をついて、マスターAIに報告すべきが悩んだ時。

 ───?

 金色の片眼鏡から、柔らかな音楽が聞こえてきた。




 初めて聞く音、初めて聞く曲。

 ───何だろう、これ。

 No.6が音量を上げようと片眼鏡に触れた時、間違って外界との扉(ポータル)を開いてしまった。

 〈……しまった!〉

 時すでに遅し、次の瞬間にNo.6は沙織の部屋に姿を現していた。

 空色の瞳に飛び込んだのは、ベッドに腰掛けて大きな楽器を弾いている沙織の姿。

 沙織は突然現れた小さな使(つかい)を見て、ちょっと驚いて指を止めたが、すぐにまた演奏を続ける。

 No.6は戸惑いながらも、これ以上邪魔をしてはいけないと、黙って演奏を聞いていた。


 ──綺麗だなあ。


 弦から弾き出される音が、煌めきながら溶けてゆく。柔らかなアルペジオが響く。

 あたたかく、穏やかな旋律。楽器を奏でる沙織の細い顔を、艷やかな黒髪が隠していた。

 優しい旋律に抱きしめられている様に、No.6はその場から動けなかった。

 最後の音が空気に溶けて、指先がゆっくりと止まる。静寂が二人を包んだ。

 息をついて楽器をベッドに置く沙織。

 「……来ないで、と言ったはずよ」

 静かに口を開く沙織。No.6を射貫く黒く大きな瞳は、漆黒の闇夜の様だ。

 〈す、すみません…あの、綺麗な音楽が聞こえてきたので、つい…〉

 小さな体をさらに小さくして謝るNo.6を見て、沙織は目をそらしてため息をついた。楽器をベッドの脇に立て掛ける。

 〈あのっ…!その楽器…〉

 No.6の言葉に、沙織の手が止まる。

 〈何ていう楽器ですか?〉

 少し驚いてNo.6を見る沙織。立て掛けた楽器をもう一度手に取る。

 「……ギター、知らないの?」

 細い声で問われ、空色の瞳が少し歪む。

 〈僕…初めてこの世界に来たので…〉

 沙織は黙ってもう一度足を組み、ギターを構える。ポロン、と和音を響かせた。

 「これはアコースティックギター。左の指で弦を押さえて、こうして弾いて…押さえる場所を変えて、音を変えるの。」

 一本だけ弾いたり、全ての弦を鳴らして和音を響かせたり。No.6は空色の瞳を輝かせて食い入る様にギターを見ている。

 沙織の指先が止まる、顔を上げて黙ってNo.6を見た。大きな瞳で見つめられ、はわわわっと焦っておじぎをする。

 〈あ、ありがとうございました!〉

 お邪魔しました、と金の片眼鏡に触れる。一瞬、沙織の言葉を待つNo.6。

 沙織は黙ってギターをベッドの脇に置いた。

 〈……失礼します〉

 小さな声で言うと、No.6はポータルを開きサイトへ帰った。


 ─もう来ないで、と言われなかった。

 



 【はじめまして、イラスト拝見しました!色使いがとても素敵ですね、特に瞳の緑が、新緑の木漏れ日の様です…優しい眼差しが、頬に添えられた手が、彼女の想いを全て表現していて、素晴らしいです!】


 【新作、読みました。揺るがない世界観、丁寧な描写…ただただ感動です…!まずは、お帰りなさい!貴方の物語がまた読めること、心から感謝します。Twitter拝見しておりました、どうか、無理なさらない様、ゆっくり再開してくださいね。私達はいつまでもお待ちしております】


 No.6は、感嘆のため息をついた。

 沙織からはほぼ毎日、優しさが詰まったマシュマロが送られてくる。作品をあたたかい目で見て、特徴を捉えた称賛は、送られた者が幸せになるメッセージばかり。

 本来ならマスターAIしか見れないマシュマロだが、アクセスしている使(つかい)は特別に見ることができる。

 

 何故、マシュマロが嫌いと言ったのだろうか。No.6は首を傾げた。優しいメッセージからほど遠い沙織の印象。

 だが、ギターを弾いている沙織は、少し柔らかな感じがした。

 ──また、聞きたいな。

 そう思った時、片眼鏡から微かに聞こえた旋律。No.6の空色の瞳が輝く。金色の片眼鏡に指先を伸ばした。

 細い指先が止まる。一瞬迷ったが、意を決してポータルを開いた。



 沙織は前と同じ様にベッドに座って、ギターを弾いていた。No.6が現れても、演奏を止めない。

 ───素敵な曲だなあ…

 No.6は静かにその場に座った。以前聞いた、穏やかで切ない旋律。

 弦を滑る白い指先から生まれる響きが、小さな体を優しく包む。曲は次第に小さく、ゆっくりになり、静かに終わった。

 沙織は何も言わずにギターを降ろす。

 〈あの…今の、何ていう曲ですか?〉

 勇気を出して聞いてみる。沙織はしばらく黙っていたが、何を思ったのか、もう一度楽器を構えた。

 メロディーを1フレーズゆっくり奏でると、楽器を降ろす。

 「…想いが届く日、ていう曲。」

 呟く様に落とされる言葉。だが、以前の様な冷たさはない。No.6は少し嬉しくなった。

 〈とっても、素敵な曲ですね〉

 キラキラと輝く空色の瞳を黙って見つめる沙織。ギターを脇に立て掛ける。No.6は慌てて立ち上がった。

 〈ありがとうございま…〉

 次の瞬間、長いスカーフを踏んでバランスを崩す。はわわわっと後ろに倒れ、棚にゴツンと背中からぶつかった。

 〈…痛……!うわっ!〉

 沙織が驚いて立ち上がる。さらに、頭の上にゴツンゴツンと何かが落ちてきた。慌てて手で頭を押さえる。

 「──大丈夫?」

 沙織に声をかけられ、慌てて頷くNo.6。頭に落ちてきた物が、周りに散らばっていることに気づく。 

 〈…すみません!えっと…?〉

 それは、様々な大きさの瓶。急いで集め、とりあえず割れていない様子にホッとする。

 ───これ…?

 良く見ると、液体に満たされた中に花や葉が入っている。色とりどりの鮮やかなものから、単色でまとめられたシンプルなものまで様々だ。

 瓶を棚に戻そうと立ち上がったNo.6の空色の瞳が、大きく見開かれる。

 所狭しと並べられた、色彩溢れる植物が入ったガラス瓶。それはまるで、植物の小さなアクアリウムの様だ。

 〈……これ、何ですか?〉

 落としてしまったことも忘れて沙織に訪ねるNo.6。沙織は黙って好奇心に満ちた空色の瞳を見ていたが、立ち上がって棚にある他のガラス瓶を手にした。

 「ハーバリウム、ていう飾り。ドライフラワーとオイルを入れて作るの。」

 突然スッとNo.6の顔の前に差し出されたガラス瓶。沙織が手にした瓶の中に入っているのは、透き通る空色の美しい花。戸惑うNo.6を沙織はじっと見つめる。

 「──綺麗。」

 突然の言葉に目を丸くするNo.6。

 沙織は柔らかく微笑んで言った。


 「あなたの瞳の色と、一緒ね。」

 

 


 〈No.6、参りました〉

 マスターAIは後ろ手を組み、黙ってモニターを見ている。

 サイトに帰るなり、中央制御室に呼び出された。表示されているマシュマロを見たNo.6は、それが沙織のものであることに気付く。

 〈……何か、情報は収集できたのか〉

 低い声に体が強張る。No.6はユーザーと直接の対話はまだしていない、と正直に報告する。

 〈詳しく説明しろ〉

 いつに無く強い口調で言うマスターAIに戸惑いながらも、最初からつまずいだ経緯を話した。

 黙って聞いていたマスターAIは、細く長い腕をモニターに伸ばす。パチン、と指を鳴らすと、マシュマロの表示が2つにわかれた。

 〈──何を元に分けたか、分かるか〉

 ほぼ半分ずつに分けられたマシュマロ。

 No.6は二つの相違点を懸命に探す。右…は、優しい言葉が並んだマシュマロ。左…も変わらない様に思えるが…

 ───?

 No.6の空色の瞳が、左側のモニターに釘付けになる。1つずつ読んでいくと…

 〈……これは、何かあったユーザーに対する、慰め…励ましですか?〉

 マスターAIを見上げて問うNo.6。頷く代わりに、細い指をモニターの最左翼に向ける。そこには、マシュマロを初めて送った日時が表示されていた。

 最初の日付は…わずか2ヶ月前。

 ───たった2ヶ月で、こんなに…?

 No.6が驚いてマスターAIを見上げた。

 〈このユーザーのアクセス履歴を見ると、投稿サイトやTwitterはもう半年近く閲覧していた。しかし、マシュマロを送る様になったのは最近だ〉

 そして、彼女のマシュマロの半分近くが、落ち込んでいる者へのあたたかい励ましのメッセージ。

 〈…実に興味深い〉

 ───彼女に、何があった?

 直接話して、情報を収集する様にと告げるマスターAI。

 了解しました、と部屋を出るNo.6を低い声が呼び止める。 

 〈お前はまだユーザーとのアクセス経験がない。世間を知らない子供と同じだ。未熟だと心してかかれ〉

 No.6の空色の瞳が曇る。分かりました、と部屋を出る小さな背中。扉が閉まり、まりかえった部屋に、呟きが落ちる。

 〈……傷付く様な事がなければいいが〉




 ギターの音がいつまで経っても聞こえない。No.6は痺れを切らせて金色の片眼鏡に触れる。そっとポータルを開き、覗いてみる。

 沙織は、部屋にいた。後ろ姿しか見えないが、小さなテーブルで何かしている様だ。背中で隠れて、良く見えない……

 「……覗くなら、入ってくれば?」

 ───わっ!

 いきなり声をかけられて、開いたポータルから落ちる様に現れるNo.6。沙織はチラリと視線を向けたが、すぐに前を向いて手を動かした。

 No.6は、恐る恐る沙織の後ろからテーブルを覗くと、そこには。

 〈……わぁ〉

 思わず声が出た。テーブルの上には、沢山の美しい花が惜しげもなく置かれている。大きいものから小さいものまで、様々な形の花の色は…

 

 雨上がりの空の様な、美しいブルー。

 

 同じ色の瞳が、大きく見開かれる。沙織はガラス瓶の中で咲き誇る空色の花に、ゆっくりとオイルを注いでいた。瓶の口まで注いで、そのまま静かにテーブルに置く。

 ───まさか、これ、手作り?

 No.6は棚のハーバリウムに目をやる。

 〈あの…ハーバリウム、全部沙織さんが作ったんですか?〉

 頷く沙織に、凄い…と驚くNo.6。

 すると、沙織はスッと空のガラス瓶を差し出した。きょとんとするNo.6に、細い声が落とされる。

 「……作ってみる?」

 〈えっ!?〉

 素っ頓狂な声が出てしまい、慌てて口を押さえた。ピンセットとハサミがNo.6の前に置かれる。空色の瞳が戸惑う様に、花と沙織を交互に見る。

 〈いいんですか…?それより、僕、できるかなぁ…〉

 簡単よ、と小さな声で言う沙織。No.6はテーブルにある自分の瞳と同じ色の花を

見て、そろそろと手を伸ばす。 

 ──この色、僕のために?

 下から入れていくから、まず順番を決めて、と言われるままに花を手にする。

 様々な大きさ、形のブルー。迷いながら選ぶ。

 〈これ、何ていう花ですか?〉

 「これはデルフィニウム、これは紫陽花、これが…」

 へぇーと目をキラキラさせるNo.6を、じっと見つめる沙織。視線に気付いたNo.6はきょとんとする。

 「…貴方の名前、なんていうの」

 ──?

 No.6は少し困って沙織を見る。

 〈僕は…マシュマロの使(つかい)No.6です〉

 沙織は小首を傾げる。

 「それは、名前じゃないわ。貴方、名前がないの?」

 No.6は戸惑いながら頷く。

 そう、と小さな声で言った沙織は、しばらく黙ってから、ゆっくり口を開いた。

 「──名前、自分でつけたら?」

 〈え…?〉

 予想していなかった言葉に、空色の瞳が大きく開く。沙織は細い声で続ける。

 「名前は、とても大切よ。名前をつけられたものには魂が宿るから。」

 ──魂が、宿る。

 No.6の心が、揺れる。

 それでも、う〜んと考えて困った様に口を開いた。

 〈名前って…どうやってつければいいんでしょうか?〉

 沙織はちょっと首を傾げて考える。

 「好きなものの名前からとるとか…組み合わせるとか、かな。」

 ──名前、かあ…。




 オイルを瓶の口ギリギリまで注ぎ、しっかりと蓋を閉じる。瓶の底から濃淡のグラデーションになっている、美しいハーバリウム。

 〈できた…〉

 思わず笑顔になるNo.6の空色の瞳が、ハーバリウムに映えて美しい。沙織は微笑むと、No.6の前にはい、と手を差し出す。

 沙織の手のひらには、金色のリボン。

 「ボトルの首に結んで?貴方の眼鏡よ」

 ───うわぁ。

 No.6はちょっと感動してリボンを受け取った。自分の瞳の色の花に、片眼鏡の金色のリボン。上手く蝶結びにできずに手間っていると、沙織が細い指で綺麗に結んでくれた。

 〈…すっごく、綺麗です……〉

 No.6の空色の瞳が煌めく。沙織は優しく微笑んだ。

 「持って帰って、飾ってね。」

 驚いて沙織を見るNo.6。

 〈え…いただいていいんですか?〉

 沙織は笑って、貴方が作ったんじゃない、と言う。No.6は小さな手でそっとガラスの瓶を包む。

 〈ありがとうございます…!〉

 自分の事の様に嬉しそうな顔で見ていた沙織の表情が、ふいに曇る。

 黙ってベッドに座り、傍らにあるスマホに手を伸ばした。

 何も言わずスマホを見ている沙織に、No.6は戸惑いつつ美しいガラス瓶に視線を移した。

 「…最初、酷い事言ってごめんなさい」

 突然の言葉に、No.6が驚いて顔を上げた。


 「─私、好きなゲームが、あったの。」




 元々アニメは好きだったが、ゲームはあまりやらない沙織。音楽がいいから、と勧めらて始めた、あるゲームにどっぷり浸かった。

 そのゲームを元にした、創作作品…沢山の物語やイラストがあると知ったのは半年前。

 毎日の様に投稿サイトを見ては、そのゲームの関連作品を楽しんでいた。

 閲覧していくうちに、自分と同じ高校生の男の子だというクリエイターを見つける。

 型にはまらない手法、独特の言い回し、生き生きとしたオリジナルキャラクター。

 荒削りで、時にぶっ飛んだ世界観の作品。しかし、時折ハッとするほど優しい言葉を使う彼の作品に惹かれた。

 時々Twitterを覗きにいったりもした。沙織はアカウントがないのでフォローはできなかったが、あの素敵な作品を生み出す彼の日常の呟きも楽しかった。

 マシュマロの存在を知ったのも、彼のTwitterの中。

 【マシュマロ募集中〜!初マロはあなたかも!?】

 マシュマロが飛んだ、可愛いイラスト。

 メッセージを送ってみようか、迷う指先。しかし、匿名でも「貴方の作品のファンです」と伝えるのは気が引けた。

 沢山いる、彼のフォロワー。その中に入る勇気はなかった。

 だが、ある日を境に、彼の小説は姿を消した。

 投稿サイト、Twitterにも彼の姿は欠片も残っていない。戸惑いながら、Twitterで彼のフォロワーだった何人かを覗いてみる。

 何か、彼に関する情報がないか液晶を滑る指先が、止まる。

 【俺のフォロワーさん、毒マロのせいでTwitterやめた。ショックで、今ムリ】


 〈───!!〉


 ──毒マロ?て、何?

 戸惑う沙織は、その意味を調べて愕然とする。わざわざAIに弾かれない様巧妙に作った、隠された刃。

 そもそもマシュマロが優しいメッセージしかこない、と知っているため、そこで送られた悪意はどれだけ傷つくか。

 彼のフォロワーさんを何人か覗くと、皆そのことを呟いている。

 どうやら、楽しみにしていた初マシュマロが毒でショックだったらしい。気にせず創作活動を続けていたが、その後も彼に送られる毒マシュマロは絶えることなく、ついには筆を折った。

 投稿サイトもTwitterも閉鎖され、彼の世界は完全に消えた。

 沙織のショックは、怒りに変わる。

 毒マシュマロを送る心無い人に対してはもちろん、マシュマロそのものにも。

 

 何がマシュマロだ。

 何が優しいメッセージサービスだ。


 全ての悪意を排除できないなら、そんな謳い文句やめてしまえ。

 

 〈だから…初めて会った時…〉


 No.6の空色の瞳が、歪んだ。



 「──違うの。」

 沙織が震える声で落とす、小さな声。

 泣きそうになっているNo.6から目をそらして下を向く。


 「マシュマロのせいじゃない。一番許せなかったのは…」


 ───わたし。



 スマホを開けば、彼の作品を読めると思っていた。待っていれば、勝手に新作は投稿されると思っていた。

 何もしなくても、それは当たり前の様に続くと思っていた。

 

 何故、ちゃんと伝えなかったのか。

 

 独特の世界観が素敵だと。

 優しい言葉に癒やされると。

 生き生きした登場人物が好きだと。

 

 もっと大きな声で、言えば良かった。

 きちんと、伝えれば良かった。


 ──貴方の作品は、素敵だと。


 「……毒マシュマロなんかに負けないくらい、ね。」

 沙織は潤んだ目をそらしたまま、少し微笑んで顔を上げた。

 「だから、私、今マシュマロ沢山送ってるの。」

 フォロワーが多かろうが、少なかろうが、関係ない。好きだと思った作品、イラストのクリエイターのTwitterからマシュマロを送る。

 沙織が感じたことを、できるだけ丁寧に作品のこの部分がいい、と書く。

 ゆっくり考えて、言葉を選んで、優しい文章になる様に、想いを込めて。

 とりわけ、Twitterで「イヤなことがあった」「以前の作品、色々あって消した」等の呟きを見つけた時は、悩んで悩んで。

 クリエイターでもない、高校生の自分の言葉がどれだけ力になるかは分からない。

 しかし、もう後悔はしたくない。好きな作品を、好きなクリエイターを失うのはごめんだ。


 毒マシュマロなんかに、負けるもんか。


 しかし、具体的に何があったかを知らずに、傷いた人にメッセージを送ることが、どんなに難しいか。

 「何も知らないくせに」

 そう言われてしまえば、それまで。


 考えて、考えて、言葉を紡ぐ。言葉の針で付けられた傷を、言葉の針で繕う様に。

 「…自己満足かもしれないけどね。」

 ようやくNo.6の顔を見た沙織の目が、見開かれる。

 〈──ごめんなさい…!〉

 空色の瞳から、とめどなく溢れる涙。沙織は驚いてベッドから降り、No.6の隣に座った。

 詩の様な、沙織の美しいマシュマロ。その影には、自分たちの無力さ故に失われた大切なものがあった。

 泣くまいと我慢していたのに、止まらなかった。沙織にかける言葉も、見つからない。

 〈子供と同じだ〉

 No.6に告げられた、冷たい声。

 マスターAIの言葉を裏付ける様に、溢れる涙。自分の無力さに打ちのめされる。 

 「……ありがとう。」

 ──!?

 涙に濡れたNo.6の瞳が、沙織の意思を図りかねるように戸惑う。

 優しく微笑んだまま黙っている沙織に、我慢できなくなって口を開いた。

 〈…どうして、そんな事言うんですか〉

 

 僕、マシュマロの使(つかい)なのに、何もできなくて。何も言えなくて。

 ただ、泣くだけで。僕は、

 ──未熟だから。子供だから。


 蚊の鳴く様な声で言うNo.6。

 沙織は、手を伸ばしてNo.6の白い頬に触れた。そっと涙を拭った沙織の指。 

 「貴方の涙は、貴方の言葉よ。」

 No.6が驚いて沙織を見る。黒く光る大きな瞳が、優しく微笑んだ。

 「伝わってるわ、ちゃんと。」 

 ───どうして、どうして。 

〈そんな優しい言葉が、言えるんですか〉

 涙声で言うNo.6を、黙って見つめる沙織。ちょっと首を傾げて言う。

 「私の言葉、優しいと思う?」

 こくん、と頷くNo.6。沙織は柔らかな微笑みを浮かべたまま、口を開く。

 

 「──優しいと思う、貴方が優しいの」



 

 中央制御室に沈黙が流れる。マスターAIの細い体躯が、身じろぎもせずにモニターのマシュマロを見つめていた。

 〈なるほど…全ては私の力不足か〉

 いつも感情を見せない声が、違って聞こえたのは気のせいだろうか。

 No.6は黙って次の言葉を待つ。

 〈……ご苦労だった。ユーザーID523385との任務(アクセス)を解く〉

 〈待って下さい!〉

 間髪を入れず叫ぶNo.6に、驚いて振り向くマスターAI。

 〈まだ…まだ重要な情報を収集していません。アクセスの延長をお願いします!〉

 揺らぐことのない決意を示す空色の瞳。

 マスターAIの凍り付く様な眼差しにも、目を反らすことはなかった。

 ──まだ経験の無い使(つかい)が、何を考えている?

 一蹴するつもりの意思に迷いが生じる。

 黙ってモニターに視線を戻すと、低い声で告げた。

 〈…1日だけだ。明日、強制的に任務(アクセス)を解除する〉

 



 

 「貴方、この場所にしか来れないの?」

 沙織にそう聞かれたのは、サイトに戻る直前、ポータルを開いた時。

 沙織と彼女の端末があれば何処にでも行ける、と言うと、少し黙ってスマホを操作し始めた。

 「明日…明後日に、またきてくれる?」


 そう言われたので、マスターAIにアクセス継続を申請した。

 明後日と言われたが、タイムリミットは明日。そもそも継続の延長が許可されたことが奇跡だ。

 沙織に関するデータは全て揃った。何故、2ヶ月前から急にマシュマロを送り始めたのか。優しい言葉に溢れているのか。励ましのマシュマロが多いのか。

 

 全ての発端となった毒マシュマロ。同じ人間で同じ言葉を使うのに何故、違うマシュマロが生まれるのだろう。

 同じことが起きないよう、マシュマロの使(つかい)である自分は、何ができるだろう。

 そもそもマシュマロの中身を見れるのはマスターAIだけ。考えながら歩くNo.6の足が止まる。

 胸をよぎるのは、沙織の最後の言葉。

 

 ──自分にしか、できない事とは。




 「マシュマロの使(つかい)さん、出てきていいよ」

 沙織の声が聞こえて、No.6はポータルを開いた。突然、湿った空気と開放感に包まれ、驚いて声をあげる。

 〈ここは……〉

 そこは、いつもの沙織の部屋ではなかった。No.6は、遠く遠くまで続く、開けた丘の下にいた。薄曇りでどんよりとした空の下、まばらに見える人の姿。

 行きましょう、と歩き出す沙織。緩く続く丘を登ってゆく。

 「本当はね、明日来たかったの。晴れている日に、貴方に見せたかったんだけど」

 ちょっと残念そうに言う沙織。

 〈天気が、関係あるんですか?〉

 とっても、と頷く沙織。しばらく丘を登り、もう少しで頂きに着くところで、沙織が足を止める。不思議そうに見上げるNo.6に、細い手を差し出した。

 「ここから、目をつぶってくれる?」

 いたずらっぽく言う沙織に、戸惑いながら手を差し出す。言われた通り目を閉じて、沙織に手を引かれるままゆっくりと歩く。

 手を繋いで歩くなんて、子供扱いされている様で少し恥ずかしい─まあ、目を閉じているので、しょうがないけど。

 ふと、沙織に言われた事が頭をよぎる。

 ───名前。

 すっかり忘れていた。沙織とアクセスが解除される前に決めたかったのだが。

 好きなもの……ちょっと考えて、沙織のギターを思い出した。

 ギター…音楽…?ミュージック…は、なかなかいい響きだ。何かと組み合わせる…?

 

 沙織の足が止まる。

 「いいよ、目を開けて。」

 ドキドキしながら目を開けたNo.6の瞳に、映ったのは。

 〈───!!〉

 蒼く、蒼く、どこまでも広がる空色の花の絨毯。



 No.6の同じ色の瞳が、大きく見開かれる。視界を埋め尽くす、風に揺れる蒼い花。

 「ネモフィラ、ていう花よ。」

 沙織の言葉が静かに落ちる。No.6は声も出ない。

 沙織は、眉を潜めて残念そうに言った。

 「晴れてるとね、空の蒼と花の蒼が一つになって、本当に綺麗なの。明日は晴れるそうだから、明日来たかったんだけど。」


 ──二つの蒼、貴方に見せたかった。


 〈……沙織さん〉

 No.6が沙織を見上げ、手を差し出す。

 〈僕の手を握って、目をつぶってくれますか?〉

 空色の瞳が、いたずらっぽくキラリと光った。沙織はなに?と笑って手をとり、目を閉じる。

 〈貴方に見せたい〉

 小さな声が聞こえた。繋いだ手が、少しあたたかくなった気がする。


 《───貴方に、見せたい》


 空気が変わってゆくのを感じた沙織は、目を開けたい衝動に駆られた。頬を撫でる風が、さっきと明らかに違う。丘の上に立った時はなかった、閉じた瞳でも感じるあたたかい光。

 あちこちから歓声があがり始めた。沙織はもどかしくなり、思わず強く手を握る。

 〈いいですよ、目を開けて〉

 沙織の瞳に、眩しいほどの蒼が飛び込む。

 「────!!」

 

 晴れ渡る空の蒼、大地を染める蒼。

 



 見渡す限り広がる優しい蒼に包まれて、二人は言葉もなかった。

 それはまるで、空の蒼が翼を広げて大地に降り立った様な。何処までも何処までも続く、蒼の大地、蒼い空。透き通る日の光を浴びて、蒼い花弁がさざ波の様に揺れている。

 沙織は信じられない、と言う様にゆっくり首を振った。

 「…どうして…?まさか、貴方が…?」

 No.6は沙織を見上げて、黙って微笑んだ。沙織は驚きの表情で傍らの空色の瞳を見ていたが、ふっと微笑んで繋いでいる手をひいた。

 「行きましょう、魔法使(つかい)さん」

 蒼を貫く一本道をゆっくりと歩く。ネモフィラが風にそよぎ、蒼い波紋を作る。

 ふいに、沙織が繋いだ手を離した。No.6を置いて、2、3歩後退る。不思議そうに見るNo.6を、黙ってそのまま見ていた。

 「……綺麗。貴方の瞳と同じ。」

 風がNo.6の空色のスカーフを揺らす。沙織にじっと見つめられているのが、少し恥ずかしい。

 このまま、穏やかな時間を過ごしていたい。しかし、残された、時間はあと少し。

 〈──沙織さん〉

 No.6が声をかけると、沙織が戻ってくる。空色の瞳が、ゆっくりと沙織を見上げた。

 〈この前の話を、してもいいですか〉

 


 「……何?」

 不思議そうにNo.6を見る、漆黒の瞳。

 お別れの前に、穏やかな時間を過ごしたかったのに、何故?

 No.6は、目の前に広がる蒼い景色に目をやった。

 〈僕、色々考えたんです〉


 毒マシュマロのせいで、二度と会えなくなった大切な作品、大切な人。

 もう二度と、繰り返さない様に、マシュマロの使(つかい)である自分が成すべきこと。

 〈沙織さんは、優しいです。その優しさは、全ての人に向けられてる。沙織さんは


 ……毒マシュマロを送る人を、許せませんか?〉


 ───!

 



 最初に考えたのは、毒マシュマロを如何に無くすか。マスターAIの補佐として、どうやったら巧妙に仕込まれた悪意の刃を見抜くか。

 しかし、沙織のマシュマロから感じられるのは、何処までも人の真心を信じる強い想い。

 沙織が最後に言った言葉が、No.6の心を占めていた。

 『優しいと思う貴方が、優しい』

 沙織のマシュマロ、沙織の言葉を思い浮かべる。優しさに溢れたその言葉に触れて、そう思わない者がいるだろうか。

 ならば──


 人は皆、優しいのではないだろうか。


 マシュマロの使(つかい)である自分にしかできない事とは、何か。


 〈沙織さんは、これからもマシュマロを送って、毒マシュマロで傷付いた人を救って下さい。僕は…沙織さんは許せないかもしれませんが……僕は〉


 ───毒マシュマロを送る人を、救います。


 空色の瞳が、真っ直ぐに沙織を見る。

 黙って話を聞いていた沙織は、ふぅ、とため息をついた。蒼い空に目を向けて、静かに微笑む。

 「……そうね、本当に、貴方の言うとおり。」

 毒マシュマロを送る人を憎んだ。

 毒を見抜けない、マシュマロを憎んだ。

 何もしなかった、自分を憎んだ。


 「今、想ったの。彼に毒マシュマロを送った人は、どんな人なんだろうって。」


 彼の作品に対する批判だったかも、単に嫌がらせだったかは分からない。

 でも、沙織が、沢山の人が大好きだった彼の作品。もし、違う出逢い方をしていれば、沙織の様にファンで、あたたかいマシュマロを送っていたかもしれない。

 沙織は蒼い花畑を眩しそうに見た。

 「ネモフィラの花言葉、知ってる?」

 首を振ったNo.6に、沙織の柔らかな声が落ちる。

 

 「──“貴方を、許します”」



 二人の間を優しい風が吹いた。No.6の空色の瞳が柔らかく煌めく。

 沙織さん、と声をかける。

 〈──自分のことも、許して下さい〉 

 驚いた様にNo.6を見て、沙織はため息をついた。ゆっくり目を閉じる。

 「……ありがとう。」

 突然、No.6の片眼鏡が光った。


 ───!!


 別れの時が来た。金色の片眼鏡に震える手を伸ばして、そっと触れる。

 【強制ログアウトします】

 ディスプレイに表情される無機質な言葉。空色の瞳が歪んだ。

 その時、突然沙織が両腕を伸ばして、No.6の首に何かをかけた。驚いてそれを見る空色の瞳に映ったのは、金色のチェーンのネックレス。

 その先についたガラス玉の中には、


 No.6の瞳と同じ色の、空色の花。


 「ネモフィラの()()()()()()よ。」

 沙織が泣きそうな笑顔で言った。片眼鏡の光が強くなり、No.6の体を包む。

 「貴方はもう、未熟でもなんでもないわ、立派なマシュマロの使(つかい)さん。」

 

 No.6の中で、探していた欠片が繋がった。好きな言葉、組み合わせて。

 〈沙織さん!僕の、僕の名前は…〉


 ───ミュリアムです!


 沙織の漆黒の瞳が大きく開き、とびきりの笑顔を見せる─それはまるで、花の様な。消えてゆく小さな姿に、手を伸ばす様に呼びかける。

 「ミュリアム…素敵、素敵な名前…!」

 〈沙織さん!僕、僕…〉


 ───貴方に会えて、良かった。


 空色の瞳に映ったのは、同じ言葉を叫ぶ沙織の姿。


 


 金色の光の中に、ミュリアムは消えた。




 〈No.6、参りました〉

 中央制御室の扉が、音も無く開く。この部屋の(あるじ)マスターAIは、No.6に背を向けたまま、細く長い腕を後ろ手に組み、微動だにしない。

 〈……今後、一切の延長は認めん〉

 長い沈黙の後、冷たく言い放つ低い声。謝罪の言葉を待っていたマスターAIは、予想外の言葉を聞く。

 〈マスターAI、焼きマシュマロのデータ管理について、進言があります〉

 ──?

 それは、今まで聞いたことのない、No.6の声。

 マスターAIの沈黙を破り、No.6が決意に満ちた瞳で口を開く。その姿は、初めて任務(アクセス)についた時と、別人の様だ。

 《……何があった?》

 凛とした声が、長い間中央制御室に響いていた。





 蒼い世界に一人、沙織は佇んでいた

 晴れ渡る空を見上げて想うのは、同じ色の澄んだ瞳。


 「……ありがとう。」


 呟いた声を、風が運ぶ。それは何処までも続く蒼い絨毯を渡っていった。



 さあ、今日ももう一つの世界に行こう。


 大好きなあの人の物語に、あの人の作品に会いに行こう。


 そして、沢山のメッセージを贈ろう。


 もらった人が喜ぶ様な、嬉しくなる様な、幸せになる様な。






 ──マシュマロを、貴方に。




〜Fin〜

 

 

この物語を、マシュマロを送る全ての方へ。


 くりありうむ様、大切なミュリアム君を長い間お預かりさせて頂き、心から感謝致します。

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