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トリエスタル魔法学校。
ここは貴族でも平民でも、魔法の使える者ならば誰もが入学を認められる。膨大な魔力を持つ者もいれば、極めて少量の魔力を持つ者もいる。使える魔力量に応じて棟分けされ、学力と使える魔法の数によってクラス分けがされる。S棟、A棟、B棟の三つの棟で一番魔法が使えるクラスを『ディスタ』と呼ぶ。
ディスタクラスには、将来は魔法士や魔術師、魔法医師になる者が多く集まる。三棟も魔力量の差があるだけで、ディスタクラスのレベルはそう違わない。
そんなディスタクラスに在籍する学生、アイラス・タティーニアは三年に上がり学生生活も残り一年を迎えた。一年次からS棟ディスタクラスをキープし続け、学年のトップ区に食い込む程の実力者。婚約者であるニーアス・トラストムが学年首位を取るなら、彼女は次点を取る。二人は学園でも有名な秀才達だった。
ニーアス・トラストムは幼少期からの婚約者であるが、彼女はそれが破棄されることを願っている。
悪役令嬢だったはずの転生者、ローゼリー・カストニールによって、彼は物語と違う性格、未来を手に入れたからだ。ローゼリーは幼少期に高熱を出してから人が変わったと聞く。温かく、情が深く、周りは笑顔で溢れ、何をしていても楽しく、人の良い所を見つけるのが上手くて、褒め上手でもある。現代ならば喜んで友人になりたいタイプ。そんな彼女に、ニーアスは惹かれた。一途な彼は、婚約者のいるローゼリーを思うだけに留めている。アイラスは彼を避け、ローゼリー達と一緒にいられるようにした。
ローゼリーの婚約者である第二王子、その騎士、お茶会で友達になった女の子二人、ニーアス。彼女を中心にしていつだって楽しそうに過ごしている。誰からも慕われ、素直に誰かに助けを求められる人で、誰にでも惜しみなく手を貸す。
アイラスは、物語通りなら結婚までいったはずの婚約が破棄されることをずっとずっと願っている。
お風呂中に思い付いたお話。
ありがちな設定ですが、楽しんで頂けたら幸いです。