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第36話 光さす出口

 意識を失ったカナタは、倒れる寸前で覚醒した、だがその寸毫(すんごう)の間に見た。かつて見た光景を。



 ーー必要なのだ。ーーもっと多くの異界の英雄がーー


 ーーそれはオレ/オマエのエゴだ。そんなものをオレ/オマエは許容することはできない


 ーーなんて、なんて弱い。その弱さこそが、すべての始まりだと、なぜわからない?


 ーーそんな弱さーー私は、斬り捨てて。そして登ろう、矮小わいしょうなる貴様など踏み込めない、遥かーー高みへ



 「っーー⁉︎」

 「カナタ様⁉︎ 大丈夫.......ですか?」

 咄嗟(とっさ)にカナタを支えたのはイオナ。その瞳に不安を色を覗かせながら、カナタを伺っていた。



 「大丈夫だーー問題、ない」



 見れば、青年の姿はもう跡形もなくなっていた。そして、カナタの割れるような頭痛もいつしか消え去っていた。


「カナタ様ーー。あの......」

「ああーー」

 もちろんカナタは、イオナにもオリガのことを伝えてある。だからこそ彼女の戸惑いも理解できた。なぜオリガが? なぜ。なぜ。なぜーー?

 だがそれは、カナタ自身も分からぬこと。



「オレはそもそも、オリガのことをほとんど知らない。もし、もしあの男(赤髪)が語ったことが事実なら、それはもう過去のことだ。なぜならばーーオリガはもう、いない」

 けれどーー

「だがもし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 カナタは、自らの腰に添えられたイオナの手に、みずからの手を重ねた。そして立つ、自分の足で、(しか)と。



「だからこそ、ガスパールだ。アイツに会って確かめる」

「......はい」

 イオナをこの空間へと封印した礼服の青年ならば、あるいは。



 カナタが逡巡(しゅんじゅん)していると、突如足元に光が走った。

 それはイオナが歌魔法を唱えた時に現れるものと同じように、亀裂の走る神殿の地に幾何学的な文様を描く。

 瞬きの間に形成されたのは、魔方陣。



 そしてその中心に、光の柱が立ちあがった。



「これはーー」

「恐らくこれは転移魔方陣。カナタ様、やりましたね」

 普段あまり感情を表に出さないイオナだが、真白な頬がわずかに赤らんでいる。瞳に反射する光も、いつもより輝いているようにカナタには見えた。



「出口ってことか?」

「ですです!」

 


 思えば、長かった。カナタは、さまざまに巡る思いをみずからの中で噛みしめる。



「この無間(むけん)牢獄は、時の流れから隔絶さえた空間。外に出れば、カナタ様がこの空間に訪れる直前の時間となっているでしょう」

 そういえば、とカナタは考える。カナタはこの空間に来てから、ろくに食事をしていなかった。だが空腹で倒れることがなかったのは、それが理由なのであろう。



「ですです。そうでなければ、私もとっくに餓死していましたから」

 決して口には出していない。だが、カナタの心の声に相槌(あいづち)を打つようにイオナがこぼした。

 そんな彼女に対して驚くような視線をやったカナタを見やり、イオナは小さな胸を張るようにして言う。



「カナタ様の考えはお見通しなのです。主人(あるじ)様の心を()めてこそ、です」

「......そうか」

 自分の心を見透かされたのが恥ずかしいためか、カナタはわざと目をそらしながらこぼすように呟いた。



「そういえば、もうひとつ聞いておきたいことがある」

 そして誤魔化すように繋げたカナタの言葉に、イオナはその細い首をわずかに傾ける。

「スキルもステータスもなかったーー1周目オリガは、どうやってこの世界で生き抜いたんだ?」



 その言葉を受け、わずかに悩むようにムムムとかわいらしく(うな)るイオナ。

「......恐らく、オリガさんは魔術を行使しえたのではないのかな、と」

「魔術?」 

 カナタはおうむ返しのようにその言葉を呟いた。



「カナタ様の世界。元いらっしゃった世界には、その概念はないのですか?」

「いや……言葉としては聞いたことがあるが」

 魔術、呪術、邪術、法術、妖術ーー確かにカナタの世界にも、その言葉は存在していた。だがーーカナタの記憶を探る限り、それを目の当たりにしたことはない。



「恐らく。文明の発達のせいでしょう。オリガさんが初めて世界を壊したのも、それが原因でしょうから」

 イオナが顎に手を当てながら、やや思案するように答える。



「一体それになんの関連性があるっていうんだ?」

「奇跡を為す超常の力ーー魔術を例にしましょう。魔術発動の燃料となるのはエーテルや魔力は極論ですが世界に溢れているものです、そしてそれを術として用いるには世界の源・アカシックレコードにアクセスする必要があります。ですが、それを行使するための最大の条件が信仰なのです」

「......ほう」



 言ってイオナは、短い旋律を紡いだ。すると刹那、青白い文様が奔る。

 


「魔術とはこういうものだ。こういう現象だ。人々の信仰・認識がアカシックレコードに刻みつけられ、それにアクセスすることで私の歌魔法や、魔術は発動できるのです」

「......そうか」



 こだましていた旋律が虚空に吸い込まれる。すると、その光陣も幻だったかのように消え失せた。



「ですが文明の発達はその信仰を破壊するもの。アカシックレコードは高次の存在ゆえ、人々には認識できません。そして認識できないものは信用されない。加えて文明の進歩によって科学が発達すれば、あたかも魔術のような奇跡を起こすことも可能になる。そうすれば人々はより信仰を失ってしまう。オリガさんは、文明の進歩によって神秘への信仰が駆逐されることを避けたかったのでしょう」



「......リソースの回収に都合がよく。さらに神秘が失われていないこの中世のような世界が、ーーオリガにとって都合がよかったってことか」

「ですです」



 ひとつの疑問の回答を得たカナタは、みずからの胸に渦巻いていた疑問を吐き出すように大きく息をついた。

「カナタ様。あまり......わかっていませんね」

「ーー汲んでくれるのはありがたいがな、イオナ。あまりオレの心を見透かすな」

「あぅ!」

 言って、いつも通りイオナの額を人差し指で弾いたカナタ。



「行くぞイオナ。まずはガスパールだが.......()()()()()()()()()()()()()()()()

 


 アダルブレヒト。

 カナタの仲間をその奸計(かんけい)によって鏖殺(おうさつ)し、

 カナタをこの空間へと廃棄した()



 ーー野放しにできない。()()()

 


    ● ● ●


—————————————————————

■■彼方 17歳 男 ■■■■  

職業:

レベル:■■■■

筋力値:25987(+■■■■■)

体力値:39876(+■■■■■)

耐性値:49879(+■■■■■)

敏捷値:98893(+■■■■■)

魔力値:18342(+■■■■■)

魔法耐性値:56221(+■■■■■)

スキル:言語理解、代償執行、代償転化、代償刻印、代償代行、自己回復、血流操作、アーネンエルベ

—————————————————————



本日もお読みいただきましてありがとうございました!


今回の話数でひとつの大きな区切りとなりますが、ここまでお読みいただきまして感謝の言葉もございません!!


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