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第34話 明かされる秘密

「カナタ様」

 地面に散乱する瓦礫を縫うようにして、イオナがカナタの側へとやって来ていた。彼女はカナタを見やりほほを(ほころ)ばせると、突如現れた青年へと視線を送る。

「あの方は......」

「わからん。だがあの巨人と関係があることは間違いないだろう」



 赤髪の青年には、ひどく存在が希薄だった。

 それはなんの(たと)えでもなく、青年の体越しに向こう側が透けて見えるほど。実態のない幽体のようなものだとカナタが気づいた時、声が聞こえた。



『ああーー君が、倒してくれたのか』



 青年の口が動くと同時に頭の中に直接語りかけるように声が響く。カナタの隣で佇むイオナにもそれが聞こえているのか、カナタの手を握りぎゅっと力を込めた。



「お前はーー?」



『個の名前なんて、とうに忘れたよ。ただーーこう呼ばれていたのは覚えている。「第5の厄災(テリブル )」忿怒のアルビオン、と』



 それはカナタがこの異世界に召喚されてすぐ、アダルブレヒトから聞いた名にほかならない。ある時この世界に誕生するという「厄災(テリブル )」 。カナタたちはそれらを打倒するために()ばれたのではなかったか。

 カナタは当初、それを魔物のようなものだと考えていた。そして先ほど戦っていた巨人はまさしく厄災の名にふさわしい存在であった。ーーだが今目の前にいる青年は、自分たちと同じ人ではないか。



『そう、確かに僕は人間だ。恐らくは君と同じく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「どういうことだ。なぜこの世に召喚された英雄がーー」

『答えはシンプル。テリブル・ビースト と呼ばれる存在は、例外なく異世界から()ばれた者たちなのだから』

「ーーッ⁉︎」



 ますます頭が混乱するのをカナタは感じていた。テリブル を倒すために異世界からカナタらを召喚しているのに、その召喚された者たちこそがテリブル というのは話が合わない。



『正確に言うと僕個人ではなく、召喚された者たちの群体ーー残留した思念の集合体こそがテリブル 』

 そんなカナタの混乱をよそに、青年は続ける。『英雄召喚はーー』



『この世界における"神"が、魔力を招集するために創った機構に他ならない。そしてその絞りカスは、テリブル として再利用する。ほんと、とんだマッチポンプだ』

 


 レベルアップ。それは"神"にとって、とても都合がよかった。本来ならば制限があるその人個人の魔力。その制限を容易に突破させるものだから。たとえ個人が10の魔力を生産できないとしても、レベルアップすればその生産力は15となり、レベルアップのために消費した命は、また生まれる。そして英雄として召喚された者をレベルアップさせ、いずれ機が熟せばそれを刈り取る。



 さらに"神"はあることに気づいていた。レベルアップのほかに限界を突破する手段を。それこそが感情の発露だと気づいた時、テリブル は誕生した。英雄はその生涯を終える今際の際、様々な感情を抱く。ある者は「嫉妬」ある者は「物欲」ある者は「色欲」ある者は「貪食、怒り、高慢、怠惰」.......。その感情をトリガーにしさらなる魔力を収集した結果、その残留思念のみが世界に残った。それこそが「厄災」の正体。



『だが当然ながら、それを成立させるためにはこの世界そのものを作り変える必要がある。だってそうだろう? たとえば君が元いた世界では、誰かが誰かを殺したとしてレベルアップなんてしないのだから。だからこそ"神"は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それを聞いてカナタは弾かれたように声を上げた。

「おい! 今なんて言った!」



『レベルアップのシステムを"神"は創った、と。まあもちろんそれだけじゃない、この世界におけるステータスプレート、経験値.....そういったのはすべて後付け要素だよ。"神"がとある目的を果たすためのね』



 この世界に召喚されてからずっとカナタが抱いていた違和感。それらは全て『ある目的のためのシステムだ』と青年は語る。



『だからこそこの世界は、何度も創造と破壊を繰り返している』



「私は【俯瞰(ふかん)眼】で見ましたーーこの世界がいきなり始まり、それ以前はいきなり終わっているのを」

 答えたのはイオナだ。カナタと手を繋いだまま、イオナは過去の自分の経験を思い出しながら言った。すると青年が首肯する。



世界の破(ワールド・)壊と創造(フォーマット)。英雄召喚で()んだ者たちを魔力に変換するための世界消去。そして世界創造によって新たなシステムの構築。もちろん、世界創造で創られた世界は、ある程度の文明が発展した状態となっている。単細胞の生物しかいないんじゃ、魔力の回収も何もないからね』

 いつもカナタにそうするように「......です、です」と相槌を打つイオナ。だが聞かされた話の荒唐無稽さに、その語気は戸惑いを含んでいた。


 

 それを理解しているのか、カナタはイオナを安心させるようにその頭に優しく手を置いた。

「ーー大体の話はわかった。だがもうひとつ、聞かせろ」

 カナタは気づいていた。赤髪の青年の穏やかな表情が、ある言葉を口にするときだけひどく歪むのを。だからこそ聞かずにはいられなかった、その正体について。



「そんなことが出来るこの世界の"神"ってのは、一体何者なんだ?」

 瞬間、またもや青年の顔が"怒り"に歪む。



『この世界を救った英雄。ーーそして世界の破(ワールド・)壊と創造(フォーマット)を繰り返している』





『オリガ』 




 憤怒のアルビオンを彷彿とさせるその感情を湛えたまま、憎きその名を告げた。







本日もお読みいただきましてありがとうございます!

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