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第33話 激闘の果てに

 浮かび上がった刀がーー駆ける。紅の軌跡を描き、巨人へと殺到。

 空を切る甲高い音と、着弾し弾けるような爆音に神殿内が包まれた。



「【代償執行(ガテンツァ)】」

 駆けたのは血刀だけではない。打ち出すと同時に、カナタは自らの掌をデミウルゴスで貫くやいなや、みずからも駆け出しのだ。

 絨毯爆撃のように血刀が打ち出されるなか、カナタはそれらを避けながら巨人を薙ぐ。



 一体どれほどの血刀をその身に受けたのだろうか。突如巨人がその口腔を天へと向け、()える。

「ーーッツガァア!!」

 瞬間、巨人の身体から生じる黒炎がひと際その勢いを増した。あまりの熱量に床は溶解し、熱波が周囲を駆け巡る。

「⁉︎」

 血液の沸点は水と同等。いかなカナタの能力によってその形態を変化させたとしても、その本質は変わらない。結果、今まさに巨人へと着弾しようとしていた血刀が蒸発し、朱色の蒸気になって霧散する。だがーー



「ーー氷剣・スカディの雪華」

 歌魔法の詠唱を終えたイオナが、ふたたびその名を紡ぐ。すると再び血刀が巨人へと着弾した。



「無駄です。私たちは2人でーー最強なのです」



 イオナが歌魔法によって熱を相殺したのだ。カナタの血液を冷気によって凝固させるとともに、巨人の足元に煌めく魔法陣からは氷の華が咲き始める。

 その氷炎の狭間をかけていたカナタが、双剣を振り抜きながら巨人の背後へと降り立った。すると無数の斬撃が巨人の体を切り裂いた。次いで、すぐさま双剣を重ね合せるとそれは一本の(じょう)へと変化する。カナタの身長を優に超えるそれを振りあおぐと、その先端から鋭利な刃物が出現。鎌だ。



 カナタは大きく鎌を振りかぶると、ためらうことなく一閃。ただそれだけで、巨人の両足が切断された。



「ああーー絶対最強だ」

 


 倒れ伏した巨人を覆い尽くすように氷の天蓋(てんがい)が降りる。そしてカナタは気づいたのだ。切断した足が再生していないことを。終末が近いことを。

 すぐさまバックステップで退くカナタを追うように、巨人は手だけで這い寄る。

「オリィッッィイィイーーガアァ!」

 そして、その目に宿る赫怒(かくど)の、忿怒(ふんぬ)の炎はまったく衰えることは、ない。



 カナタはわずかに瞼を下げるもそれは一瞬。すぐさま確と巨人の目を見つめデミウルゴスを強く握りしめた。巨鎌が変形する。刃が直立したかに見えた刹那、それは3度ほど折り畳まれそのサイズを縮小。それは瞬きの間に、槍へと変形した。

「ーー悪りぃな。お前にも許せない何かがあるように、オレにもあるんだ」



 言ってカナタは自らの左の親指と薬指の基節骨(きせつこつ)を噛み砕く。そして大きく振りかぶり、続けた。



「恨みたければ、恨め。それでもオレは為すべきことを為す」



 そして巨人の顔面が、氷に覆い尽くされる。その額に向けて、カナタは腕を振り抜く。

 音が聞こえたのは全てが終わってからだ。

 槍となったデミルウゴスを投擲し、それが巨人の頭部を身体を貫き、爆ぜる。風を切る投擲音、身体を貫く破壊音をイオナが耳にしたその時には、巨人は無数の氷の破片になって砕け散っていた。

 


 そう巨人は砕け散ったのだ。もう怒りに吠える大音声はない、怒りに燃える黒炎もない。

 だからこそイオナはもちろんのこと、カナタも驚きにその目を見開いていた。

 巨人がいたその場所に、誰かが佇んでいたことに。



 それは青年だった。年はカナタと同じぐらいか、少し下。ほのかに赤みがかった髪が、先ほどの衝撃を受けてかすこしばかり揺れている。



「お前はーー何者だ?」

本日もお読みいただきましてありがとうございました!


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