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第29話 無間の終着

「......もう大丈夫なのか?」

 イオナを抱きしめ、かばうようにうずくまっていたカナタが顔を上げる。

 先ほどとは打って変わって室内を包むのは静寂のみ。部屋のそこここが崩壊していたり、炭化している獣像の残骸らしきものだけが、ここが先刻と同じ部屋であるということを物語っていた。


「おい、イオナ。ケガはないか?」

 カナタに抱かれていたイオナは、その目をパチクリとさせカナタを見つめたまま。痺れを切らしたカナタは続ける。

「まったく。あんな高威力な魔法なら先に教えておいてくれ。危うくオレもお前も丸焦げになるところだ」


「あ、あの......」

「なんだ?」

「魔法で生み出した現象は術者には及ぶことはありません。もちろん、カナタ様にも作用しないように術式を構築していましたから......」

「.......」


 カナタは魔法陣から紫電が疾るのを見た瞬間、危険だと思いイオナを庇った。だがその必要は全くなかったということである。つまりはカナタの独り相撲であった。

「それも違和感だ。都合が良すぎる」

「ですです」

 カナタの言葉はいわば照れ隠し。それを理解しているイオナだからこそ追求するわけでもなく、ただの相槌を打つ。 

 「ともかく、先を急ぐぞ」そうカナタが呟き、はるか向こうを指差す「目指すは、あの扉だ」


    ● ● ●


 さらなる石像の強襲を警戒していたカナタだったがそれは杞憂に終わり、巨大な扉を開いた。


 回廊。洞窟。迷宮。そして博物館のような光景と様々な様相を呈していた無間(むけん)牢獄ではあるが、その部屋は言うなれば神殿。等間隔に立ち並ぶ柱と、そして祭壇のようにも見える内陣。図らずもその光景に、カナタは召喚された間際に見た場所を思い出していた。


「今のオレからすると、ありがたくもなにもないな」

 そう吐き出し、カナタとイオナは神殿内に足を踏み入れる。するとーー


「なっ⁉︎」

 今まさに入ってきた扉はひとりでに閉じられる。すぐさま開け放とうするカナタだが、その扉は固く閉じられたまま。まるで、決して誰も逃さない、そう扉が物語るかのように。

 だがそれは。ここには何かがある、その裏返しに他ならない。


「まあいい。早々にここを調べるぞ、イオーー」

「カナタ様。ここは.......危険です」

 カナタの言葉を遮ったのは、わずかに震えるイオナの声だった。見れば、その顔面は蒼白となり、視線はたった一点に注がれている。


「あの『棺』が.......どうか、したのか?」

 その視線を追ったカナタは、彼女が見つめる棺を眺め問いかけた。

 

 それは石棺。

 内陣に備えるように安置されているそれには、装飾などは一切施されていない。だがなぜだろうか。それにはえも言えぬ存在感が、あった。

 生唾をごくりと飲み込んだイオナが、つぶやく。

「あれが何かは今の私にはわかりません。ですが、カナタ様。あれは.......あれは」


 ーー憤怒


 イオナの体の震えは、一語一句を紡ぐごとに大きくなる

「あの棺からは、とてつもない怒りを感じるの、です」


 直後、石棺が大きく胎動した。

 ドクンと。棺そのものが心臓であるかのように、大きく跳ねたのだ。それによって棺の蓋がズレ、生じた隙間から闇そのものと思われるような、ドス暗い瘴気が流れ出す。


 その光景を目の当たりにしたイオナは、幼子がそうするように、恐怖から逃れるようにカナタの袖をその手で引いた。そして呟くのだ「逃げましょう」と。だがーー

「カナタさーーうきゅ⁉︎」

 イオナの震えは、カナタのデコピンによって止まった。


「カナタ、様?」

「あのな、イオナ。さっきの言葉をもう忘れたのか?」



 ーーカナタ様をお守りすることができるのです

 ーーイオナ、今度こそ絶対にオレが守り抜く



「オレがイオナを守る。そしてイオナがオレを守る」

 赤らんだ額を押さえたイオナの視線が、カナタの視線とまっすぐに交差する。そして、それと同じくらいまっすぐな言葉でカナタは告げた。


「かつて果たせなかったオレだからこそ、これからは絶対に果たす。イオナ、()()()()()()。オレも、()()()()()()

「っーー⁉︎」

 

 安堵か喜びか。自身の中で生まれた感情を、イオナはまだ言葉に表すことはできない。否。今それを表している場合ではない。


 棺の胎動が目に見えて大きくなる。今やその棺だけでなく、神殿全体が震えているのかのような、振動。まさにこの時、何かが棺より生まれ出でようとしている。


「カナタ様。.......はい。はい! なのです!」

 そしてカナタは何も告げることなく、頷く。イオナにはそれが何よりもうれしかった。カナタは、自分を信じてくれている、背中を預けてくれている。それだけで、身体中に力が溢れてくるーー!


「行くぞイオナ。()()()()()()()()

 宣言をするように、カナタはそう呟いた。瞬間、石棺が音を立てて砕けちった。

 




 そして石棺の中にあったもの(憤怒)がとき放たれた。

遅くなってしまいすみません.....。

少し仕事が忙しくなりそうなのですが、なるべく毎日更新に努めるようにいたします!

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