第13話 人間としての異世界生活が、今始まる!
いつまでも感慨にふけっている場合じゃないね。私は早速作り立ての剣を右手で持ち上げる。
「あ、あれ? なんか、重い? でも、両手で持てば大丈夫かな」
そして私は正面に剣を構える。剣道なんかの経験はゼロだけど、剣道部だった友達もいたし、なにより、時代劇やアニメ、漫画なんかで、私は剣をたくさん見てきた。見よ私の剣裁きを!
私は剣を頭上高く持ち上げ。
「や!」
気合の掛け声と同時に、思いっきり振り下ろす。
どか!
振り下ろした剣は、地面に当たって止まる。
「あ、地面に思いっきり叩きつけちゃった」
私はすぐさま剣が無事か確認する。ちょっと焦ったけど、私お手製の剣は、地面の強度にも負けず、ちょっと汚れただけで無事だった。
「良かった~。全然平気だった。あれ? そういえば素振りって、地面に当たってもいいんだっけ?」
う~ん、剣道部の友達のことを思い出す。床に叩きつけてなかった気がする。きっとあれは、地面を叩くと剣が壊れるからだろうね。猫ボディの魔法で作った私の剣なら何回地面を叩いてもきっと壊れないから問題ない。でも、この強度と鋭さなら、案外人間ボディでも獲物を仕留められるかもしれないね!
「そだ、鞘がないや。鞘も作らないと、敵を切る前に私が切れちゃうね。材料がわかんないけど、さっきの余りの金属で作ればいいよね?」
ぽふん!
私は再度猫ボディになると、剣にぴったりの鞘を作り出す。まっさらの鞘だと物足りないので、鞘の表面にはエンボス加工みたいなかんじで、猫の手形模様を付ける。剣の土を落として、サイコキネシスで鞘に入れる。凄い、ピッタリだ。
それじゃ、あとはバッグを作るために、ウサギ狩りかな。そういえば、ウサギの皮って皮製品になるの? ダメだね、考えてもわからない。あのウサギは大きいし、モンスターだからたぶん大丈夫だと思う。
私は早速ウサギ狩りに出かける。私の優秀な猫イヤーは、容易くウサギの位置を補足した。そして、一気に襲って一気に仕留める!
ふっふっふ、もはや狩りは私のお家芸だね。
では早速、皮を剥いで、頭の角も回収する。確かアオイが角が高いって言っていたからね。
そして、じゃっじゃじゃ~ん。塩胡椒アンドミックススパイス~!
ううう、これで生肉生活ともお別れだね。でも、なんでか生肉は生肉で美味しそうに見えるんだよね。よし、3分の1生で食べて、3分の1塩胡椒で、そして3分の1ミックススパイスで食べよう。
私は生肉を咥えながら、火魔法でお肉を焼いていく。焼き加減は、ミディアムレアくらいがいいかな。ううん、生でもこんなに美味しいんだもん。もっとこう、レアとか、レアよりもっとレアな、何とかっていう焼き加減でいいね。ついさっきまで生きてたから、程よくあったかいし。
私は生肉をぺろりとたいらげると、軽く焼いたお肉にかぶりつく。っとダメだ。その前に塩胡椒だ。
うん、これだねこれ! 生肉も悪くないけど、やっぱり塩胡椒があると全然違う!
それでその次は、料理長厳選のミックススパイス! これをぱらぱらとふりかけてっと。
おお~! これはこれですっごく美味しい! 塩胡椒とミックススパイス、うう~ん、甲乙つけがたいね。
相変わらず私よりもはるかにでっかい獲物だったけど、私はペロリとたいらげる。
さ、拠点に帰ってバッグを作らないとね。
バッグ~バッグ~バグバッグ~。
問題はデザインだね。そもそもポーションの瓶を10本は入れないとだから、容量の小さいものはダメだ。ある程度大きさが必須だ。そもそもポーションの瓶をそのまま入れて割れるのも嫌だから、ポーションを個別に入れれる箱が必要なのかな? あれ? そうなるとバッグよりも富山の薬売りみたいに、箱を背負ったほうがいいの?
でも、箱は持ちにくいし、そうだ、魔法のカバンを作ろう。イージーにゃんこライフ魔法ならきっとできるはずだ。ううん、油断は禁物だ。そもそも人間ボディで魔法のカバンって使えるの?
ぽふん!
私は疑問を解消するために、人間ボディで魔法のカバンを使おうとする。すると、案の定全く使えなかった。
「ううう、人間ボディだと魔法のカバンすら使えないなんて。キジトラさん、私いつか泣くよ?」
ぽふん!
はあ、どうしよう。そうだ、そもそもポーションの瓶って、ガラスみたいに脆いのかな? 軍人さんやハンターさんが持ち歩くって書いてあったし、だとしたらそんなに簡単に割れないよね。私の猫ヘッドにインプットした図書館知識を頑張って引き出す。うん、簡単に割れないみたい。なら、普通に皮のバッグを作ればいいよね。荷物運びに便利なのはトートバッグなんだけど、トートバッグは、なで肩の私には使いにくいから、普通のショルダーバッグにしよっと。
私は魔力をにゃおんとかける。あれ、なんかいまいちだ。私の猫としての本能が、何か足りないと言っている。そっか、金属が無いんだ。私は剣と鞘を作ったあまりの金属を持って来て一緒に魔力を流す。すると、ウサギ皮から勝手に毛が抜け落ち、ちょっと大きなショルダーバッグが出来上がった。うん、可愛い!
ぽふん!
私は人間ボディになると、早速着替える。キジトラ柄の迷彩服を脱いで、早速さっき作った服に着替える。あ、キジトラ柄の迷彩服には、キジトラ柄の下着もセットだったからね! 流石にインナーはキジトラ柄でもいいよね。この下着、かなりいいやつっぽいし。
そして、ズボンをはいて気が付いた。ベルトがない。
ぽふん!
私はすぐさま猫ボディになると、ウサギの皮と金属でささっとベルトを作る。
ぽふん!
今度こそ大丈夫だ。っていうか、あれ? さっき脱いで、そこにたたんでおいたキジトラ柄の迷彩服をなんでか着てる。これ、もしかして猫ボディになるときどこかに勝手に消えて、人間ボディになるときに勝手に出てくるのかな。
私はもう一度キジトラ柄の迷彩服を脱いで、今度こそ自作の服を着る。そして、自作のショルダーバッグをかけ、その中に、ポーションの瓶を10本入れる。更に、剣を腰のベルトにぐりっと差せば、完成! 私、異世界バージョン!
「って思ったんだけど、剣が長すぎて、先っぽが地面に当たっちゃうね。よし、ここは斜めに背負うことにしよう」
私はぽふん! っと猫の姿に戻ると、服に埋もれる。それと同時に、バッグも地面に落ちる。まずい! ポーションの瓶が割れてるかも! 私は急いで服から這い出して、すぐさまポーションの瓶を確認する。流石頑丈な瓶だね。なんともないみたいだ。
よし、ウサギの皮で紐を作ろう。鞘の上と下に、金属で紐を結ぶところを新たにくっつける。後は紐を結び付けて、完成だね。そして、ぽふん! っと人間ボディにもどる。
「これ、毎回着替えないといけないのはちょっと面倒だね」
今一度きちんと着替えをする。今度こそ完全に大丈夫だ。どこからどう見てもこの世界の薬売りの少女だ!
今はまだお昼にもなってないし、街を目指そうかな。人間としての異世界生活が、今始まる! って感じだね!