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暗闇の中で。一日目。

僕の両親は、交易を生業にして、街から町へと移動しながら物を売買を行う交易商だった。

 町と街を繋ぐ仕事に、父も母も誇りを持っていた。


「父さん達は、物を売買することで、人を助けるお仕事をしてるんだ。」

 それが父の口癖だった。

「そうね。」

 父がその口癖を言えば、母は笑いながら、そう応えていた。


 厳しく、優しい。それが父だった。

 温かくて、優しい。それが母だった。


 僕にとっての両親は、そんな二人で。

 かけがえの無い存在だった。


 そんな二人を見捨てたのは、誰だ?

 取り繕うのが上手くなったな?

 いつも通りの、虚言か?


 そんな声が聞こえる。

 僕の耳が音を拾ったわけじゃない。

 分かってる。


 これは、僕の声だ。

 僕の心の声だ。


 図太いなぁ?

 両親が殺されても、何も感じて無いのかぁ?

 お前が努力してればこんな事にならなかったのになぁ?


 うるさい。


ヒャハハ。

 キャハ。

キヒヒ。

 ウヒャヒャ。


 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!!!!!


 そうやって、耳を塞いでも意味なんてないぞ?

 そうなんだぞ。

 "私"はお前。

 逃げ出したお前が”俺”だ。


 分かってるんだ!

 そんな事。

 僕は逃げ出したんだ。

 何もかもから。


 “また”逃げたんだろ?

 何度やり直しても、変わらない。

 お前は、そういう人間だ。


 あぁ。お前の言う通りだ。

 僕は、いつも逃げてきた。

 前世からも、今世だって。


 良いじゃないか?

 人間らしい。

 楽をする為に、逃げ続ける。

 実に人間らしい。


 人間らしい?


 ああ、そうだとも。

 罪悪感なんて物を振りかざしたところで、所詮は人間だ。

 自分の事で頭が一杯になってしまう。


 僕は。


 良いじゃないか。

 逃げて、逃げて、逃げてきた。

 そんなお前は、こうして暗闇の中で蹲ってればいい。

 ここは闇だ。

 何も無い。

 在るのは、お前だけだ。

 闇は、ずっと一緒だ。


 僕は…。


 安心しな。

 ここには、何も無い。

 闇だ。

 逃げる必要なんて無い。


 ……。


 さぁ、眠ってしまいな。

 ここでは、何もしなくて良い。

 安らかに。

 考えずに。

 何も気にせずに。


 …。


 お前は、ここでずっと眠っていればいい。



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