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狂人の話

 暗い。そこはただ暗い場所だった。

 そこに届くのは、人の声が奏でるざわめきだけであった。光の届かないそこには、沢山の檻が置かれていた。


 その檻の中には、獣の特徴を持った獣人、耳の長いエルフ、髭面のドワーフ、魔物と呼ばれる化け物まで、様々な“モノ”が一つの檻に“一つ”づつ入っていた。


 暗闇は、幕が上がることで終わりを告げた。

 幕に覆われた檀上と、幕によって遮られていた客は次と次と並べられる“商品”に思い思いの値段を付けていく。


 主催者だと思われる檀上に立っている唯一の“人”は、最も高い値段を提示した客に、商品を受け渡す準備を、裏の人間達に指示を飛ばす。会場は熱気が溢れんばかりに、膨れ続けていく。


 膨れていく熱気は壇上の男の終了の言葉で、急激にしぼんだ。

 そして客は、自らが競り落とした商品を主催者側から受け取り、帰路に着いていった。


△△△

 ここは、王都の一角の屋敷。

 その地下にも、一つの商品が運び込まれてきた。


「んーーーーー?!?!?!?」

 地下は異様な光景だった。


 今日入荷した商品と同じ境遇の商品達が、別々の牢屋のような場所に閉じ込めれ、鎖に繋がれているのだ。

 鎖は、首、四肢の手首足首を拘束し、商品達は地下に光が入る度に、くぐもった叫びをあげる。


 よく見れば、商品達の口も拘束され、開きっぱなしの状態のままに固定されていた。


「あーーーー?!?!?!?」

 一つの商品元へ白衣の男が近づき、何かを飲ませると、閉ざされることを許されない喉を通り、商品の体が声にならない叫びをあげた。

「ふむ。これは、失敗か?いや死んではいないから、成功ではあるか…。ふむふむ。」

 白衣の男は何事か呟きながら、別の商品に同じ薬を飲ませていく。


 ある程度の商品に、同じ薬を飲ませて白衣の男は地下を後にした。

「どうでした、先生?」

 白衣の男が地下から上がってくると、全身黒づくめの青年がソファで寛ぎながら、そう尋ねた。

 その黒づくめの青年は、あの表情が解けた商人の青年だった。


「どうもこうも、今回も失敗かね。死にはしないけど、毒にも薬にもなりそうにない。」

「死にはしなくても、苦しむんだろ?なら、毒としては優秀だろ?」

「それがな、大量に摂取しないとダメみたいだから、毒としてはダメダメなんだよ。」

「それは、毒としてはあまり使い道がないな。」

「だろ?」

 男と青年は、軽い調子で会話を続ける。


「それで?君が来たってことは、今日は報酬の時期かい?」

「おいおい、先生。忘れていたのか?」

「いやー、実験に夢中で忘れてしまっていたよ。」

「はーこれだから、先生は…。」

「それで?今日は、どれの廃棄を請け負ってくれるんだい?」

「廃棄って…。まぁあながち間違ってないか。」


「でもありがたいよ。実験体の入荷を代わりに請け負ってくれて、その報酬が廃棄物の回収なんだから。本当に君は変わってるね~。」

「やれやれ、“は”じゃくて“も”だよ。先生も変わりもんだろ?」

「ふむ。私は変わってなんかないよ。ただ実験を繰り返している科学者なだけだ。」

「そこは嘘でも、医者って言ってくれ。」

 男と青年は、そんな会話を続けながら、男は青年に数枚の紙を渡した。


 その紙には、数字と地下の地図があり、地下の部屋には数字が割り当てられていた。

 部屋の数字には、赤い×が描かれている物もあった。

「じゃあ、5番で。」

 青年は、地図上で赤い×が描かれている5の数字を指さしながら、男にそう言った。

「ああ、確か簡単に壊れた奴だね。いいよ、行っておいで。」

「ありがとう。」

 そう言って、青年は地下へ降りて行った。

「おうおう、怖い怖い。私からしてみたら、君が恐ろしいよ。」

 男はおどけるように、青年が下りて行った階段を見つめながら、そうこぼした。


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