#001─救い
新シリーズ始めました。
この世界は理不尽なことが満ち溢れている
何もしていないのに離れて行く人間
何もしていないのに裏切る友人
何もしていないのに浴びせられる罵詈雑言
何もしていないのに振るわれる暴力
何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何もしていないのに何でこんな目に合わなければいけないのだ。
俺が何をしたって言うんだ
お前らに何か酷いことをしたか………
何もしてないだろ
なら何でこんなに酷いことを俺にするんだよ
なあ、誰か教えてくれよ………
俺がこんな目に合う理由を………
こうなった原因を………
俺が産まれてきた意味を………
俺がこの世界に生きる意味を………
俺がこの世界に居て良いって証を………
お願いだから誰か教えてくれよ
何もないって言うんだったら何で俺はこんな世界に産まれて来たんだよ
如何して誰も俺に手を差し伸べてくれないんだよ
如何して誰も俺の悲しみを解ってくれないんだよ
如何して皆俺にこんな仕打ちをするんだよ
こんな夢も希望も無い人生を送るくらいならもういっそ死んでしまいたい
早く死にたいだから………
誰か俺を殺してくれ
■■■
何時も通り、家に押しかけてきた連中に連れられて学校に行き上級生や下級生を問わずサンドバックの様に暴力を振るわれ、教師からは見て見ぬふりをされ、昼食代や遊ぶ為の金を寄越せと財布の中身を全て奪われ、周囲からは優しい言葉を掛けらる事はなく、まるで汚物でも見るかのような目で罵詈雑言を浴びせられ、家に帰る。
こんな最悪で自殺したくなるような代わり映えのしない生活がいつまでも続くと思っていた。
いつものように自殺する勇気も持てず翌日に備えて就寝して、いつも通りの明日が来る……はずだった。
目が覚めると目に入って来たのは知らない天井だった。 此処が何処かを確かめる為に周りを見てみようとしたが、体が思う通りに動かないのだ。
寝返りを打ち目の前にある柵に捕まりながら部屋の内装を見てみると姿見がある、其処に映っていたのはベビーベッドの柵を捕んでこちらを見ている赤ん坊の姿だった。
もしかしてこの赤ん坊は俺か?
体を動かしてみると鏡の中の赤ん坊も同じ様に動く。
本当に赤ん坊になってしまった様だ、だがどうしてだ。 思い当たる節が無い。
異世界物の漫画や小説でよくある死んだら転生しました的な何かなのか?
だとしても死んだ覚えがない、いつも通り死にたいと思いながら就寝したが自殺はしていない筈だ。と言うよりもそんな勇気があればとっくに自殺している。
幾ら考えても真実に辿り着く事が出来そうも無いので一旦死因については後回しだ。
まずは此処がどんな世界か確かめる必要があるのだが、赤ん坊の体になってしまったせいか思う様に動けないのだ。
どうにかして情報を集められないかと考えているとメイドの格好をした女性と2~3歳ぐらいの少女が入って来た。
「カイル様お目覚めになられたのですね」
「あえ」
まだ発声器官が発達していないのか上手く言葉が出せない。
「カイルがしゃべったー」
「そうですね、喋りましたね。 エイミー様、今お茶を御用意しますね」
そう言ってメイドは部屋を出て行った。
その間もエイミーと呼ばれていた女の子は俺に話しかけていたが、眠気に抗えず聞き取る事が出来なかった。
ただ一つだけ分かることは、俺はこの日確かに救われたのだ。