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伯奈ーきょうみー  作者: 藤泉都理
第1部
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4.ツクシ : え?

 花欠乏症だったのだ。

 決して、断じて。七菜子…、さんに屈したわけではない。



 久方ぶりの再会なのだから今夜は飲み明かそうじゃないの~。との誘いで、その言葉通りに一晩を過ごした事(無論、舞子にはその旨を伝えるべく電話した)に加えて、翌日、月曜日の店の仕事を終えたひびなは今、己が当分住む事になるであろう舞子の自宅兼店へと続く街灯に照らされる道中を一歩、いっぽ、と足取り重くしながら歩み続ける中、冷静になっていく頭が後悔とそうなった要因への言い訳を次々と打ち出していた。


 

 何故、花屋と言われて即座に女神が思い浮かばなかったのか。

 あんなにも会うまい、会うまいと、警戒して花屋には近づかなかったのに。

 警戒し過ぎた挙句、地獄にまで里帰りする羽目に遭ったというに。

 否、別段それだけが原因で戻ったわけでもないが、それは置いておき。

 何故かと問えば、舞子が発した花屋からは女神の気配が微塵も窺えなかったからだ。

 

 何故、これからよろしくと酒の席にて花屋で共に働く事への合意を求められた時に、辞退しなかったのか。

 いやそれは、花欠乏症だったのだ。そう、決して七菜子、さんに屈したわけではない。離れ難かった。永住してもいい。いや、それはやはり遠慮被る。正が生まれても同等の負で打ち消される。ああ、しかし現状を考えるに、疲弊の方が大きいか。ああ、しかし、あの幸福感満ちる魅力的な空間で過ごせれば俺は……いや。



(その為に、俺は女神を目指しているというに。目先に惑わされてどうする)


 疲れて、いたのだ。

 舞子にも、七菜子、さんにも、甘え(釈然としないがきっと)ようと、したのは。


 原因を究明、決意も新たにすれば、自然、足取りは軽くなる。

 そうして辿り着いた店。扉を開けようとしたひびなであったが、ふと、今日が平日で会った事を思い出した。二重人格の舞子のもう一人の人格が現れる日だ。


「躊躇う必要が何処にある」


 鼻で笑い、扉を押して迎えられたのは淡く照らされた店内。その先を進めば扉があり、丸い取っ手を回せば簡単に開く。鍵を閉められてない事に僅かに安堵しながら、左側の洗面台のある小さな部屋で手洗いうがいをして(花屋に行く前に舞子が一通り家の説明してくれており、そして、ひびなと別れてから必要な物を用意して置いておいてくれたのだろう。コップとハブラシに名前が書かれている)目前にある階段を上り始め。


 二十段ある階段の半分に差しかかろうとしたところで、足が止まり。


「え?」


 何だ、との文字は頭の中だけで浮かび、音として出たのはその一文字分だけであった。




ツクシ:向上心、意外、驚き

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