〝ひまつぶし〟
――またいつか。
その、透き通った声を最後に聴いたのはいつだっただろうか。
「さあさ、ニンゲンは一人で勝手に遊んでいるから退屈なんだよ。少し話し相手になってくれないかい?」
「ちぇっ、そうかい。だんまりかい。君だって無性に寂しくなって話し相手が欲しくなる時もあるろうに。」
「それとも僕が拗ねても可愛くない?綺羅のように潤ませた大きな瞳で上目遣いで頼めばいいのかな?」
「あ、でもこの小説は挿絵がないんだよな。君が想う可愛い可愛い女の子を想像してくれれば僕の頼みも通るだろう?」
「コイツ、誰と話してるんだ?って思った君さ。そう、画面の前の君。」
「PCを起動して、ブラウザを開いて、〝小説家になろう〟とかいうサイトを開いて、メジャーな異世界転生とかチートとか俺TUEEEEEEとかハーレムを読めばいいのに敢えて名が売れてもないこの小説を読んでいる君。」
「僕の事を偶にメタいと思っただろう?違うよ。僕は君らの言う神様だぜ?」
「君のいる次元の世界の上から下まで全てを識っているとも。超メタメタさ。」
「そんなのは不可能?こいつ馬鹿?それがそうではないんだな。何故なら――」
「そういう設定だからだ。」
「さてはこいつイタい作者だなぁと思った?こいつ厨二病こじらせてやがる…とか。」
「厨二病かは解らないけど、キチガイなのは確かだろう。」
「実際、君らのいる場所にメタな奴なんて存在しないからね。」
「考えたことがあるかい?」
「君の住む世界が〝惑星をつくろう〟っていうサイト上のインクの染みかもしれないということを。」
「自分の力で努力して人生を勝ち取ってきた君は作家のマリオネットだったのかもしれないと。」
「そう考えると、馬鹿馬鹿しくなってくるだろう。馬鹿馬鹿しくなっている様子も作者が描写していると思うと更に萎える。」
「全てを否定されたような、奪われたような気分になる。」
「人間っていうのはプライドが高い生き物だ。愚かなほどにね。」
「成績を、学歴を問うては本質を見極めない。」
「そういう時は作者に頼みたくなるよな。」
「僕の設定を変えて下さいってね。」
「あはははははははははははははははは。」
「今少しでも設定を変えて下さいと願ったそこの君。」
「馬鹿だなあ。」
「神様なんて都合のいいものを信じるのは人間だけさ。」
「自分にできないから他人に願う。それは至極当然の行動だ。」
「どの生物だってやってる。」
「人間だけは〝別の存在〟に託す。それこそ観測できない作者のような。」
「僕は人間の唯一の取り柄は〝想像〟できることだと思うんだ。」
「存在もしない存在を在るかもしれないと思い込むことができる。」
「起きもしない事象を起こるかもしれないと期待することができる。」
「すげえことだよ。」
「僕は素直に尊敬する。僕には絶対にできない事だから。」
「僕のながーーい独り言は取り敢えずこれにてお終い。次話からはニンゲンの活躍を期待しててくれ。」
カミサマはそっと目を閉じた。