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できれば、ダンジョン内に風呂も

 方針が決まれば、あとは実行あるのみである。


 拠点作成ギフトで、司令部のある新宿まで、地下通路を延ばしていく……シオンのMP残量が心配だったが、元々この子は肉弾戦タイプではなく、間接的な攻撃や支援を得意とするギフトの持ち主らしく、MPは五千を超えていた。


 体力も二千ちょっとくらいはあり、バランスが悪いとはいえ、そうそう低い体力値ではないだろう。


 俺の場合は数値化したデータなどわからないので、比較はできないが。






「おにいちゃん、地下何メートルくらいで設定しようか?」


 ショッピングセンターの地下倉庫にて、シオンは張り切って尋ねた。

 すでに眼前には、拠点作成で使う半透明のボードが出ている。


「そうだなあ……深ければ深いほど、見つかりにくいだろう。東京で一番深いところにある駅が、地下鉄の六本木駅で、四十数メートルだとか聞いた覚えがある。せめて、それより深くできないかな?」

「やってみるね!」


 元気に返事すると、シオンは最初の地下通路を作った時のように、サクサク始めた。

 まず、先に作ってあった一本道の地下通路に分岐を造り、そこからぐんぐんさらに地下へ下りていく。


 おおよそ七十メートルほど地下まで通路を延ばしてから、新宿方面へ向かうのだ。





「この、七十メートル地下までは、階段なのか?」


 俺はふと心配になって尋ねた。


「あ、そうだねっ。そんな深いところまで石段下りるのは、嫌だよね」


 ソファーに座ったシオンは笑顔で述べ、「エレベーター的なものを作ろう」と呟き、ボードに登録されたパーツのうちから、適当なエレベーターを選んだ。


 当然、このエレベーターも、シオンが前にどこかで見て、動きを理解したものだ。


 それだけの条件で、もう勝手に登録されてしまう。

 後は条件付けで、一番上の分岐通路からは下降のみ、一番下の到着通路では上昇のみと、条件を書き加える。 

 ついでに、念のために非常用の石段も追加していた。


 これで実際にその通りのものが地下に出来ていくのだから、便利というより、怖いものがある。もしかして、最強の支援ギフトじゃないのか、これ。


 その後は特に問題なく直進の地下通路を伸ばし始めたが、地上マップと重ね合わせて、たとえ方向が正しくても、たまに地下で妙な障害物に出会うことがあった。


 ただ、このボード上では、障害物の正体まではわからないという。





「シオンが作ったものじゃないのは、ボードに黒い影として映るだけなの」

「ふーん。まあ、ここまで深い地下に水道管やらガス管があるとは思えないし、単純に大きな岩が埋まってるのかも。障害は避ければいいさ」

「はぁい」


 可愛く返事したシオンは、その通りに迂回路を作り、後はまた進路を戻して通路を足していった。


「どこかで逃げ道を作っておく?」

「ああ、追っ手がかかった時のために?」

「うんっ」

「……シオンがいれば、地下でも同じく通路作成は可能なんだろ?」

「できる、できるよっ」


 シオンはきらきらした碧眼で、俺を見上げた。

 褒めてほしそうな顔だったので、俺は遠慮なく「シオンはすげーなーっ」と激賞してやった。実際、俺にはできないことだしな。


 ちなみにこの子は年齢が年齢のせいか、特に物怖じせずに、いつの間にか俺の膝の上に座っていて、俺はだいぶくすぐったい気分を味わっていた。


「そういうことなら、避難路はもっと通路を広げてからにしよう。今回の作戦で、万一にも追っ手がかかったら、シオンの力で通路の途中をカットして、追っ手を立ち往生させればいい」

「うふふ……はぁい!」


 自由自在に地下通路を構築するのが楽しくなってきたのか、シオンは笑いながら何度も頷いた。ただ、頭を撫でる俺の手が止まると、督促するように見上げるのが可愛い。

 もっと撫でて! と言わんばかりの目つきで。


 あそこじゃ大事にされるどころじゃなかったので、撫でられるのがよほど嬉しいらしい。


 作業は順調に進み、ついに司令部のある建物の地下室まで、通路を引っ張ることに成功した。まだ接続はしていないが、それは最後に行えばいいだろう。

 接続した後は、床に四角い出入り口用の穴が開いてしまうからな。


「そういや、これって酸素不足とかには、ならないのか?」

「中の空気はね、定期的に入れ替わる仕組みなのよ」


 シオンが自慢するでもなく教えてくれた。

 このギフトじゃシオンがスペシャリストなので、俺は疑うことなくその言葉を信じた。


「じゃあ、本当に地下の一大拠点も夢じゃないな。そのうち、でっかい風呂も作るか」

「お風呂ってなぁに?」


 きょとんと尋ねるシオンである。

 ……記憶喪失のせいか、それともそんな習慣はないのか、シャワーは知っていても、風呂は知らないらしい。


「知らないなら、入ってみるか? 作戦前の景気付けに?」


 俺が尋ねると、シオンが嬉しそうに頷いた。


「一度、シオンが見さえすれば、地下にも作れるようになるものねっ」


 おお、確かに!

 俺はシオンを拝みたい気分だった……最近は入れなかったが、実は風呂好きなので。

 


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