全てが、ダンジョンのパーツとなる
俺達は三日ほど休憩に当て、その間にこのショッピングセンターの地下倉庫へ至る経路を、完全に封鎖しておいた。
階段は俺のギフトで瓦礫を大量に運び入れ、びっちりと隙間なく埋めてしまった上、エレベーターシャフトにも瓦礫を入れて、地下へいけないようにした。どうせエレベーターの電源なんてとうに切れてるが、まあ念のためだ。
俺達自身はシオンの拠点作成で地下から通路を延ばしてどこでも行けるので、別に正規の入り口を封鎖しても、痛くも痒くもない。
そう、その地下通路だ。
俺はシオンにダンジョンを舞台にしたゲームのことを、冗談半分で教えてやったが……シオンがギフトで作成する石通路というのが、これがもうダンジョンそのものなのだな。
いや、多分湿気が多くて不潔な本物のダンジョンより、シオンのギフトで作る通路の方が、百倍も快適だろう。
足元は白と黒の石板で構成されたモザイク柄で、歩きやすい上にゴミ一つない。
しかも、特に松明などの明かりもないのに、ちゃんと十メートル程度の先を見通せる程度には明るい……まっ暗じゃないのだ。
俺は、早速シオンにギフトを使ってもらい、現拠点である、ショッピングセンターの地下室に直結する、通路を作ってもらった。
お試しとして、ひとまず隠れ家の出口を作ったわけだ。
出口は、近くにこれも閉鎖された中学があったので、そこの職員室に放置された、一番端っこの机の下に作った。
とはいえ、このままだと四角い穴が丸見えなので、その上に板切れを置き、さらに上に敷布を敷いてごまかしておく。
どうせ机の下だし、こんなところ、学校に侵入した奴がいても、覗きはすまい。
ここまでの作業が、わずか半時間ほどで済んでしまった。
シオンのギフトは、半透明の黒板みたいなボードに、この子の「かつて見たことのある」パーツを足して置いていくだけなので、実に手早く簡単である。
MP消費には気をつける必要があるけれど、この子がいれば重機とか無用の長物だろう。
なにより最大の利点は、シオンが一度でも実際に見たものは、よほど難しい構造のものでもない限り、この拠点作成ギフトで使えるようになってしまう、というところだ。
必要なのは、たとえばエレベーターを見たシオンが、「この機械は箱みたいなケージに乗って、上下の階を行き来するもの」と理解することだけ。
大まかな構造とその働きを知ることで、たちまち拠点作成の材料として、密かに登録され、あのボードに使用可能なパーツの一つとして表示される。
……便利過ぎて羨ましいほどだな。
「これで、この通路内を徘徊して、侵入者を倒すようなモンスターでもいれば、完璧だなあ」
廃校までを往復して帰る途中の通路内で、おれはつい感心して呟いてしまった。
すると、シオンが「あっ」と声を上げた。
「どうした?」
「思いだしたのっ」
シオンが碧眼を輝かせて俺の手を引っ張る。
「あのね、帝国の司令部の金庫に、ホムンクルス作成の秘密が保管されているって、監視の兵隊が言ってた。ええと、仲間同士の雑談? で」
「ホムンクルス作成……合成の秘密でもあるのかな」
俺は真剣に呟いた。
もっと以前なら笑うところだが、日本の常識は異世界の帝国には通じない。
あの世界には魔獣やモンスターの類いがざくざくいるし、これこの通り、信じ難いようなギフトという名の異能力だってある。
ならば、ホムンクルスくらいいたって、全然不思議ではないだろう。
「制作者には絶対に服従だから、女性ホムンクルスが欲しいって言ってたのよ」
「むむっ」
そりゃ、目的が見え透いているな……と思ったが、もちろん俺は口には出さなかった。
無邪気な瞳で語るシオンを見れば、この子はよくわからずにそのまま伝えている気がするので。おもちゃのフィギュアと同様に考えているかもしれない。
「仮にシオンの自家製通路の自動防衛に向いてなくても、二人軍隊の俺達としては、手下が増えると助かるな」
「とつげき兵だねっ」
どこで聞いたのか、シオンが帝国の実在する部隊を口にする。
「そう、そういうこと」
少し考え、俺はニヤッと笑った。
「よし、手始めの仕事は、それで行くか?」
「ホムンクルスの秘密をうばう?」
「そうそう。司令部まで通路を延ばすのが面倒だろうけど、侵入すること自体は、シオンの力で楽勝だしな。あとは俺がやるよ」
「シオンもいっしょに行くもんっ」
「わかったわかった。俺達は同志だもんな」
俺は逆らわず、笑顔でシオンの頭を撫でてやった。
なぜかこうすると、この子はひどく幸せそうに笑ってくれるのだ。




