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二人軍隊継続

 エレベーターに乗る際、俺は金庫も引き寄せて、無理に中へ入れた。

 ギリギリ入った瞬間、扉が閉まり、下降が始まる。

 三人揃って、ほっと息を吐いた。



「おにいちゃん……その人は?」


 シオンが今気付いたような顔で俺の背中に隠れたので、俺は優しく教えてやった。


「捕虜として連行されてた人だ。……どこかで外へ出してあげないとな」

「あ、あの……その前に」


 まだ名前も知らない女性が思いきったように顔を上げた。

 それまでは、拠点作成スキルを使っての豪快な脱出に、声もなかったのだ。


「貴方達二人に相談があるんだけど」

「想像はつくけど……どうかな?」


 開いたゲージから降りつつ、俺は肩をすくめた。






 俺はわざと彼女を、俺達のねぐらである廃百貨店の地下に連れていかなかった。

 代わりにシオンに頼んで、ダンジョン通路の一箇所を広場のような空間にチェンジしてもらい、そこで話し合いの場を持つことにした。

 もちろん、ちゃんと床の一部をせり上げて、椅子代わりとしている。


 レジスタンスの女性は島崎恵子という名前らしく、リーダーの下で戦う、指揮官の一人だという。彼女の相談とは、俺が予想した通り、「ぜひレジスタンスで一緒に戦って!」だった。

 そういう申し出があるだろうと、思った通りである。




「貴方達二人の力があれば、きっとあたし達レジスタンスの勝利も、夢物語じゃなくなるわっ。目的こそ多少のズレはあるけど、共闘できるはずっ」


 俺達がなぜ帝国と戦っているかを聞いた上で、彼女――島崎さんはそう申し出た。

 俺の力はもちろん、シオンの拠点作成スキルの豪快さを見て、すっかり興奮したらしい。まあ、無理もないだろう。

 特にシオンのギフトは、戦うには便利すぎる気がする。


 実は俺の結論は話を持ちかけられる前に出ているのだが、戦友の意見も聞かないといけないだろう。


 そう思い、島崎さんに断りを入れ、シオンと二人で少し彼女から離れた。





「俺の結論は、もう出てる」


 不安そうなシオンに、俺は先に囁いた。


「ただ、戦友なんだし、ちゃんとシオンの意見を聞きたい」

「お、おにいちゃんの結論は?」

「いやぁ、それ話すと、先入観持っちゃうかもだし、まあシオンの意見を先に」


 あえて促すと、シオンは唇を噛んで考えていたが、すぐに思い切ったように顔を上げた。


「……おにいちゃんと二人だけの方がいい。だって、あの人達とは目的が違うもん」

「ははは」


 俺は思わず破顔した。


「俺と全く同じ意見だ」


 途端に、ぱっとシオンの顔が明るくなった。


「俺達は復讐が目的で、彼女達は帝国軍を追い払うことが目的だもんな。似ているようで、少し違う。それにレジスタンスは、捕まった同朋の開放は別に最優先じゃないらしいし」


 抱きついてきたシオンの頭を撫で、答える。

 これは、決定的な違いと言えるだろう。

 どうせなら、俺達と似たような目に遭っている者は、極力助けてやりたい……復讐と並んで、それも俺達の大きな目的なのだ。

 だから今後の計画には、収容所の襲撃も入っている。


「ただ、シオンは本当にそれでいいのか? もう少しよく考えなくて大丈夫か」

「いいよ! シオンはおにいちゃんとがんばる方が嬉しいもんっ」

「そうか……なら決まりだな。あとは、確保した金の延べ棒をわけてやって、お引き取り願う手か。一応、連絡先くらいは聞いておくけど」

「うんうんっ」

「たださ」


 俺はあえてシオンの肩に手を置き、碧眼をじっと見つめた。


「司令部の襲撃は完全な不意打ちだから、上手くいったけど、帝国にもギフト持ちは多い。これからは、そう簡単にいかないかもしれないよ?」

「ゆ、油断はしないけど……おにいちゃんと二人なら、大丈夫だよ」


 シオンは不思議な自信を込めて言った。


「さっきの話だと、ホムンクルスの秘密を手に入れたんでしょ?」

「正確には、ギフトだったけどな。材料さえ揃えば、余裕で量産できる」


 しかも、その材料も入手不可能なものは一つもない。


 俺の脳裏に、少しずつ今後の計画が出来てきた。まずは材料を大量に揃え、シオンの拠点作成スキルで、東京にダンジョンの触手を深く静かに延ばしていく。


「……ダンジョン内に、俺が作成したホムンクルス戦士を大勢放てば、防御は完璧だな」

「万一危なくなったら、その区画をカットして、地下に孤立させちゃえば大丈夫だよ!」

「そうだ……シオンのスキルは戦うのに最適かもしれない」


 汎用性は俺以上かもしれない。

 後は、帝国のギフト持ちが、あとどれくらいいるかだろう。

 俺はレジスタンスの島崎さんに俺達の決定を伝えるために、歩き出す。シオンと手を繋いで。


 自らレジスタンスと距離を置くことを選んだ俺達の未来は、実はあまり明るくないかもしれない。ホムンクルス兵士を十分な数揃えるだけでも、かなり時間もかかりそうだ。

 しかし、その困難な道のりも、シオンと一緒ならやり遂げられるんじゃないか? 


 ……二人でダンジョンを歩く俺は、密かにそう思っていた。


長編と短編の二種類のエンドを考えていましたが、さほど需要もないようですし、短編的なエンドと相成りました(汗)。

ここまで付き合ってくださった方達に、お礼を申し上げます。

また新作を書き出しているので、アップした時はよろしくお願いします。

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