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私のお気に入り。

作者: 桃色 ぴんく。

 片想い?そこまで行かない。

岡惚れ?名前も知ってるし、よく会話も交わすからちょっと違うかな。



別に親密になりたいわけじゃないけど、

もうちょっと仲良くなってみたいかなぁ・・・とも思う、



そんな彼が私の『お気に入り』な存在なのだ。





 彼は、うちの周辺を担当にしている宅急便のお兄さんだ。

長身で優しい顔立ちをしている。

うちの家は旦那さんがよく宅急便を利用するので

代々この周辺の担当の人とは顔見知りになる。



今までの宅急便のお兄さんたちは別に何とも思わなかったのだが、

今回のお兄さんは、なんとなく『お気に入り』なのだ。



今までの人たちと何が違うのか・・・

それは多分【挨拶】だと思う。



「おはようございます!」

朝、私が出勤しようとすると、家の前の道路に宅急便の車が停まっていて、

お兄さんが声をかけてくれる。

「おはようございまーす」

私も挨拶をして、出勤する。



仕事帰りや買い物帰りに、道で宅急便の車とすれ違う。

乗ってるのがあのお兄さんだったら

私に向かって笑顔でニコッと会釈してくれる。

私もそれに気付いたら笑顔で会釈をする。


 



 そんな日常が続くと、不思議とお兄さんを探してしまう自分がいることに気付く。

宅急便の車が停まっていると、表示してあるドライバーの名前を確認してしまう。

仕事から帰ってポストに不在連絡票が入っていると

ドライバーの名前を見て、お兄さんだとなぜか安心してしまう。

よく知っているから電話もかけやすいのだ。

「はい」

と電話に出る声だけで、

”あ、いつものお兄さんだ”

と思ってしまう。

そして、お兄さんも私が名前を言うと

「あ、はい!もうこのあといつでも大丈夫ですか?」

と、住所は聞かなくてもうちだとわかってくれている。

常連といえば常連なんだけど、なんとなく嬉しいものだ。



お兄さんの年を知らないけど、私より年下か、同じぐらいか・・・

ある日、家電の引き取り交換でお兄さんが私の目の前で作業していた時に

左手の薬指に指輪をはめているのを見て

”ああ、結婚してるんだ。そりゃそうだよね”

と、思ったことがあった。

それまでは、ただの宅急便のお兄さんとして見ていたのが、

その日から「彼も家庭があって、お父さんなのかも」という視点からも見るようになった。



何回か顔を合わすうちに

”やっぱり同世代かもなぁ”

などと考えたり・・・でも、別につっこんだ会話をするわけでもなく、

毎回あっさりと荷物を受け取ってハンコを押したり。

これじゃ何の発展のしようもないけど、これはやっぱりこのままでいい。

時々見かけるお兄さんの姿を見て

”頑張ってるなぁ・・・私も頑張ろっ!”

って思うだけで元気が出る。そういうのだけでいいのだ。


 



 ある日のこと。ネットで注文した重たいリンゴが届いた時、少しだけ嬉しい出来事があった。

「重いですよ」

と、私に箱を渡してくれた時、受け取ろうとした私の手にお兄さんの手が重なったのだ。

一瞬、ひゃっ!と思ったが、重いリンゴを落とすわけに行かず、数秒間そのままの状態に。

今更、生娘でもあるまいし・・・と思ったけど、逆に新鮮でドキッとしたのだった。

「びっくりしたなぁ・・・」

思い出してみると、私が箱を受け取るために添えた手の上に、お兄さんの手が重なるということは、確率的に低い出来事だと思う。

私がお兄さんの手の上に乗せたのならともかく、逆だから。

きっとお兄さんは私が箱が重くて落とさないように、ちゃんと持っててあげようと、手を離しかけたのを持ち直した時に私の手がある位置になっちゃったんだろう。

こんな些細な出来事だったけど、今思い出してもなんか顔がにやけてしまう。


 



 でも、今までもこの辺りの担当者が数人変わってきたように、いつかはお気に入りのお兄さんも別の場所の担当になる日が来ることを私はわかっている。

だから、深入りはしたくない。あのお兄さんはただの『お気に入り』なのだ。

『お気に入り』が『恋の相手』にはなることはない。

 恋になってしまえば、その先は知れている。だってお互い結婚しているんだから。

『お気に入り』は『お気に入り』のままで、ほんのりと幸せ気分を味わえれば、それでいい。



「そろそろサプリ買わないと切れちゃうなぁ・・・」

 今日も私はネットで注文をする。届く時が、お兄さんが配達している曜日と時間帯だったらいいなぁ、と期待しながら。



              ~私のお気に入り。(完)~


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― 新着の感想 ―
[一言] お気に入りは佐川男子ですか?
2015/09/14 18:31 退会済み
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