赤頭巾ちゃんと愉快な日常(狂殺人) 男2女1 or 男1女2 7分台本
赤頭巾ちゃんと愉快な日常(狂殺人)
作:七菜かずは
■CAST
赤頭巾ちゃん♀:
狼さん♂:
りぃ太郎♂ or ♀:
※この作品に、誤字は一つもありません。
【開幕】
りぃ太郎「ようこそ。ここは、素敵なメルヘンの森。さあ、耳をすましてごらん。鳥たちのさえずり。川のせせらぎ。林檎の木が、可愛くしなる音が聞こえるだろう? おやおや、あれは……森の入り口のお菓子の家に住んでいる、赤頭巾ちゃんだ。そして、彼女の前方には、優しい顔をした狼さんが、あらわれたよ!」
少し間。
赤頭巾ちゃん「きゃははははははは! 狼さん! めたこんにちは!」
狼さん「ぐへはははははは! おう、嬢ちゃん。今日も婆さんの見舞いか?」
赤頭巾ちゃん「うん! ねえ、うちの死にぞこないのおばあちゃんにあげるお花を摘むの、手伝ってくれる?」
狼さん「おおいいぜ。勿論。俺様にかかれば、何千もの花を摘めるぜ!? むしろ喰うぜえ!?」
赤頭巾ちゃん「五輪もあれば十分よ。色んな花がいいわ! あっ、小鳥さん、こんにちは! ふくろうさん、こんにちは! くらげさん、こんにちは! ふらみんごさん、こんにちは! 今日こそ蹴り殺す!」
狼さん(ウイスパー)「……クックック。今日こそ! 赤頭巾ちゃん! おめえのお命頂戴してやるぜ! ぐっへぁぁぁああああ!!」
赤頭巾ちゃん「きゃあっ! 落とし穴だわ! あぶんあーい!」
狼さん「ぎぃあーっ!?」
赤頭巾ちゃん「しねえ大変っ! 狼さん、大丈夫!?」
狼さん「このやろっ……! い、いや、大丈夫だよーん! あああ、助けてーっ! 先客のミドリムシがー!!」
赤頭巾ちゃん「待ってて! 今誰か呼んでくるわ! あたしのお友達! 殺人鬼ジェイヤンを!!」
狼さん「えっ。いや、人は選んで! 狩人とかはもっとやめて! まあまあなモブ村人とかにして! オーイ!」
赤頭巾ちゃん「誰かーっ! 誰かーっ! イケメンな誰か~っ!」
狼さん「おい聞けぇぇ! おーい! 嬢ちゃ~ん! うつくしいおじょうさぁ~んっ!」
りぃ太郎「呼んだかい!? 赤頭巾ちゃん!! 呼ばれて飛び出てリリリリーン!! 僕はりし太郎。君のすいーときゃぷちゅ!! りぃ太郎さ!」
赤頭巾ちゃん「まあ、お喋りしかのうがない、リスのりぃ太郎!」
りぃ太郎「お久しぶりだね! 赤頭巾ちゃん! ボクだよ! ニコチン大好き、りぃ太郎だよ! いつかこの森を、エロスの森と呼ばせるさ! パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ!!」
赤頭巾ちゃん「また会えて嬉しいわ。可愛い、森のお友達。うふふ! あはは!」
手を取り合ってくるくる回る二人。
りぃ太郎&赤頭巾ちゃん「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ!!」
りぃ太郎「あははっ!」
赤頭巾ちゃん「あははっ!」
りぃ太郎「あははははは……」
赤頭巾ちゃん「うふふふふふ……」
りぃ太郎「酔って来た~うあ~」
狼さん「おーい!! パブロ・ピカソ!!」
赤頭巾ちゃん「はっ! そうだわ。狼さんが!」
りぃ太郎「は、狼!? アッ!! 貴様ぁ! まぁだこの森に来ていたのかいっ!? 陣中!! 陣中なりいいいい! ぽぽぽぽぽぽぽぽ」
狼さん「やめろ! どんぐりを投げるな!」
りぃ太郎「ふっ。これはどんぐるぃじゃない! 僕がさっき切った爪のゴミさ!」
狼さん「きたねえよ!」
赤頭巾ちゃん「りぃ太郎!」
りぃ太郎「おうよ、赤頭巾ちゃんっ! あいつを血祭りにあげるのはこの森一番の美少年、りぃ太郎さ! パブロ・ピカソッ!!」
赤頭巾ちゃん「狼さんは微妙なお友達よ! 傷付けるのはやめてちょうだい!」
狼さん「そうだそうだ、やめなさーい!」
りぃ太郎「はああっ!? なっなーんだってぃえ――――!?」
狼さん「おい。消え失せろ、カスリス!」
赤頭巾ちゃん「モリモリ!」
りぃ太郎「えっ? ええっ? か? え? あっ。イケメン? あっありがとう! そう、僕は奇跡のイケメン、イケリス! エロス!!」
狼さん「聞こえてんだろ!」
りぃ太郎「ははん。なんだい、その態度は。地上に出たくないのかい?」
狼さん「いやらしい顔しやがって! てめえなんかに何が出来る!」
赤頭巾ちゃん「私の為に喧嘩をするのはやめてぇ! うるうる」
りぃ太郎「はっ。ボクとしたことが! 美しい君の瞳を潤わせてしまうなんて! 罪なボクを、許してくれるかい!? 」
赤頭巾ちゃん「いいえ! 狼さん。りぃ太郎は魔法が使えるのよ! 浮かばせて助けてくれるわ!」
狼さん「なにぃ!?」
りぃ太郎「ふん。さあ、どうするんだい? 頭を地面に擦り付けて助けを求めるがいいよ。このボクにね!」
赤頭巾ちゃん「りぃ太郎! どうしてそんな意地悪を言うの!?」
りぃ太郎「はっ! 違うんだ。赤頭巾ちゃん! 違うんだ! 君を困らせたくはないんだ!」
赤頭巾ちゃん「りぃ太郎なんて大嫌い! 私、狼さんのものになるわ! さようなら!」
狼さん「ぎゃ~」
りぃ太郎「わぁ~」
赤頭巾ちゃん「たださよならをするなんて可哀想よね! 狼さんと同じ落とし穴にいれてあげる!」
狼さん&りぃ太郎「え!!?」
赤頭巾ちゃん「えっさらほい、どっこいしょ、えっさらほい、どっこいしょ!」
狼さん「ぎゃあああああ~ん」
りぃ太郎「……こうして。僕たちは、一つに、なりました」
赤頭巾ちゃん「夢に出られては困るわ! 魂すら、目も、耳も、全て! 消えて欲しいの!」
りぃ太郎「わかったよ。赤頭巾ちゃん。君がそう望むのなら」
狼さん「俺達は消えよう!」
赤頭巾ちゃん「ありがとう!」
りぃ太郎「キュビスムの創始者、パブロ・ピカソの洗礼名は、聖人や縁者の名前を並べた長いものです。
長い名前の例としてよく引き合いに出されることは、有名でしょう。
諸説はありますが、講談社が1981年に出版した『ピカソ全集』によると、パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード (Pablo Diego José Francisco de Paula Juan Nepomuceno María de los Remedios Crispiano de la Santísima Trinidad) です。フルネームは、この後に、父親の第一姓ルイス(Ruiz)と母親の第一姓ピカソ(Picasso)が続きます。
スペインの姓は、父親の第一姓を第一姓に、母方の第一姓を第二姓にして、機械的に個人の姓が決まります。スペインのマラガではこうした長い名前が普通なのです。
画家として活動を始めたピカソは、はじめパブロ・ルイス・ピカソと名乗り、ある時期から父方の姓のルイスを省き、パブロ・ピカソと名乗るようになりました。ちなみに、ルイスはスペインではありふれた姓ですが、ピカソは珍しいものです。私はピカソの、めぐりめぐる様々な画風の中でも、青の時代が特に好きです。女をとっかえひっかえしていたピカソですが。私も女性が大好きです。特に、ピカソの最後の妻、美の化身・ジャンヌは本当に美しかった。……あの時代は、良かった。……最近思うのだ。誰かの意思を継ぎ、誰かの歴史を、誰かが完璧に、誰かの代わりとしてつとめることは……不可能なのだ、と」
狼さん&赤頭巾ちゃん「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
END