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それぞれの価値観。

突然だが、前にも話したとおり妹は家族を愛している。

一方、俺は家族を愛すことが出来なかった。

正直妹が何故家族という存在を愛すことが出来るのか理解できない。

そういう意味では俺も変わっているのだろうか、とたまに思う。

理由なら一応、ある。

単に俺が両親の期待を裏切って生まれてきただけなのだが。

"男"というのがいけなかったらしい。

おかげで生まれてきた時から愛情をくれた覚えが無いように思う。

多分、妹が生まれてから俺は孤独だった。

両親は妹だけに愛情を注ぎ……そう、まるで俺の存在を忘れている感じ。

だから、多分家族を愛せないのだ。好きになれない。考えただけで反吐が出る。

一方妹は両親に気に入られていたが、それをあまり嬉しそうにはしなかった。

寝たふりをして親が寝るとすぐに俺の部屋に来た。

ただ何もせず、勉強して本を読んでる俺の隣にいた。

多分妹の中では俺も家族の一人だったんだと思う。

そして何気なく、幼稚園の頃から小学校の頃までは一緒に登下校をしていた。


そんなある日、妹が両親と喧嘩をしたらしい。

妹は外へ飛び出し町を徘徊していた。

そして俺を見つけた瞬間に道路に飛び出し、交通事故が起こった。

幸い危険を感じた俺は妹をかばったのだがそのおかげで重傷を負った。

病院に1ヶ月入院。

妹はかすり傷だったが一緒に同じ病院へ。

それでも両親は妹ばかりで俺の病室の場所すら聞こうとしなかったから、妹はそれにキレて……その二日後には妹も同じ病室で俺の顔を見てにこにこしていた。


「あれ、あの二人は?」

「今日も旅行」

昔から両親はそれぞれの道を歩んでいた。

もともとバラバラの家族だった。

今は、もう粉々になって破片すら見えない。


「ねえ、お兄ちゃん」

ぼーっとしてたら妹に話しかけられた。

「ん、どうした?」

「昔から好きなことして自由にしてた私達の両親ってさ、なんであまり家に居なかったのか知ってる?」

妹の質問に頭が痛くなる。

家族の話題なんて、あまり聞きたくないし、話したくも無い。

「御咲の親父は仕事にかまけて毎日毎日残業が好きだから。その妻はいつまでも乙女ぶって色んな男とデートしてたから。それでも御咲の事は好きだったみたいだからあれでも早く帰ってきてた方だと思うよ。ま、俺達が退院してからあの二人も目が覚めたらしいけど。……変な意味で」

めんどくさくなって、つい、ため息が出る。

妹はどうでも良さそうにふぅん、と呟いた。

本当は、どうでも良くないんだろうけど。

「どうしたんだ、いきなりそんな事聞いて」

「……いや、単に彼氏の家は仲良さそうだなって……」

「は?家に上がったの?」

妹の言葉に俺は驚いた。

まさかそこまで進展していたとは思ってなかったから。

「いや、完全ではないけど玄関までは」

「そ、そうか……」

少し、ショックだな…。俺なんて恋も無ければ女性の家に上がり込むとか…いや、無理無理。

あの二人は時間が合えば旅行ばかりしている。

まぁ、育児放棄させたのは交通事故時に妹をかばって大怪我した俺なんだけど。

妹がキレてからそんな生活ばかりになった。

お金は箪笥に隠してあるお金を俺が黙って拝借。

そしてそれを俺が、「親から」と伝えて妹に渡している。

そうでないと、何も出来ないから。

家族ってそういうもんだと思う。他の家庭は多分違うんだろうけど。

家族は、嫌いだ。愛情とか、信じるものじゃ無い。


気付けばミーン、ミーンとうるさい音が聞こえた。

そして夏が来たのだと実感する。

会社の昼休みなのでスーツの上着ボタンを外しネクタイを緩め外に出る。

今日は妹お手製の弁当が無いから、外食のつもり。

「――あれ、お兄ちゃん?」

聞き覚えのある声に、俺は振り向いた。

そこには妹と……

「んぁ…?アンタ誰…」

眉間に皺を寄せ、嫌そうな目付きで俺を見る学生服の男……。

「あ、あの…」

「御咲さ、こんなヤツと知り合いなの?お前は俺の彼女なんだから俺だけのこと考えてろっ」

話そうとした妹に、男は一方的な怒りをぶつけている。

そして、パーンと軽快で重たい音が響いた。

「――っ!」

殴られた頬を押さえる妹。

一瞬で俺の視界がシャットアウトした。

「おら、行くぞ!」

「あ、…あとで…ね…っ」

妹の腕を引っ張り俺の後ろを通ってく。

妹の悲痛な声が聞こえた気がした。

高城御咲:親から愛されながらもそれを拒んでいた少女。

     どこをどうしてそれが家族愛に繋がったのかは謎。

高城国治:親から愛されず孤独に育った兄。

     それが彼の当たり前であり、一般的ではないとは気付いていない。

   男:御咲の彼氏。

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