葛葉は語る
葛葉は語る(お六と権兵衛)
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「師匠はお元気かなあ」
店に入り浸る葛葉が郷里を懐かしんでいるらしい。上方で陰陽の技を学んだという葛葉は、上方の師匠に習った。あんたが教えてもらったのは百害とかいうあいつじゃないの?と聞くと、百害は「ヘタクソだなあ、あっちで習え」と失礼なことを言っただけで違う師匠についた。師匠は上方でも有力な一族の一人で、やかましくて荒っぽいのに優しいといろんな意味で評判だった。上方と言えば他にもいたわね、権兵衛以外にも……鼬だっけ?鼬という辻斬りは自分の刀を清六に渡した後、他の鼬に連れられて上方に帰った。葛葉曰く、その一族は怖がられている割には怖い人はいない。でも笑顔で「鼬くんはぁ、何をしていたのかなぁ〜?」と聞かれるとすくみ上がる人が多い。ボールペンをクルクル回していたら要注意だそうだ。こら葛葉、江戸時代にボールペンの話をするんじゃない。
葛葉の師匠は清六にも教えたことがある。清六の使う九字護身法というのは基本中の基本で上手い人ならその場で変えられる。清六もまだ、お先に勉強させていただきますという感じらしい。葛葉の師匠か、と清六が口を出した。気風のいい方だったな、今でも豪快な笑い声が聞こえてくると懐かしんでいた。あの人の笑い声は、まるで夏の日の蝉時雨のようだと言っていたのでそれはやかましいものなのだろう。店の外からは、うるさいくらいのツクツクボウシの鳴く声が聞こえていた。




