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たたりが怖いのは

たたりが怖いのは(お六と権兵衛)

※※※※※※※※※※※※


「たたりだ!お狐様のたたりだぁ~!」


 そう言って回っているのは佐山一家の若いの。たたりがあったからお社を建て直す、お金を出せ!夜は外に出ないように、連れていかれるからな!なんて安い芝居だろう。どうせ悪巧みでしょ、貞享何年だと思ってるの。きょうびたたりなんて信じる人はいない。そう思っていたら、清六が食いついた。詐欺に遭ってもお金は出さないわよ!ときつく言っても佐山一家の言い分を聞いて、どこかについていった。


 ……次の日、奉行所の人たちが大忙しだったらしい。山奥に潜んでいた山賊の一党が、どこぞの大名行列を襲おうとして一網打尽にされたらしい。かなりの人数で力のない大名を締め上げようとしていたらしく、知らなければ助けられなかった。夜道を歩く人がもっと多ければ誰かが気がついただろうが、極端に少なかったので着々と準備が進んでいた。そんなわけないと思っていても、みんななんとなく嫌だから出歩かないようになっていて、隠れるのが簡単だったらしい。奉行所に言いに来たのはどこぞの風来坊、妙に軽い物言いなので冷やかしかと思ったが少しだけ調べると、すぐに足がついたそうだ。厄介事に巻き込まれたくないから、奉行所の人相手に「誰でしょうね」と言っておいた。他にいないと思うけどさ。


 あんた、たたりってどう思う?って清六に聞いた。あると思うとかないに決まっているとか、そういうのが返ってくるかと思ったら「口実」と清六は言っていた。何か言えないようなわけがあるときに、見えないことを理由にする。怖いから、何かあるからと言えば「弱虫の腰抜けめ!」と言われるだけで理由が作れる。たたりだなんだと言い出す者がいたら、言えないようなことがあると思っていればいい。上方にはそういう町があって、わざわざ大きな都を作ったのにすぐに引き払って誰も戻らなかった。口実であるからには真剣なふりをして「サワラさんのたたりだ」と言いふらすので今でもそう思われているが、大きな町をわざわざ作ったのにすぐに捨てるなんてよほどのことがなければありえない。それを言えないから、たたりだと言い張った。そんなわけない、と思わないものは「弱虫の腰抜けめ!」と一生言い続ける。……多いんだけどな、と清六は言っていた。


「昔の人って、結構賢いんだぜ?」


 賢い人の言葉が語り継がれることを考えれば、言い伝えを残した人はみんな賢い。最近になって違うことを言い出した者は、バカでもおかしくない。それって今の人はさ……「こりゃいけねえ」と清六は水を汲みに行った。表では佐山一家の若いのが、鬼丸に顔をなめられて震え上がっていた。

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