ほんの少しだけ
ほんの少しだけ(お六と権兵衛)
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この町には新しい十手持ちが来た。十手持ちというか背が低くて下ぶくれで、股ぐらが隠せる物を履きなさい!という感じ。がきの十手持ちがたまにウチに来て、清六と食事をしていく。もうタダ飯なのはわかったから、話の内容をなんとかしなさい。「アフリカ象が!」「八丈島の!」なんて意味不明なのはまだいい方で、その、飲食店にはふさわしくない男の話。ここの店主は女だと忘れたのか、私がここにいるのに。さすがに権兵衛もちょっと引いていた。そいつは他の常連に、変なポーズを取って「しけー!」と叫んだ。そしたら、清六の……目の色が変わった。お前、それを誰に聞いた?清六はそいつの目の前で人差し指を立てた。一瞬何も見えなかったけど、清六の立ち姿が変わっている。まるで居合い。その手に剣を握っていると言われたら、ないものが見えてきそうだ。十手持ちは親指をたたんで、やりづらそうだが同じようにした。清六の顔から険しさが消えた。
「それだ!」
そんなことを言って嬉しそうに足を踏み換えて逆の指を出す。十手持ちはすぐにこの町を離れて、上方に行くという。よかった、いつまでもあんな会話をされたらたまらない。「別に普通じゃないですか?」って言ってる葛葉はきっと変態性癖なのだ。




