まだやるのかよ
まだやるのかよ(お六と権兵衛)
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打拳の際には二つのことに気をつけるという。まずは手先、次に足首。この極端に離れた二点こそ人の体の要、くっついている以上はすべて力を巡らせて打ち込む。都合四点が使えると使えないとでは、雲泥の差があるというのが清六の言い分だ。まあ清六の言うことなので全部流してとっとと水を汲みに行かせた。すると、今日来ていた見慣れない客が勘定を置いていった。やたら大柄でたくましい男で、赤龍と比べたって決して小さくはない。男は店の前に待たせていた付き人を連れて、帰ろうとした。威風堂々たる後ろ姿は、まるで弁慶。おそらく筋者だろうが、このあたりでは見たことがない人だった。まあ旅の者だろうと思って見送ると、騒ぎ声。店の前で喧嘩が始まったらしい。
佐山一家が連れてきた用心棒は、立派な体躯の大男。さっきの客と比べても遜色ない。どうやらこの店もろとも潰したいらしく、けしかけてきた。そして殴り合いが始まるかと思いきや、二人がにらみ合う。さっきの客は黙ったまま、大きく振りかぶった。まさか!と声を上げたのは戻ってきた清六、何かに驚いたらしい。
「あの体勢から単純に打拳を繰り出そうというのか?この戦いの水準で!」
何か止めた方がよさそうな驚き方だが、そんな暇はなかった。客の繰り出した打拳は相手の防御を突き破って腹に炸裂、用心棒は眼窩に指を引っかけて引きずり起こされこねられた。佐山一家が震え上がって、これで勘弁!と差し出したかすてらを引きちぎって客は帰っていった。あの客はどこかの二代目で、これから江戸に行くらしい。後楽園。ご老公が見つけたんだな、と清六が言っていた。ご老公とは誰だ、なろうは厳しいと言っているでしょう!と怒ったけど、とびとかくを連れたお爺さんならウチにも来ていたと殴ってから思い出した。




