いずれ処刑される「ピンク髪の男爵令嬢」に転生したので悪役令嬢のお姉様に媚びを売った結果
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
今日はアイン王立学園の卒業パーティー。
華やかな会場が、一瞬にして静まり返った。
壇上に立った第一王子が、隣に立つ婚約者、公爵令嬢クラウディア様を指差して叫んだからだ。
「クラウディア! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」
会場がざわめく。
王子は、壇上の端で控えていた私、男爵令嬢モモを手招きした。
「おい、モモ! こちらへ来い! もう怯えることはないぞ!」
「…………はぁ」
やはり、こうなる運命だったのか……。
私はかなり、頑張ったんだけども。
「どうしたモモ! さぁおいで! さぁ!」
王子が近づいてきて、無理矢理私の肩を抱き寄せ、勝ち誇った顔で言った。
「このモモは、貴様にいじめられていたと泣いていたぞ! 教科書を破いたり、無理やり食事に付き合わせたりしたそうだな! そんな性悪女に、国母になる資格はない!」
「えっ」
私は思わず声を上げた。
いや、待って。ちょっと待ってほしい。
いじめ? 誰が? クラウディア様が私を?
違う。全然違う。
完全に誤解だ!
◇
私、モモは転生者だ。
前世の記憶を取り戻したのは、この学園に入学した直後。すでに、王子を籠絡した後だった……。
鏡を見て絶望した。
私の髪は、ふわふわのピンク色。
これは、ネット小説でよくある「ざまぁされる側の泥棒猫ヒロイン」(たいてい悪役令嬢から婚約者を奪うアレ)の配色だ!
調べたところ、よくあるネット小説と、同様の設定、立場にいることが判明する。
なにやってんだよ、私ぃ……!
このままでは、無能な王子に見初められ、調子に乗って悪役令嬢を虐げ、最後には断罪されて処刑エンドだ。
絶対に嫌だ。
死にたくない私は、一つの作戦を立てた。
『悪役令嬢クラウディア様に媚びを売って、味方につける作戦』だ!
ざまぁされるのは、この女性……クラウディア様(主人公)にひどいことをするからである。
裏を返せば、主人公様に優しくすれば、ざまぁされない……はず!
……いや、そうなるかどうかはわからないし。
でも、何もせず馬鹿王子といちゃこらしていたら、将来的にひどい目にあうのは間違いない。
よって、私は行動を開始した。
私は、教室で一人寂しそうに本を読んでいるクラウディア様に突撃した。
「あのっ、クラウディア様! お隣、よろしいでしょうか!」
彼女は驚いたように私を見た。
氷の令嬢と恐れられる彼女は、いつも孤立していた。
私は必死に尻尾を振る子犬のように振る舞った。
「お弁当、作りすぎちゃって……よかったら食べてください!」
「宿題、分からないところがあるんですぅ……教えてくださいお姉様!」
最初は警戒していた彼女も、私の猛アタックに少しずつ絆されていった。
一緒にお昼を食べ、放課後は図書室で勉強会。
彼女が微笑んでくれるようになった時、私は心の中でガッツポーズをした。
(これで断罪回避! 「モモは私の友達よ」って庇ってもらえるはず!)
そう信じていた。
王子が「無理やり食事に付き合わされた」と勘違いしているのは、私が必死に彼女の隣に座ろうとしていたからだろう。
とんだ誤解だ。
◇
そして、現在。
王子は「ざまぁみろ」と言わんばかりにクラウディア様を睨んでいる。
「弁明はあるか! なければ直ちにこの場から立ち去れ!」
違います、と言わなきゃ。
けれど、クラウディア様は静かに扇子を閉じた。
「……承知いたしました」
「は?」
「殿下との婚約破棄、謹んでお受けいたします」
彼女の声は、驚くほど冷静だった。
え、受け入れちゃうの? 私の誤解を解かなくていいの?
クラウディア様はコツコツとヒールを鳴らして、私の方へと歩み寄ってきた。
そして。
「んっ……」
思考が停止した。
衆人環視の中、クラウディア様の美しい顔が近づき、私の唇が、彼女の柔らかい唇によって塞がれたからだ。
甘い。
高級な紅茶の香りと、彼女の体温が、私の脳を溶かしていく。
「ふぁ……!?」
長い、長い口づけの後、ようやく解放された私は、茹でダコのように顔を真っ赤にしてへたり込んだ。
は?
え?
なにこれなにこれ!?
王子も、会場の生徒たちも、全員が石像のように固まっている。
「ど、どういうことだっ! き、貴様、モモになにを……!」
王子が裏返った声で叫ぶ。
「モモは俺のものだぞ! いじめられていたモモを、俺が救って……」
「ふざけないで」
氷点下の声が響いた。
クラウディア様が、王子を睨みつける。その瞳には、今まで見たこともないような昏い独占欲が渦巻いていた。
「モモは私のものよ。貴方のような愚か者に、この子の可愛さが分かって?」
「は……?」
「モモを貰うわ。婚約破棄の慰謝料代わりにね」
クラウディア様は私の腕を強く引いた。
まるで、二度と離さないと言わんばかりの強さだ。
「さあ、行きましょうモモ。こんな薄汚い国、捨ててしまいましょう」
「え、あ、あのっ!」
「ちょ、ちょっと待て! 逃がさないぞぉ! モモを奪われてなるものかぁ!」
クラウディア様は指をパチンと鳴らした。
すると、天井から数枚の書類がバラバラと降ってきた。(どっからでてきた!? 魔法!?)
「ついでに、殿下の横領の証拠と、他国との密通の証拠をばら撒いておきましたわ。後はご勝手に破滅なさい」
「な、なんだこれはぁぁぁぁ!?」
王子の悲鳴が背後で上がる。
元婚約者の悪事を暴き、社会的に抹殺する手際の良さ。さすがはお姉様、有能すぎる。
って、感心している場合じゃない!
クラウディア様はわたしの手を引いて進んでいく。
「クラウディア様!? どこへ行くんですか!?」
私は彼女に引きずられるようにして、会場を後にする。
馬車に押し込まれた私を、クラウディア様はうっとりとした瞳で見つめ、頬を撫でた。
「大丈夫よ、モモ。隣国に私の別邸があるの。そこで二人きり、ずっと一緒に暮らしましょうね」
「えっ」
「もう勉強も、媚びを売る必要もないわ。ただ、私に愛されていればいいのよ……永遠に」
ぞくり、と背筋が震えた。
断罪回避のために媚びていただけなのに。
生存戦略のために懐いていただけなのに。
どうして、ヤンデレ百合ルートに突入しているの!?
「ど、どうしてこうなるのぉぉぉぉっ!?」
私の叫びは、夜の王都に虚しく響き渡ったのだった。
【おしらせ】
※1/9(金)
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