表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

第41話 「さあ、ご褒美にビンタを」

「クシュ!」


「おいおい、前はこんなに寒くなかったぞ」


 俺とサメトナ、ネオンは、選抜を勝ち抜いた10人と共に、新生北伐隊として、北の大地を目指していた。


 日は沈み、極寒の荒野に夜が訪れたため、俺たちは風除けの岩陰にテントを張り、野営の準備をしていたのだが……。


「ロッシのテントにはボクが入るの。当然でしょ?護衛が必要なんだから」


「むー。ネオンは外で番犬。ロッシはワタシの湯たんぽ」


「お待ちなさいお二方。ここは新参者の私が、入り口で『足拭きマット』になりますわ!どうぞ、私を土足で踏みつけて中に入ってくださいまし!」


 何故か勃発する寝床争奪戦。


 ネオンとサメトナが火花を散らす中、ドロレスが頬を染めて斜め上の提案をしてくる。


「断る。邪魔だ」


「そんなぁ……殺生な……」


 俺が即答でドロレスの提案を却下した、その時だった。


 ギチチチチッ……!!


 不快な摩擦音が闇を切り裂いた。


 雪の中から飛び出したのは、透明な刃のような鎌を持つ、巨大なカマキリ型の魔獣「斬蟲リーパー」。


 リムガルドの領地に近いせいか、現れる魔獣も昆虫じみた異形ばかりになってきている。


「チッ、敵襲か!」


 俺が剣の柄に手をかけた瞬間、ドロレスが恍惚とした表情で前に躍り出た。


「私の出番ですわぁッ!!」


 何故か武器も持たず飛び出す回復役。


 ドスッ!!


 案の定、先頭の斬蟲リーパーが振り下ろした鋭利な刃が、ドロレスの肩口に深々と突き刺さる。


「はぁ、何がしたいの……キミ」


 ネオンが呆れて、仕方なく応戦しようと近づき、驚きの光景を目撃した。


 ドロレスの頭の角から「プシュゥゥゥーッ」とピンク色の蒸気が噴き出し、傷口がみるみる塞がっていく。


 普通なら肩ごと腕が切断されてもおかしくない一撃。

 だが、彼女の改造された肉体は、即座に再生を始めており、その斬蟲リーパーの刃をも取り込もうとしていた。


「あぁんッ♥痛い……なんて鋭利で……野性的で……素敵……!」


 そんなドロレスは、悲鳴を上げる代わりに、自分を刺した斬蟲リーパーの前脚を優しく抱きしめた。


「もっと……もっと奥までぇ……!」


 ギ、ギチ……?


 魔獣の動きが止まる。


 斬蟲リーパーからしてみれば、獲物が恐怖するどころか、発情している。本能レベルで「何かおかしい」と察知したのだろう。


 魔獣は慌てて刃を引き抜き、完全に戦意を喪失して後ずさった。


 ドン引きだ。虫ですら引いている。


「あ、逃げるなー。ご飯ー」


 その後、動きの止まった哀れな魔獣は、背後からサメトナによって殻で粉砕され、おやつ感覚で捕食されたのだった。


 ■ ■ ■


「……とんでもないのを連れてきてしまった」


 俺は頭を抱えた。


 戦闘は終わった。さっさと寝よう。


 俺がテントに入り、寝袋に潜り込もうとした時だ。


 ヌッ。


 テントの入り口から、血まみれ(修復済み)のドロレスが、四つん這いで侵入してきた。


 その瞳はギラギラと潤んでいる。


「ロッシ様ぁ……♥お守りしましたわ……」


 彼女は荒い息を吐きながら、ジリジリと俺に這い寄ってくる。


 頭の煙突から出る蒸気が、テント内を一瞬でムワッとさせた。


「私、頑張りましたの……。さあ、ご褒美にビンタを……いえ、その靴底で顔面を……」


 バサッ


 俺は無言で、テントの入り口を閉めた。


 下までしっかりと。


「ああっ、せめて罵声をっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ